誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334962166

感想・レビュー・書評

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  • 著者はGoogleの検索データをもとに、統計分析を行い、いかに人々が周りの目がないときには正直になるのかを明らかにした。ことさら、セックスと人種差別に関する検索ワードからわかる事実はいくぶんか衝撃的でもあるが、ある意味では予想に沿ったものでもあった。著者は、「グーグル検索こそ、人間心理についてこれまで収集された最も重要なデータセットだと確信している」ーなぜなら「グーグルのデータの価値が非常に高いのは、規模が大きいからではない。人々が真情を吐露している」からだ。

    ー たとえば、「トランプ支持が最も強かった地域は、「ニガー」という語を最もよく検索していた地域だったのだ」ということがデータ分析の結果として明らかになってしまう。

    ー たとえば、「米国では「天気」よりも「ポルノ」の検索のほうが多い」という不都合な真実も明らかにされる。

    ー たとえば、「妻が夫をゲイなのではないかと疑うことは案外多いこともわかっている。彼女たちはそれを、驚くほど共通の検索フレーズ――「私の夫はゲイか?」――で調べている。「私の夫は……」検索において、「ゲイか?」はそれに次いで2番目に多い「浮気しているか?」よりも10%多い。「アルコール依存症か?」よりも8倍、「鬱か?」より10 倍も多いのだ。何より啓示的なことに、夫がゲイなのではないかと疑っている女性の人口比は、寛容性の低い地域のほうがずっと多い」ということもわかる。

    ー たとえば、「失業率が1%上がるたびに、「児童虐待」と「児童ネグレクト」の検索は3%上がっていた」という形で貧困と虐待の相関性が明らかになる。

    今般、ビッグデータ分析の重要性が叫ばれているが、重要なのはその量ではなく、質であると著者はいう。その意味で、それぞれのOTTが集めているデータの質の違いにも着目されるべきである。「フェイスブックはデジタル自白剤ではなく、「自分はこんなにいい暮らしをしていると友人にデジタル自慢させる薬」」だし、ネットフリックスは「人の言葉を信じるな、行動を信じろ」といった上で「アルゴリズムは本人よりもよくその人をわかっているんだ」と付け加える。

    なお、「借金希望者の言葉遣いが、返済率の強力な予言因子になる」こともわかる - 「神に言及した人は2.2倍も借金を踏み倒しやすい」らしい...。

    • kazuya030さん
      とても面白そうなので、購入しました!情報ありがとうございます
      とても面白そうなので、購入しました!情報ありがとうございます
      2019/09/23
  • 競走馬の話は面白かった。因果関係と相関関係は違うから注意って話はまあ当然出てくるんだけど、最近テッド・チャンのメッセージを読んだ人間としては、タコ型異星人としての考えとしての因果ではない次元を想定しちゃうよね。ストーリーからポジションと俯瞰へというか。成功者になろうというロールモデルよりは、どういうポジションを取るのか。ベル・カーブのどこらへんを想定するのか。その場合にはどれくらいの浮き沈みがあるのか。まあVRで成功者の物語は体験できるしその逆もできるのだからそもそも実体的な成功にどんな意味があるの?とか、エリックフォッファー?

  • ビッグデータ分析に興味があるけど今のところ内容はさっぱり、という人にオススメ。ビッグデータ分析の魅力と効用、限界について平易な文章でわかりやすく解説されている。取り上げている実例も面白く、楽しく読めた。
    「広告には効果がある?」「脱税するのはどんな人?」「子育てするのに最適な場所は?」…なんてことがわかるというのだから、本書の諭すように『正しいデータと正しい問い』によりビッグデータをきちんと使いこなせれば、来る数十年で社会は劇的に変わるのではないかと思う。
    私たちは未だかつてなかった「人間の本当の欲望や恐れを知ることの出来る道具」を手に入れたのだなー。
    個人的に大好きなピンカーが序文を寄せてるのもポイントが高い(3ページ半だけど)。ビッグデータ分析を「人間の妄念を覗く魅力的な窓」なんて流石シャレた言い回し!

  • 人は、アンケートにはついつい見栄を張ったりやウソをついてしまう。
    でも、検索窓にウソはつかない。
    だからGoogleの検索履歴とかを分析すれば、かなり真実に近い人間の嗜好が読み取れるぞコレ!!

    という本。

    それはいいんだけど、それにしても性的な話が多過ぎないか。そんなにそこ重要?確かにウソをつきたくなりやすい分野だから、特徴が出やすいとは思うけどそれにしてもだ。人間ってそんなにセックスに支配されてるかなぁ?

    ということで、1/3くらい読んだところでもういいやってなった。

    ふと、30年も前に読んだブライアン・キイのメディア・セックスを思い出したよ。

  • ビックデータから分析できるもの、わかることを説明する本
    まあコラムの集合としては良いかなレベル。冗長感がある。

    ビックデータを用いることで多くの部分集合を見つけ出すことができる。そこから統計的な傾向を見ることができる。
    ビックデータは大きな集合なのでいくつものランダム化試験を見つけ出すことができる。特に検索結果トレンドは本人の興味というなかなか表に出せないものを見いだせる

  • 基本的にはビッグデータで人間の潜在的な傾向がわかる。新しいデータ間の相関関係を調べることはビジネスや政治に利用されている。もちろん実行と検索は違うからビッグデータの傾向で全て判断してはいけないとも書いている(殺人に関する検索は殺人の実行と違うとの例など)。ビッグデータ利用がますます増えるIT社会の今に読むべき良書。

  • 検索は口ほどに物を言う! 米国の隠れた人種差別、世界の男女の性的な悩みや願望、名門校入学の効果、景気と児童虐待の関係…。グーグルの元データサイエンティストが、ビッグデータを分析して人間と社会の真の姿を明かす。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40260230

  • 誰もが嘘をついている
    セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ
    2018年2月20日発行

    読んで、なんだか嬉しい
    ビッグデータの活用の例を届けてもらえた
    ビッグデータ解析が可能にしてくれたのは社会科学であり、行動科学の分野での新たな一面を見出してくれる事だろう

    Googleでデータ・アナリストをしていた著者が
    検索ワードをはじめとした、さまざまなビッグデータのデータセットを分析している

    Googleのワード検索データから読み取れるのは、例えば 本を最後まで読んでくれる確率だ
    90%が完読したと推定される
    ドナ・タートの ゴールドフィンチという小説もあるが、経済学などの書籍の完読率は5%前後だ
    たいていは最初の50Pまでで読んだ事にされていると言う
    だから、この本の結びの項では、推敲を重ねるより飲みに出た方が得策だと締め括ってる

    検索ワードの組み合わせが重要なのは理解できる
    健康医療関連での例が引かれている
    すい臓癌の場合
    消化不良と検索してから、腹痛と検索する人は すい臓癌になるが
    消化不良と検索してから、腹痛と検索しない人にはすい臓癌と診断される人はいなかったという
    社会経済学でも社会調査に基づく研究がなされていて、例えば貧困とキラキラネームは関連性が高いことや
    性生活で使用されるコンドームの数量などの試算データもあるそうだ 男女での回答の集計には11億個と16億個という開きがあり、さらにコンドームの実売数は6億個だと調査がある

    嘘だらけだというのはこうした、アンケート回答など表向きの言葉は正確なものではないということだ

    そこでGoogle検索ワードの活用に意味が出てくる
    セルゲイ ブリンとラリー ペイジ Google創業者
    が作ったリンク重視の検索システムが他の検索システムと差別化した優位点だった
    これは新聞社のサイトは信用性が高いという証でもある
    Google検索には新聞社のサイトからのリンクが重要だったからだ
    この検索をするワードこそが人の本性を示しているビッグデータとなったのだ
    人は常に嘘をついている
    もしくは都合の良いことだけを言っている
    Facebookなどを見ればわかりやすいだろう
    SNSは秘密の上に成り立っていると言う
    本性を表すようなことは言おうとしないのが人間なのだ
    でも自分ひとりだけの時に検索するワードには本性が滲み出てくる
    NetflixもAmazoのグレナードリンデンも、見たがりそうな情報をレコメンド:推薦する方法を選んだのは、自分が見たいものを質問しても本当に見てくれるとは限らないからだ
    人は自分にも平気で嘘をついているのだ
    デジタル自白剤という言い方でネット上のシステムを表現した
    その効能は、
    ◆不安や気恥ずかしい行動を抱えているのは自分だけじゃないと自信を持たせてくれる
    ◆苦しんでいる人に気づかせてくれる
    ◆最も強力な価値は、問題を解決へと導く力
    だと言う

    ◆◆◆ 多くの実験 ◆◆◆
    ビッグデータの価値のひとつは、絞り込んだ上でパターン抽出もできること
    小規模なサーベイでは決してできないことだ
    例えば、貧困層の長寿は富裕層が多く住んでいるエリアであることのみが、相関因子であると言う
    また出世する確率は出生地大きく起因していると言う
    大学町と大都市だ かつ移民人口の多い事だ
    少なくともアメリカでは、これが明らかな偏りとしてあるそうだ
    逆に影響を与えない変数として驚くのは、自治体の教育費支出だった

    Googleで、妊婦がよく検索するのは、
    妊婦は○○をして良いか?
    というものだ
    国別で見ると
    アメリカ 小エビを食べる
    イギリス エビを食べる
    オーストラリア クリームチーズを食べる
    ナイジェリア 冷水を飲む
    シンガポール 緑茶を飲む
    スペイン パテを食べる
    ドイツ 飛行機に乗る
    ブラジル 髪を染める
    日本はどんなワードなんだろう
    ◆ 暴力映画の公開後は、犯罪が減る
    ◆ 医療に役立てようと試みる研究者たち
    アイザック コハネ、ジェームス ヘイウッドなど
    ◆ ビルゲイツが研究資金の提供を申し出た実験
    インド農村部の教師に出勤手当の加算をした場合の欠勤率の低下と生徒の学力向上を調査した研究だ 識字率が7%上昇
    ◆ A/Bテストの容易な実施
    ◆ テレビ広告は、やっぱり効く

    ◆ 実験できない事象もある

    例えば、指導者が暗殺された国で何が起こるか?
    宝くじのように偶発的なもの
    大学の合格者と落ちた人の差
    ビッグデータで証券市場を予測できるか
    IQを遺伝子研究で予言できるか

    実験結果としては、お門違いであることを証明しただけだったさそうだ

    ビッグデータもスモールデータで補完する必要がある 、、、
    いや、むしろビッグデータを使ってスモールデータで検証されたことを補完することが重要だとした
    倫理的にビッグデータの活用に適さないこともある
    活用すべきでない局面もあることを理解するひつようがあるということを強調している

  • 「僕のペニスの大きさは?グーグル検索が教える人間の本質」  

    これが本書のもともとのタイトル案である。

    ————以下、ほぼ下ネタ————

    検索ワードのビッグデータ分析について、その面白く驚くべき(予想外の!)結果を中心にまとめられた本書。
    利用されたのはグーグルを中心にフェイスブック、ポルノハブなど
    (*私はポルノハブを利用したことはありません)

    本書では、性的なものをはじめ、政治、経済、食事、医学、社会、ギャンブル、野球、犯罪、エンタメなど広範なテーマについて様々な角度から、検索ワードのビッグデータ分析と考察がされている。

    その中でも、単語の量とテーマの文章量だけでいうと、圧倒的にセックス関係のものが多い。

    セックス関係のビッグデータ分析からわかったことは
    (掲載順。文章の後ろの数字はページ数)
    •「セックスレス 結婚」の検索回数は「不幸 結婚」の3.5倍、「愛のない結婚」の8倍多い  17
    •女性は、男がペニスについて検索するのと同じくらい陰部について検索し、その最大の関心は、その悪臭と対策  33
    •インドでは授乳関連の検索が世界一多い。具体的には「夫は私に授乳してほしいのか」の検索数と、男に授乳しているシーンを含むポルノの検索数 (後者はバングラデシュも同等) 33
    •アメリカでは「天気」より「ポルノ」の検索数の方が多い  129
    •男性によるポルノハブ上の検索の1.4%はペニスのある女性について  141
    •女性によるポルノハブ上の検索の25%は「痛ましいアナル責め」や「公衆の面前での凌辱」、「極端に暴力的な輪姦」などの女性への暴力行為関連。性暴力系の検索率は女性が男性の2倍。(もちろん検索と実際の願望は単純に結びつけられない) 141
    •男性は臓器の中で性器について一番検索する  144
    •男性はペニス増大術をタイヤの交換方法やオムレツの焼き方よりも検索する  144
    •オーラルセックスのテクニックについて、女性は男性の2倍検索する  148
    •男性は女性をイかせる方法と同じくらい自分にフェラする方法を検索する  149

    など。
    ほかのテーマも非常に興味深い観点と結果なので、ぜひぜひご覧頂きたい。


    私達の直感、経験、印象、常識などと、検索のビッグデータ分析とが大きく解離していることがつくづくわかる。
    ただ、自分が普段いかに嘘をつきながら社会で生きているか。そしてパソコンやスマホにだけ本当の気持ちを吐露しているか。それを自分の胸に手をあててそれを少し考えれば、それも納得はいく。

    今後も人文科学、社会科学的な学問を深めるのに、検索のビッグデータは最重要の情報の一つと言わざるを得ないだろう。

    もちろんビッグデータ分析にも様々な注意点や限界がある。
    個人情報保護や個人への介入などとのバランス取りは最たるものだ。
    そのような注意点や限界についてもしっかり記載しているのが、本書を優れたものにしている。


    ビッグデータ分析についての一歩目の本として、それ以上に私達人間の知られざる本音について、知るために優れた本である。

  • ビッグデータだけではダメだというくだりが興味深かった。
    野球の守備は数値化が難しいので、無視したら弱くなった話とか。

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