ワンダフル・ライフ

著者 :
  • 光文社
3.85
  • (66)
  • (156)
  • (93)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 1097
感想 : 138
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334913847

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  まもなく文庫化発売となる本作は、衝撃的な作品でした! 何と言ってもその構成力、さらに内容やタイトルは多様な解釈が可能で、深さと複雑さ(難しくはありません)を兼ね備えたものでした。

     様々な生きづらさを抱える人たちの物語で、4つの物語が並行して進んでいきます。
     これらがどうつながるのか? なぜこんな表題なのか? と想いを巡らせながら読み進めました。

     時間軸がズレていて、理解しにくい面もありましたが、4つの男女の物語が徐々に絡み合い、つながっていきます。構成の秀逸さが際立ちます。
     加えて、障がい者に関する自分の認識の根幹を、かなり揺さぶられました。残酷な要素もありますが、著者の願い・祈りも感じました。

     驚愕の真実が明かされるラストは、個人的に素晴らしいと思ったものの、余白や余韻を考えた時に、「エンドロール」の必要性については、賛否が分かれるかもしれません。

     一人の女性の確かな存在とその足跡‥。本書を恋愛小説と解釈した方がすっきりかも‥。
     自分の歩んだ人生が、後に振り返った時に、自分にとって、或いは誰かにとって『素晴らしき哉、人生! 』と言えるようでありたいと、しみじみ思う物語でした。

  • タイトルは「素晴らしい人生」って意味でしょうか。
    エンドロールが現実だったらよかったと、タイトルと内容のギャップに本当に泣けました。胸がしめつけられました。
    最近読んだ小説の中で一番切なかったです。

    夫婦である一志と摂より大学生の<GANCO>(摂のハンドルネーム)と障害者の<テルテル>のパソコン通信とその後が切なかったです。

    そして東日本大震災で自らも障害者となった摂は夫の一志に横暴にふるまうようになります。
    「生きていればいいことがあるなんて、なんで言えるの」
    「そんな風に思えない」
    「俺がいるから大丈夫。どんなことがあっても大丈夫」
    摂が夫に違う態度をとっていれば違う結末があったとはあまり思えないのです。
    (夫の一志は不倫に走り、摂のことを書くことによって平静を保とうとします)

    介護してくれる一志に摂が「ありがとう」を一言も言わないのは一志が「私を捨てることができるように」というのが悲しかったです。

    今、何の障害もない人も何かの事故に遭って障害を持つことは十分にあり得ます。
    考えさせられる部分が大いにありました。

    • くるたんさん
      まことさん♪こちらでもおはようございます♪

      私もあの「ありがとう」を言わない理由に言葉が出なかったです。

      介護、障がい、ありのままを教え...
      まことさん♪こちらでもおはようございます♪

      私もあの「ありがとう」を言わない理由に言葉が出なかったです。

      介護、障がい、ありのままを教えられた作品でした。
      あとがきも読むとまた…。
      良作でしたね♪
      2021/07/12
    • まことさん
      くるたんさん♪

      あとがきによると、作者の丸山さんの奥様は、確か障害を持っていらっしゃるけれど、何も問題はないと書かれていて、ホッとしました...
      くるたんさん♪

      あとがきによると、作者の丸山さんの奥様は、確か障害を持っていらっしゃるけれど、何も問題はないと書かれていて、ホッとしました。
      私も、さっきのコメントで、この本を紹介してくださった、くるたんさんに、お礼を忘れてしまいました。
      ありがとうございます!
      2021/07/12
  • ワンダフル・ライフ ー 素晴らしい人生

    さまざまな意味が込められたタイトルだ。
    4つの物語がぐるぐると展開される。
    渦に巻き込まれていく。

    最後まで読んで、「人生」の意味はガラッと音を立てて変わる。
    ああ、そういうことか…
    あまり気分はハッピーではないかもしれない。

    この小説は、著者が障害者の当事者性にはじめて向き合った作品なんだという。僕は障害当事者ではないので、わからないなりの感想だが、かなり成功しているのではないか、と思う。

  • まさか全部が繋がるとは思わなかった。
    最初の障害を持った女性の態度はさすがに無いかなと思いながら読んでいた。

    しかし、全部読んでから彼女も生き生きとした魅力的な女性に変わりはないのだと言うことに気付いた。

    障害者を異物に感じる世の中はダメだと書いていたが、確かにそうかもと思う。

    最後に彼女が言った「ありがとうを言わなかった理由」は本当だろうか?判断がつかなかった。本当ならば彼女はかなり辛かっただろうな。

  • 著者の丸山正樹さん、頸髄損傷の奥様がいらっしゃるのは初めて知った。
    障碍についての描写もリアルなことに納得。
    綺麗事ではすまされない日常が描かれていて、常に問いを投げかけられているような気分で読んだ。
    何組かのカップルのストーリーが平行して進んでいくのだけど、最後の年表で関係がクリアに。
    それにしても摂は、なんであそこまでの悪態をつくようになっちゃったの?

  • 良作の一冊。
    毎回ありのままを現実を見せて伝えてくれる丸山作品。そんな今作は障碍者、介護の世界。

    バリアフリー社会の裏で実は揺らめく障碍者と健常者を隔てる薄いカーテン、そして一瞬でも抱いた経験のある気持ちを容赦なく突き、それに対しての障碍者からの目線、抱く感情も直球で見せてくれる。

    だからこそ何度もハッとズキっと見事に心は収縮し続けた。
    そしてこの物語の構成に一番ハッとさせられた。
    改めて一歩離れてこの物語の全体像を眺めたくなる。
    そして全てがわかったからこそ拾い集めたい言葉もまたある。

    過去作の中で一番好き。良作。

    • まことさん
      くるたんさん♪おはようございます。

      この作品はくるたんさんのレビューで知って読みました。
      私も今までの作品の中で一番、よかったです。...
      くるたんさん♪おはようございます。

      この作品はくるたんさんのレビューで知って読みました。
      私も今までの作品の中で一番、よかったです。
      心に残る作品だと思います。
      読んだ翌朝、思い出して胸が苦しくなりました。
      2021/07/12
    • くるたんさん
      まことさん♪おはようございます♪

      わ、そうだったんですね♪
      私も奥の奥を見せられた気分で、苦しみを感じた作品でした。

      でもしっかり心に残...
      まことさん♪おはようございます♪

      わ、そうだったんですね♪
      私も奥の奥を見せられた気分で、苦しみを感じた作品でした。

      でもしっかり心に残る作品に出会えましたね¨̮♡
      2021/07/12
  • 障害にまつわる「4つの」物語が、交互に描かれていく。
    前情報を見ずに読むのがおすすめ。

    残念ながら、私も障害については一定の偏見を持っていないとはいえない。
    家族にそんな人がいたら、大変だろうなと思っている。いや、そうやって他人事のように思ってきた。

    だけど、誰だって、障害を持つことになる可能性はあるし、介護する立場にもなる可能性だってあるのだ。

    「私がその言葉を使わなかったおかげで、あなたは私を憎むことができた。そして今、私を捨てることができる。そうでしょう?」(p.222より)


    タイトルの「ワンダフル・ライフ」。そしてあとがきに記されていた作者丸山さんの状況。
    障害は「不幸」とは限らないのだと、そんな願いがこめられているように感じた。

    読み終えて、もう一度読み返したくなる作品だった。
    丸山さんは初めて読む作家。経歴を知ってではないけれど、デフヴォイスシリーズも読みたくなった。

  • 介護離職・セックスレスの夫婦・不倫・障害者の恋の4つの物語が進行していく。脊髄損傷者の妻の介護シーンの描写や現実の事件をモデルにしたであろう新聞記事の切り抜きなど重たい内容にページを捲る手が止まりそうになる。そんな中で、脳性麻痺の<テルテル>と<GANCO>の恋は、無理と知りつつも応援する気持ちで読み進みました。しかし、「無力の王」の妻が『ありがとう』を言わない理由、そして、あっと驚くラストで4つの物語がつながり…仕掛けも見事でした。しかし、それだけではない読み応えのある小説でした。

  • 事故による頸髄損傷で肩から下が動かず寝たきりの妻の介護をしている男…で話しは始まる。

    それから違う話しが次々と…、と思って読み進めるとひとつの人生だった。
    繋がっていたそれぞれは、すべて重くてその時々で悩みは尽きず…。
    だがそれなりに何かを抱えたままで日々を過ごしていくことが生きているということなんだろう。

    妻が介護して貰っても決して「ありがとう」と言わなかった訳に胸を締めつけられる思いがした。

  • 事故により障害を追った妻を介護する夫から物語は始まる。
    いきなり重いテーマだ。
    作品は、時と舞台の違う、4編の男女のエピソードで構成されている。
    一つ一つの話を読み進めると、何か違和感を感じながらも少しずつ明らかになるもどかしさ。
    トレーシングペーパーに断片的に描かれる4枚の紙のようだ。
    夫々を重ねることで、空白が少しずつ埋まり、最後に全てが浮かび上がりるといった趣向に唸らせられた。
    それよりも本作は、健全者と障害者の意思疎通の難しさ、偏見、差別など、自分の良心や道徳心を試される、心を強く揺さぶられる内容に正にやられた。
    生きているだけで幸せ。と煩悩の塊の私に思える時が来ることはあるのだろうか。

全138件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

京都大学大学院理学研究科教授。

「2004年 『代数幾何学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

丸山正樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×