東京すみっこごはん 楓の味噌汁 (光文社文庫 な 41-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334777142

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ4作目。
    今作で登場するのは、読モの瑠衣、母子家庭で高校進学に悩む瑛太。
    いつもの流れならば、そのまま「すみっこごはん」の仲間入りをするのだけれど、今回の二人はわだかりを残したまま、「すみっこごはん」に来なくなっていた。
    そんなある日、「すみっこごはん」のメンバーが解散した後、楓の父・遠藤が「すみっこごはん」にやってくる。
    動揺しながらも、祖父と柿本と同席してもらって、父と話をすることにした楓。
    すでに家庭を持ち、もうすぐ子供が生まれるということで、楓を訪ねて来たらしい。
    水漏れから2階の改修工事も始め、楓の中で「すみっこごはん」に対する新たな感情が芽生える。
    それがどんな未来になるのかは、次巻のお楽しみと言うことで、次巻はいよいよ最終巻。
    また読む本がなくなってしまうのが、寂しい。

  • 『東京すみっこごはん』シリーズも第4弾になりました。

    『東京すみっこごはん』と出会ったのは2016年7月の事。
    母の闘病中でした。

    私自身の気持ちも落ち込んでいるときだったので、『東京すみっこごはん』は心の真ん中にずどんと響きました。
    気持ちも沈み、食欲がなかったこともあり、食べることが疎かになっていた時でした。
    『東京すみっこごはん』を読んでいると、食べること=生きること。
    生きること=母の愛を感じること。
    しんどかった気持ちが、少しだけ解き放たれたようでした。

    東京のとある町の片隅にある「共同台所 すみっこごはん」
    その看板には ” 素人が作るので、まずい時もあります ”
    なんて、書いてある。
    「すみっこごはん」を守って来た常連さんたち。
    そして、時々、この場所に引き付けられるようにしてやってくる人たちがいる。

    シリーズ第3弾までは、新しくこの場所を訪れた人たちが、「すみっこごはん」に心の重りを下していたのだが…
    シリーズ第4弾では、まだまだスッキリしない人たち…
    次のシリーズでも登場するのかな…
    そんな予感。

    シリーズ第5弾が待ち遠しい。

  • 「すみっこごはん」のシリーズ、
    口が悪くて文句ばかり言っている、渋柿こと柿本さんや、タッパーでお惣菜をたくさん持ち込んでくれる気のいいおばちゃん田上さん、ラブラブで結婚間近の一斗と奈央、楓の同級生の純也、プロの料理人・金子さんなど、頼れる常連さんに支えられての第四弾。
    楓にも大きな転機が?!

    「すみっこごはん」は、楓の母・由佳が娘のために残した形見と言ってもいい。
    そして、このシリーズでも、たびたび“母”の存在が語られるが、今回も、皆さまざまな母を抱えている。
    どんな屈託があろうと、自分を世界に誕生させた人物として、切り捨てることができないのが、母親との関係なのだ。

    そして、人は皆、見えない敵と戦っている。

    面白かったのが、高校生の楓が、三十路前半のお姉さんと、中学生男子の目には、全く逆の印象で映ることだった。

    食べ物の姿かたちよりも、出汁の匂いが濃くかおる一冊でした。

    『安らぎのクリームコロッケ』
    読者モデルの小柳瑠衣(こやなぎるい)、本業は派遣のOL。
    なけなしのプライドで、SNSの架空世界の中、セレブを演じるが…
    故郷の母への激しい感情が彼女を苦しめる。

    『SUKIYAKI』
    中学3年の奥村瑛太(おくむらえいた)
    上手く立ち回っているから、彼の貧困に気づいている友達はほとんどいない。
    働きづめの母をこれ以上疲れさせないために、進学は諦めるべきか…
    上を向いて歩こう、涙がこぼれないように…

    『楓の味噌汁』
    みんなに手を差し伸べたい、「すみっこごはん」がみんなの拠り所になるように…
    でも、未熟な自分は母には及びもつかない。
    悩む楓の前に現れた人は…

  • すみっこごはん4作目。
    SNSで見栄を張る読者モデル、片親で貧乏な中学生が登場。

    今回は楓がメインで新たな登場人物と絡み、貧困や自分でどうにもできない苦しさのようなものが物語の多くを占めていた。
    特に中学生の瑛太君、彼のその後が気になります。確かに楓みたいなタイプが苦手なのわかるかも。良い子過ぎて正論過ぎてね…
    2作目に登場した秀樹君が幸せそうで良かった。

  • 瑛太くんの
    自分なんかに手が差し伸べられるわけがない。
    失敗した時のことを考えるとはじめから
    受けとらないほうがいい。
    が印象に残っている。

    手を差し伸べる側、受け取る側
    両方の葛藤が滲み出てるなと感じた。

  • すみっこごはん第4弾。無理して充実した人生を演じる瑠衣、母子家庭で高校さえ行けないかもしれない瑛人、遠藤という男…。今回は何だかみんな、ハッピーエンドでは無くて、現実的だった。でも、次の最終巻への通り道なんだろうなぁ。

  • このシリーズ読むのも4冊目。
    何冊読んでもすごい好き。

    私も行きたいなあ、すみっこごはん。

  • お金お金お金お金、、、この巻では、日本の相対的貧困の問題をまざまざと突きつけられた感じがする。
    相対的貧困をテーマにした記事で以下の事が書いてあったけど、まさに瑠衣や瑛太みたい。
    「周りのみんなにとっては当たり前の生活が自分だけ享受できない」という状態は、子どもたちに破壊的なダメージを与えます。そして、「なんで、僕だけ?」 を繰り返した子どもたちは、もうその言葉を言わなくなります。
    その代わりに、ある言葉を繰り返すようになります。それは次のような言葉です。「どうせ、僕なんて」

    インターネットやテレビで、セレブの持ち物やリア充の生活が簡単に見れるから、うっかり比較なんてしちゃうと、ハングリー精神の糸口さえ握りつぶされる。

    楓はすみっこごはんで味噌汁をマスターしてから、自分の生き方に肯定的になれたからこそ、周りの人たちにも幸せになってほしいと一生懸命だけど、人に影響を与えることってすごいことなんだよね。

    というか、楓の父親がダメ過ぎて…女性陣の辛辣なコメントに心底同意してしまった。弟ができる!と、喜べる楓はすごいと思う…。

    安らぎのクリームコロッケ…毒母からの恨み言と金の無心に取りつかれて、偽物の人生(セレブな自分を羨んでくれるSNSの世界)を取り繕う派遣OLの瑠衣。
    楓は、すみっこごはんで少しでも楽になって欲しいが、亡き母や周りのメンバーに愛されてる彼女に嫉妬する瑠衣は楓を拒絶する。
    すみっこごはん始まって以来のバッドエンド。

    SUKIYAKI…母子家庭で、生活保護を受けずに母親のパートの収入でやりくりしている中学3年の、瑛太。高校に進学してほしいという母親の希望とは裏腹に、受験すらできるのか危うい家庭状況に、進学か就職か、心も浮わついて勉強にも身が入らない。
    そんな時にすみっこごはんの柿本が何かを察して、ジムの、清掃という仕事をくれた。
    すみっこごはんのメンバーに勉強も教えられて、高校受験に向けて頑張ろうと意気込んだ矢先、母親の仕事がなくなり、高校生になる話がなくなる。差し伸べられる手を受け取ってもいいという言葉を励みにしたのに、直前で打ち砕かれた瑛太の鬱屈が楓に向かう。

    楓の味噌汁…前の話の二人について、どうして上手くできなかったのか、母親ならもっと上手くできたんじゃないか。という悩みを深める楓。そんな中すみっこごはんに現れた、名前も知らなかった楓の父親。
    楓の母が亡くなったことも知らずに登場し、線香をあげさせてほしいという。楓は父親と話をするべきかどうか悩むが、純也の後押しもあり会うことにする。そこで聞いた話は、自分の母親は万物を救う女神でもなく、何でも受け止める大樹でもなく、感情豊かで、頑固で、情の深い女性だった。母親みたいに(万能に)なりたいのに、なれないという焦りから解放された楓は、すみっこごはんを周りの人たちともっといい場所にしていきたいと決意する。純也との仲も少しずつ深まっているようでなにより。

  •  「東京すみっこごはんシリーズ」の第4作。

     東京の昔ながらの商店街。昭和の町並みがそのまま残った商店街の,路地裏のすみっこに,その共同台所,すみっこごはんがある。

     読者モデルとは聞こえがいいけれど,無理してセレブ感を出している派遣のOL,瑠衣が主人公の「安らぎのクリームコロッケ」。

     母一人子一人で,高校進学も厳しい家庭の瑛太が主人公の「SUKIYAKI」。
     楓と,生まれる前に失踪していた父,豊。そして楓が幼かった頃になくなった母,由佳。その家族をつなぐ「楓の味噌汁」。

     三つの短編ではありますが,楓,すみっこごはんとそこにやってくる人々,柿本さん,田上さん,金子さん,丸山さん,奈央さん,一斗さん,秀樹くん,純也。それぞれの人生の物語がすみっこごはんの食事を通じて交わっているのが羨ましいです。食べることって大事だなあ。

     今回は,瑠衣にしても,瑛太にしても,あまり生活が恵まれているとはいい難く,そんな主人公たちが悩みを抱えているところも。経済格差,貧困など,いろいろと考えさせられるところもありました。

  • 変わらず集まる顔、顔、顔。
    そこに新たに加わった顔、顔、顔。

    記憶にない母の幻に追われるように
    肩に力が入りすぎた楓だが
    彼女の凝りをほぐしてくれたのは
    意外な人でしたね。

    もちろん、すみっこごはんのみんなも
    知らず知らずのうちに、楓の心を
    ほぐしていく。

    大きく動いたすみっこごはん。
    今回は特に、次回作が待たれます。

    それぞれがそれぞれの「味」を
    見つけようと歩き出したのに
    ただひとり、気になる男の子が残ります。

    瑛太くんは帰ってくるのでしょうか。
    心配でたまりません。

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著者プロフィール

1975年青森県生まれ。東京外国語大学卒業。『月だけが、私のしていることを見おろしていた。』で電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞し作家デビュー。シリーズに『東京すみっこごはん』『今日は心のおそうじ日和』がある。著書に『ベンチウォーマーズ』『ハレのヒ食堂の朝ごはん』『坊さんのくるぶし 鎌倉三光寺の諸行無常な日常』『世はすべて美しい織物』『時かけラジオ 鎌倉なみおとFMの奇跡』『いつかみんなGを殺す』などがある。

「2023年 『月はまた昇る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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