不可触民: もうひとつのインド (知恵の森文庫 a や 1-1)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334780449

感想・レビュー・書評

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  • 不可触民という言葉はよく聞くし、理解しているつもりであったが、知らないことが多すぎた。(メディアで紹介されていることだけで知ったつもりになるのは危険だと再認識した)
    ヒンドゥー教がカースト制度を生み出していること等初めて知ることが多く、不可触民であればひき逃げをしても許されることに納得ができなかった。
    某世界史サイトで本書が紹介されていて手に取ったが、本書を読むことができて本当に良かった。

  • 初版2000年という古い本ですが、現在のインドはその頃とどれだけ変わっているのだろう?特に農村に色濃く残る不可触民差別。きっとそれほどの改善はないのだろう。何千年と続くカースト制度、ヒンドゥーの闇。

  • 本書は14年前が初版ですが、現在のインドは一体どう変わったんだろう?当時から奇跡みたいに全てが変わっていて欲しいと心から思いました。現在の不可触民について知りたく渇望しています。

  • 著者を知ったのは『破天』を読んでから。この新書とは思えない2段組700ページ超の怪書にすっかりやられてしまった。インド仏教徒一億人を束ねる大指導者にして最下層の不可触民から絶大な信用を集める佐々井秀嶺師の伝記なのだが、本書はそのインドの民衆に山際氏が惹かれていく原点を描いている。こんな図書館で借りなきゃ読めなさそうな本が電子書籍で読めるなんて便利な世の中だ。

  • ある女盗賊の本を読む前にこちらから


    著者の乗った車が不可触民をひく。(逃げたので生死不明)彼らが非人間として扱われている印象的なくだりからはじまる

    アウトカーストな彼らをハリジャン(神の子)とよび、カーストの最下層に組み込もうとする・聖人?ガンジーはブラーミン出身。

    争いは否定しても差別はなくさない=ガンジーと対立するアンベードカル博士について知りたくなる


    この本が出版されてから大分たちますが、状況はかわったのか…無知な私にとり色々考えさせられる事が多く、著者の続編に期待

  • (2009.06.18読了)
    この本は、最初1981年に三一書房から刊行されました。
    1970年代のインドのカースト制の最下層民についての現地取材記です。
    カースト制は、ヒンズー教に基づいた考え方なので、不可触民は、仏教徒に改宗して、最下層から抜けるという考え方もあるようです。
    知識人、役所、警察、等はみんな上層階級ですので、不可触民に何があっても助けてはくれません。不可触民を車ではねても知らん顔、いうことを聞かなければ、家に閉じ込めて火をつけたり、飛び出してくると銃で撃ったり、等、悲惨な事例がこれでもかというほど取り上げられています。
    不可触民の上層の農民は、不可触民をそれとなく見張っているそうで、一日一食以上食事をとる不可触民がいると、放っておかないということです。自分たちより体力をつけられるといじめることができなくなるからだそうです。
    アメリカの公民権運動は、インドのガンディーの非暴力主義の影響を受けていますが、黒人救済のために設けられた、就職や入学の枠の考え方もインドの不可触民の救済政策を参考にしているそうです。
    不可触民の救済枠について、不可触民の上層の貧しい農民たちは、なぜ彼らだけ特別扱いされるのかという反感は、アメリカの貧困白人たちのものと同様です。

    アメリカで黒人が大統領になる時代が来るとは、誰も信じないのと同様、インドで不可触民出身者が、首相になる時代が来ることはないだろう、と述べられていますが、
    オバマ大統領が実現した今日、インドで、不可触民出身者が、首相になる時期が近付いているのでしょうか?

    著者 山際 素男(やまぎわもとお)
    1929年、三重県生まれ
    法政大学国文科卒業
    朝日新聞社勤務を経て
    インド国立パトナ大学、ビスババラティ大学に留学
    インド文化を専門に、カースト制度の現実を追い続けた
    1998年、「マハーバーラタ」(全9巻)で第34回日本翻訳出版文化賞受賞
    2009年3月19日、肺炎で死去、79歳
    (2009年6月18日・記)

  • インド思想史などを読んでいたのでは、絶対に分からない、これほどに圧倒的な差別の現実を今まで知らなかったという驚き。これほどに情報が発信され受信される世界においても、抑圧される人々が発信の手段すら満足にもたなければ、2億の人々の驚くべき現実がかんたんに遮蔽されてしまうという事実への驚き。ひとつの制度の中で甘い生活を許されてしまった人間は、他者をどんなに苦しめようと、その生活を守っていこうとするのが現実なのだということの、大規模なレベルでの確認。

    今後私は、不可触民の視点を意識せずにインドの精神世界に接することはできないだろう。インドの不可触民問題は、たんにインド一国における差別問題なのではない。インドにあれほどに連綿と続いた高い精神性の伝統と、その一方でその伝統と一体となったカースト制度。人間を差別し虐げる文化的装置として、これほどに強烈で徹底的なものはない。その矛盾の深さ。

    この本を読んでこれほど強く何かを訴えかけられたように感じるのは、この矛盾の深さによって、人間とは何か、人間の歴史と文化とは何かという根源への問いかけを強いられるからだ。ここに人間とその文化の一面が剥き出しにされているのだ。

    「自分たちの一番厭な肉体労働、不潔な仕事の一切を、世襲的に背負わせ、土地をあたえず『農奴』としてただ同然に働かせる。女は男のセックスの慰み物として、好きなように扱う。‥‥こういう存在が一億以上もいて、人々に奉仕してくれるのなら、だれだってそういう制度は、あってくれた方がいい、と思うじゃありませんか。」

    こうしてしかも、衣食住については一切責任を負わないのだから、奴隷制よりもなお悪いと、不可触民は訴える。制度として保障されさえすれば、人は誰しもこうした文化装置のうえに乗ったっま、差別から眼をそむける可能性がある。現にそのような事実が3000年も続いてきたのだから。

    インドの精神性に引かれれば引かれるほど、カースト制の現実にもっともっと眼を向けていきたいと思う。

  • 人道家が感情的に書いてる本かと思って構えて読み始めたけど淡々としててよかった。続編的なのあるみたいなのでそっちも読みたい。

  •  インドの抱えているカースト問題を知るにはもってこいの本。インド社会の恐ろしい実情を垣間見ることができます。

  • 本当に恐ろしい話だ。人間が別の人間を、「お前は人間ではない」と決めつけるなんて。今だに、数十人の人間が一度に、さしたる理由もなく、生きたまま手足を切断され、灯油をかけられ、焚火にくべられ虐殺される。それを、村の人々がショーのように見物している。そんなことが公然と行われ、社会的にも黙認されている。昨今のITブームでインドは一躍世界の注目を集めている。本文中に、インドは21世紀的超エリート層から、千年前と変らぬ農奴として極貧層まで、数千年のジェネレーションギャップを抱えた社会だ、とあった。マハトマ・ガンジーが、不可蝕民(アンタッチャブル)を、「神の子(ハリジャン)」と呼び、差別の撤廃を訴えた。けど、実際のアンタッチャブルたちは、「ハリジャンなんて、うわべだけ取り繕って偽善を満たすような呼び方はやめてくれ」と痛烈にガンジー批判をするところは衝撃だった。ガンジーは日本では聖人だもの。ガンジーはあくまでもブラーマン(バラモン)だったのだ。カーストの中で生きているブラーマンにどうしてアンタッチャブルを救えようか。
    こういう差別の実態を見聞するにつけ、本当に自分の無力を思い知る。が、そんな無力感に苛まれつつも、自分は「人を育てる」という職業に従事することで、ものすごく間接的にでもその問題に目をそらさない人たちを育てていく助けをするしかないんだなあ、と思う。(2000 Dec)

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