涅槃の雪 (光文社文庫 さ 27-3 光文社時代小説文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334767877

感想・レビュー・書評

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  • 天保の改革を推し進める老中・水野忠邦、その手先となる南町奉行・鳥居耀蔵、対立する庶民派の北町奉行・遠山の金さん、遠山配下の与力・主人公の高安門佑、そして元遊女のお卯乃。鳥居耀蔵の違った一面が見られた。最後はハッピーエンド。面白かった。


  • 天保11年
    町与力・高安門佑は、新任の北町奉行・遠山景元から、右腕になるよう言われる。が、実態は、愚痴の吐口のようだ。

    隠売女の取締・女浄瑠璃取締・株仲間解散令・芝居町所替・人返し令・上知令と、世に言う「悪名高い天保の改革」を強行する老中首座・水野忠邦。

    奢侈禁止令は、江戸の生気を奪い取っていった。

    南北両奉行は、上申書を提出したが、悉く認められず、改革を本気で進めたい水野は、名奉行の誉高い、南町奉行・矢部定謙を解任。後任に、鳥居耀蔵を任命する。

    己の正義を貫こうとする門祐。
    元遊女・お卯乃の過去を通じて「妖怪」の異名のある鳥居耀蔵の一面を見る、門佑。

    最後に、出戻りで烈女の姉、園江が取った行動は、この作品に、幅を持たせた。

  • 天保の改革がでる歴史のど真ん中に、遠山の金さんが出る人情話に、楽しくてしょうがない。門さんの無骨さと自分は人と交われないと悩んだり、好きな女に手を出さないとか惚れる。大阪から帰って奥さんと庭で涅槃の雪を見る、奥さんが門さんと読んだ時に泣きそうになったから、お卯野だったんだねと。あれから2年経つてるから思うてたよ、そう考えるとお姉さんも良い人なんだよ。西條奈加さんの文章はそれぞれ違う本当に読み応えある。

  • 教科書で読んだ天保の改革が、様々な立場から捉えた物語として描かれていて、とても面白く読みました。誰が適役かなぁと役者さんの顔を思い浮かべながら読むのも楽しかったです。時代劇が少なくなって寂しい…。
    今も昔も政まつりごとは変わらないのだなぁ。お仕事小説の要素もありましたね。

  • 今の時代にも通じる、世を動かす上の思惑で右往左往させられ、地獄の苦しみを耐える庶民。そんな庶民のために働いてくれる遠山の金さんと、その部下、高安門佑。鷹のように鋭い顔なので鷹門と呼ばれています。主役の鷹門が私のモロ好みで、読み終えてしまうのが寂しく、割に読むのが早い方なので前半面白すぎて読み進め、鷹門に魅せられると、別れるのが寂しく。少しずつ噛み締めるように読み、しかしとうとう読み終えてしまいました。
    今や鷹門のような男はそうはいません。男性もムダ毛まで処理し、パックし、美を追及する時代。
    鷹のように鋭い顔の男など淘汰されてしまいました。怖がられる容貌の人はことさら優しい人になります。生まれた時から、人から恐れられるという苦しみを耐えねばならないので。
    そして水野忠邦の改革の急先鋒であった鳥居輝蔵もまた、おもてには見えない深い考えの持ち主。このお話に出てくる人たちは男も女もウカウカ生きてはいません。覚悟して、己の貫くものを大事に、いかに苦しくても折れることなく幸せになります。
    涅槃の雪の意味が途中でわかりますが、私はその場面で大泣きしました。ぜひぜひ読んでください。

  • 「涅槃にも雪は降るか」
    水野忠邦の改革の元、女郎として捕まったお卯乃。
    主人公門佑の家で女中として働きながら心を通わせていく。

    お卯乃の弟常松が15の食べ盛りなのに、足が悪く皆の足を引っ張っているからという理由で食を絶ち、自ら死に至った話は心が引き裂かれる思いでした。

    そんな弟が姉にこっそりともらした「雪が好きだ」という言葉。雪になると畑仕事が出来ず、皆が家にいる。それが嬉しいのだと。

    そんな常松の心情を思うと、姉としてはたまらない気持になりますよね。

    最後はハッピーエンドです。
    遠山様の最後の冗談には笑えなかった。
    あれいらないんじゃないかな。

  • わずか2年の短命に終わった天保の改革を背景に、その時代を生きる幕閣から女郎に至る人々の生き様が描かれています。信念を貫くとはどういう事か、個性豊かな登場人物を通じて問いかけられているように思います。
    物語はとても面白く読みやすい。エンディングなんて最高です。頭からゆっくり読んでください。桜吹雪でお馴染みのお奉行様も出てきます。

  • 面白かった。最後はハッピーエンドで読後感は良かったかな。

  • 天保の改革
    悪名高い改革によって苦しむ町の人、取り締まる役人、それぞれの立場と感情。
    遠山景元と鳥居耀蔵など、知られた人物のキャラクターが面白かった。

  • 天保の改革を描いた小説って読んだことなかったなぁ。

    主人公は、北町奉行所に勤める町与力。本来、市井の人々と為政者の間に立つ役目が故に、苛烈な取り締まりに思うこと多し。

    主人公を通し主要人物が複眼的に描かれていて、主人公の真摯さや謙虚さとともに、単純に善悪で割り切れない厚みのようなものを感じました。水野忠邦だけは、自分だけしか見えていないやつとして描かれてましたが・・・。

    それとともに、題名「涅槃の雪」という言葉の持つ、静けさ、哀しさ、美しさが心に残りました。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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