婚外恋愛に似たもの

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 451
感想 : 85
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928520

作品紹介・あらすじ

容姿も、仕事も、家族も、生い立ちも、社会における立ち位置もバラバラの5人の女。彼女らの共通項は、35歳。夫あり。そして男性アイドルユニット「スノーホワイツ」の熱狂的ファンであること。彼女たちの愛は、夫ではなくステージで輝く若く美しい「恋人」に遍く注がれる。哀れでも、歪んでいても、これはまぎれも無く、恋。だからこんなに愛おしい-。"最凶恋愛小説"。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの「婚外恋愛」、そして表紙の美しい女性から、てっきり不倫ものかと思い違いをしていた。よくよく表紙を見てみると、女性が持つうちわは「愛して」とどぎつい蛍光色の文字が入った…某アイドル事務所のコンサートでよく見かけるようなものではないか。
    「愛した人は、2.5次元」
    男性アイドルグループ「スノーホワイツ」にのめりこむ、35歳の5人の女性達を描いた連作短編集。激しさや滑稽さや哀しさを絡めながら、上流~中流~下流に属する5人の生き様が「疑似恋愛」を通して浮かび上がってくる。同じ35歳とはいえ、「スノーホワイツ」のファンという共通点がなければつながることもなかったであろう5人が交流を深めていく展開は、微妙にかみ合わない会話も含め、何だかんだ互いをけなし合いつつもほどよい距離感の関係性がよくって、こういう女の友情もいいなと思えた。
    のめりこむというほどではないけど、やはり自分も某事務所のアイドルに憧れながら生きてきたので、「疑似恋愛」に縋る気持ちが多少はわかる。子供がいてもいなくても、旦那がいてもいなくても、お金があってもなくても、それぞれの立場で七転八倒。今回もまた宮木さんらしく色んな意味で「容赦なく」って「ぶっ飛び」まくりだけど、そんな彼女の作風が大好きだ。根底に愛を感じるからね。
    あちこちにちりばめられた小ネタもツボで、「中流」奥さまの夫が脱サラして上梓した「火に油を注ぐ技術」「火のないところに煙を立たせたい人のための本」とか(笑)実在したら読んでみたいわ。

    • niwatokoさん
      こんな作品が出ているの、知りませんでした。すごくおもしろそうですね。宮木あや子さんて読んだことないんですが。
      わたしも、うちわもってコンサ...
      こんな作品が出ているの、知りませんでした。すごくおもしろそうですね。宮木あや子さんて読んだことないんですが。
      わたしも、うちわもってコンサートとかは行きませんが、わりとファンになりやすいというか疑似恋愛しやすい?性質を自覚しているので興味深いです。
      2013/11/08
    • メイプルマフィンさん
      niwatokoさん:コメント嬉しいです!宮木さんは作風が幅広く、今作のような「今どきの女の生き様」系は豪快で痛快で、いい意味でちょっと下品...
      niwatokoさん:コメント嬉しいです!宮木さんは作風が幅広く、今作のような「今どきの女の生き様」系は豪快で痛快で、いい意味でちょっと下品で(笑)クセになります。
      アイドルにハマった経験がある人なら、思い当たるところがちょいちょいあって「うっ…」となること必至です(^_^;)
      2013/11/09
  • 作者はよく理解をしているジャニオタとよばれる人たちの心理を。
    と思ったのが、大きい。
    作中に登場する彼女たちのようにジャニーズを好きになると、社会が広がることはある。今はSNSなどがあるから尚のこと(実体験なので、よく分かる)。本当に今までだったら知り合えないタイプの人に会える。
    その観点をうまく女同士の値踏みに似た観察劇に変えているところが作者の凄いところだと思う。

  •  明示されてはいないけど、いわゆるジャニオタ小説といっても過言ではないと思う。同じグループを応援する女5人の連作短編集。
     家柄や財力、ルックスに家族関係、全部人それぞれだけど、持つ者持たざる者みんながどこか満たされない思いを抱えている。そんな彼女たちを支えるアイドルの存在は大きいよなぁ。とはいえアイドルは決して性欲の対象ではなくデトックスであるということに大いに共感した。儘ならないことだらけの日常を一瞬でも忘れさせてくれる眩しいアイドルに夢中になりながら、日々と折り合いをつけて生きていこう、というか生きていくしかない彼女たちにリアリティーを感じる。
     あと、コンサート終わりの彼女たちの顔が度々「なんとなく白っぽくなった」と描写されていたのが上手いと思った。人の熱気と高揚感とでファンデーションがうっすら浮いて白くなるの、ものすごく分かる。

  • テレビドラマみたいな感覚でするするっと読めた。
    納得できるところもあれば、そうでもないこともあったり。
    5人いればそれぞれ推しに対してのスタンスが違うように、
    私もこのどれでもないタイプだな~と自覚した。

  • 女にとってのアイドルはデトックス

    この言葉がとても印象的でした。
    私もあるアイドルのファンですが、この物語に人ごととは思えないくらいどっぷり共感してしまい、読み終わったあと静かに「マズイな。」とつぶやいてしまいました。

    好きなものは好き、それでいいとは思います。でも、現実と夢の境界線はしっかり見極めておかなければ、一生現実と真正面から向き合うことはできない気がしました。

    感想がマイナスなことばかりですが、ひとつ良かった点として、女の友情が晴れ晴れしく、ヲタクで繋がっていられる関係性の肯定が随所に散りばめられていたところをあげておきます。
    同じアイドルグループのファンでなければ出会うことのなかった友人が私にも大勢います。そういった奇跡の出会いはこれからも大切にしていきたいとおもいました。

  • これは、題材はアイドルに向けた愛情だとされてますが
    本当に描きたいものは違うと思います。

    アイドルを他の何かに置き換えても、成立するお話だからです。

    生活に余裕のある上から三人は、不満があってもその美しさや
    能力・お金で、まだ自分に夢を見せることができます。

    でも、あとのふたりは…いつかやっと維持している夢の繭までも
    破り、破壊されてしまうかもしれません。

    婚外恋愛なんてショッキングなタイトルをつけられているから
    何事かと思いますが、ここに出てくる女たちは、現実を生き抜くために
    命をかけて現実から遮断された世界を持っているだけです。

    実際に不倫を勧めてみたら、全員がおそらく拒否するでしょう。
    現実の自分に、更に足かせになるだけの、傷しか作らないと
    わかっているから。

    小説ではこのあとを描いていませんが、読者の現実は続きます。

    益子さんと片岡さん…生き抜いて欲しい。
    ひとりで生きるのは痛ましいこともあるし、いまさらもう遅いっていう
    こともいっぱいあるけど、彼女たちにはせめて、間に合って欲しい。

    自分の未来が怖くなりました。

  • 現実でアイドルファンをしている身としては、こういうファンめっちゃいる!ってなった。描写されるアイドルたちにも既視感ありまくりで、あの子がモデルかな、あの時のこと参考にしてるのかなと思っていたら2012年刊行。もはや予言の書だった。

  • 3.3 人生満たされない女子たちのアイドル追っかけの物語。人の幸せは何かを問う哲学的な内容。エンタメがしんどい日々を救うことは間違いない。

  • ちょうど友人に「推しがいると人生潤う」と言われ。
    あーナルホド、こういう感じなのかな、と。
    全然接点のない女達が「推し」で繋がって、一緒に泣いて笑ってするのも、何だか大人の部活動って感じで楽しそう。
    1つ共通の好きなことがある繋がりっていいな。
    またその中の女のカーストも、そういうのあるよね、と。
    女社会の良いとこ悪いとこ、うまいなぁと思った。




  • モデルであろうジャニーズアイドルが思い浮かび、非常に面白く読みました。
    アイドルオタクの女性5人それぞれのエピソードは5人5様で階層も人生も異なりますが、そんな彼女たちが「スノーホワイツ」を好き、という一点で出会う。
    ちょっとアダルトでダウナーなガールミーツガール。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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