ブラックウェルに憧れて

著者 :
  • 光文社
3.80
  • (36)
  • (75)
  • (58)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 566
感想 : 67
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334913564

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 英国生まれのエリザベス・ブラックウェル(1821-1910)
    世界で初めて医師として認められた女性。
    アメリカで女性として初めて医学校を卒業し、英国で初めて正式に医師登録された女性です。

    医大の解剖学実習で組まれたのは、異例ともいえる女性4人だけの班だった。
    城之内泰子教授の指導の下、優秀な成績で卒業した彼女たちは、
    真摯に医療の道を歩む。
    医学部不正入試と過酷な医療現場。
    5人の女性医師がつむぐ涙と希望。―そして秘められた意外な真実。


    心身に障害のない、日本人の、男性医師――それこそが医局員の標準であって、
    初めから女性医師は規格外の存在なのか。
    自分たちは、女というだけで欠陥を抱えているのだろうか。

    医学部の不正入試問題は記憶に新しい。
    どうしてそれまで疑問に思わずに過ごしていたんだろう…。
    男性のお医者様に比べて女性のお医者様の少ない事に。
    女性としてそのニュースを耳にした時にとても言葉に表す事が難しい、
    言いようがない怒りを覚えました。
    著者は現役の医師です。
    自身がこれまでに味わって来た思いや、きっと周りの女医さんが感じて来た
    思いを描いているのだと思った。
    それだけにとても現実味があった。
    医学界は、これほどまでに男女差があったのですね。
    女性は入試の点数だけではなくて、医療現場においても
    差別的な扱いを受けていたのですね。
    とても深い怒りと悲しみを感じました。

    どんな職種であっても職業であっても理不尽さを感じる人は多いと思います。
    女が女であるということで理不尽な扱いを受ける事のない世の中になりますように。
    人類の半分である女性が、もう半分の男性と対等に見られる世の中になりますように。

  • 中央医科大学、解剖学で白菊会優秀賞を貰い、後に女医となる四人。彼女たちは女という理由で一度医大を不合格になっていた。そして40歳になり転機を迎えた女医たち。

    卒業した医大の病院で眼科医として働く仁美は、実力もない後輩の「普通の」医者にリーダーの座を奪われる。

    医大時代息子を出産しシングルとなった早紀は、育児を献身的に手助けしてくれた父が認知症になり、時間を作る為フリーのドクターになっていた。

    涼子が救急救命医として働く病院は経営難に陥っており、エスコートドクターへの転身を指示される。また夫との不仲にも悩んでいた。

    少し要領の悪い恵子は、3歳の子供を育てながらも新生児科の副部長となったが過労で倒れてしまう。

    それぞれの困難を自ら打開していく彼女たちに心打たれた。全てがプラスにはならない部分に物語としては物足りなさを感じるのだが、それはまだまだ改善が途上なことをリアルに表しているからなのだろう。

    -----------
    覚えておきたい言葉。
    向井千秋さん[宇宙短歌]
    「宙返り 何度もできる 無重力」
    彼女は心臓外科医から宇宙飛行士への転身を果たしている。

  • この本を読んで自分の状況が少し重なったので、ここに感じたことを記します。

    私は大学で機械工学を専攻した。
    実家が金属加工の会社を営んでいることが大きな理由で志望したが、受験会場でびっくり。
    機械系を志望する学生の中に女性は私を含め2人しかいなかった。
    実際に入学したのは約120名の中で7名のみだった。
    医学部とはそもそもが違い志望するものが少ないという話だが、工学部は男の世界なのだ。
    希少な女子学生は就活は有利なのかもしれない。
    さらに、入社した会社は昭和の考えが色濃く残る、良くも悪くも女性社員の扱いに慣れていない会社だった。
    女性社員の先輩が言うのだから間違いない。
    入社してからわかったことだが、この会社で女性としての幸せと出世どちらも手にしようとするのはむずかいようだ。
    そもそも新卒入社でいままでに出産を経験した女性がいないため、具体的なビジョンは見えない。

    ああ、やはり男女平等はそうなのか。

    それでも私たちは自分の道を選んでいくしかない。
    どんな道を選んだとしても間違いはなくて、そして何度でも選び直せる。
    仕事に、そして生き方に迷う私の背中もそっと押してもらった気がした。


    We shouldn't give up even if we face an unreasonable real world.
    We can turn somersaults again and again.

    • さてさてさん
      つきさん、こんにちは!
      いつもありがとうございます。
      すみません、コメントさせてください。
      私もこの作品を読みましたが、その上で、つき...
      つきさん、こんにちは!
      いつもありがとうございます。
      すみません、コメントさせてください。
      私もこの作品を読みましたが、その上で、つきさんが書かれたレビューにとても心動かされました。この国ではまだまだ男女平等にはほど遠い現状があるように思います。女性としての幸せと出世の両方を叶えていらっしゃる方も少ないのが現実だと思います。この作品では、そんな世界の代表格の一つである医師の世界が描かれていました。つきさんののいらっしゃる世界でも状況は同じなのですね。一見、男女平等っぽく見えていてもまだまだというのが現実なんだと改めて思いました。男性の意識が変わらないままに年代を超えて考え方が受け継がれていってしまっているところに元凶があるのだろうと思います。なかなかに意識改革が進んでいかないのはそこにあるのだと思います。
      つきさんのレビューではいつも最後に英文を使ってまとめられていらっしゃいます。私、英語が出来るわけではありませんが、それでも英語の方につきさんの思いがより見えるように感じています。この作品のレビューは特にそう感じました。
      仕事に、生き方に、私たちは常に悩み続けながら生きていくのだと思いますが、この作品の先に見え隠れする南さんの思いに、つきさんのレビューが共鳴したように感じました。すみません、上手くまとめられないですが、どうしてもコメントさせていただきたいと思いました。
      2023/10/01
    • つきさん
      さてさてさんからコメントをいただける日が来るなんて、とても嬉しいです。
      こちらこそいつもありがとうございます。
      英語は勉強中なので拙いもので...
      さてさてさんからコメントをいただける日が来るなんて、とても嬉しいです。
      こちらこそいつもありがとうございます。
      英語は勉強中なので拙いものですが、1番深く感じたことを表現するようにしています。
      男女平等の問題は根深く、私の周りには結婚や出産に積極的でない同世代の女性が多いです。
      私はどちらもまだ諦めたくはないので、私なりの答えをこれからも悩みながら見つけていきたいと思います。
      2023/10/01
  • 2020年7月光文社刊。書き下ろし。最初の女性医師であるエリザベス・ブラックウェルをタイトルにした、中央医科大学教授城之内泰子と4人の同級生の女性医師達のお話。女性の医大入学不正も真っ向から取り上げた展開が、興味深かった。登場する5人は、いずれもエライというか、こんなにもたいへんなんだとただただ思うだけでした。

  • 不正入試と、女性医師のいま――『ブラックウェルに憧れて』著者新刊エッセイ 南杏子 | エッセイ | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/634494

    【著者に訊け】南杏子氏 『ブラックウェルに憧れて』|NEWSポストセブン
    https://www.news-postseven.com/archives/20200903_1591254.html?DETAIL

    shirako illustration - ブラックウェルに憧れて
    https://rakoshirako.com/15f128266e1bd

    ブラックウェルに憧れて 南杏子 | フィクション、文芸 | 光文社
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334913564

  • 医者の話ということで医療従事者に将来なる者として気になり読むことにした。病院の中での女性差別についての話であった。いつかは性別関係なく女性も社会の中で輝ける日がくるといいなと思った。

  • 自分の居場所でどう生きるのかは、自分で決める。自分を信じて。そう生きたい。

  • 医大の解剖学実習で組まれた、異例の女性だけの班。仁美、早紀、涼子、恵子は、城之内泰子教授の指導下、優秀な成績で卒業し、医療の道を歩む。だが、前途には無数の壁が……。そして教授が胸に秘めていた真実とは。現役医師が描く切実な人間ドラマ。

  • 感想
    医学部の女性が入学しにくいように得点調整しているところから話は始まる。

    様々な医学会での女性差別について例を交えながら書いている。

    これは本当にあってはならないことである一方で、女性の取締役を増やさないといけないということで能力が劣る場合でも無理矢理昇進させる例もあり、なかなか難しい問題だ。

    あらすじ
    医学の世界での女性差別についての物語。解剖学教室の女性教授である城之内が、入試における女性差別についてインタビューを受けるところから始まる。

    城之内の初期の学生で優秀だった四人の女医の現在についてそれぞれ語られる。

    眼科が専門だった仁美は、大学病院の一線で15年間必死に手技を磨き、オペリーダーも目前であったが、女性であるという理由からリーダーになれず、オペがヘタな男性の後輩がリーダーとなる。これを機に嫌がらせがあり、大学を去ることを決意する。

    認知症の父親の介護をしているシングルマザーの早紀は健康診断専門医だ。激務の大学病院は、息子の子育てと上手く両立出来ないことから諦め、早々にフリーランスの勤務医や健診医として働いた。

    救急医である涼子は、麻酔科医である夫と別居中である。しかも、年内に救急科と麻酔科が閉鎖されることになった。夫から別れを切り出され、エスコート・ドクターという新しい役割が与えられ、患者との触れ合いの中で夫との別れを決意する。

    恵子は新生児集中治療室で赤子を助ける医者だ。夫との関係や子供の世話に疲れ、体調を崩し、辞職まで考えたが、病気の原因が分かり、新たに頑張る決意をする。

  • 「女性医師は、女というだけで欠陥を抱えているのだろうか」医大の解剖学実習で組まれたのは女性4人だけの班だった。長谷川仁美、坂東早紀、椎名涼子、安蘭恵子。城之内泰子教授の指導の下、優秀な成績で卒業した彼女たちは、真摯に医療の道を歩むが……。医学部不正入試と過酷な医療現場。女性医師たちがつむぐ涙と希望。そして、秘められた真実。デビュー作『サイレント・ブレス』が話題の現役医師が描く切実な人間ドラマ!

全67件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、慶応大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを務める。帰国後、都内の高齢者向け病院に内科医として勤務するかたわら『サイレント・ブレス』で作家デビュー。『いのちの停車場』は吉永小百合主演で映画化され話題となった。他の著書に『ヴァイタル・サイン』『ディア・ペイシェント』などがある。


「2022年 『アルツ村』 で使われていた紹介文から引用しています。」

南杏子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×