ロビンソン・クルーソー (光文社古典新訳文庫 Aチ 5-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (587ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334753825

感想・レビュー・書評

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  • 子供のころ童話版で読んだ本を原本訳で読み返すシリーズ。
    巻末解説によれば「ロビンソン・クルーソー」こそは世界ではじめての「小説」ということらしい。
    (じゃあ「源氏物語」は世界最古の小説じゃなくて何なのだという疑問はあるが)
    どうりでワクワクするはずだ。

    結論としては読んで良かった。やはり童話では省かれていた部分−−−ロビンソンの人間としての葛藤、失敗だらけのサバイバル、宗教的観念−−−に深い味わいがある!

    ロビンソンが島を探検しているとき「メロンがごろごろなっているのを見つけた」という場面をなぜかよく覚えていて、三十年以上経って同じ場面に出会い、子ども時代の記憶がよみがえって嬉しかった。
    ちなみにメロンを食べたかどうかは描かれておらず「メロン食べないの? ごろごろなっているのに!」と思ったのも子ども時代と同じだった。

    昔の記憶と印象が違うなと思ったところは、宗教的な色合いが思いのほか強かったこと。

    無人島に二十七年も一人で暮らし、会話をする相手のいないロビンソンは、聖書を読んで神と対話することで孤独を克服していく。
    お金をいくら持っていようと何の意味もなく、金貨より新品の靴下のほうがよほどありがたい生活。

    物がないことに不平をもらさず、今ここにある物に満足して生きていくようになるロビンソンの心境変化は、子供向けに書かれた抄訳本では表現されていなかった。

    "ものがないことへの不満は、あるものへの感謝の不足から始まる"
    深い。

    また、一人ではとても動かせない大きなボートをよく考えずに陸地で作ってしまうなど、多大な時間を費やして無駄に終わる失敗を何度も繰り返していたことも印象に残る。
    鋤やシャベル、鍋といった生活を助ける道具がいろいろ欠けている中で創意工夫をこらし、少しでも生活を楽にしようと悪戦苦闘するロビンソン・クルーソー。

    「これさえあれば簡単に実現できるのに!」というようなことが、道具ひとつ無いだけでとんでもない回り道をする羽目になる。
    しかも回り道をした挙句に成果が得られないこともしばしば起きる。

    私たちは高度な文明の中に暮らし、あらゆる生活の不便を叡智で解消している。
    嵐に巻き込まれて遭難する商船などは、今やほとんどない。
    シャベルや鍬なんかそのへんで売っているし無くても生きていける。
    ヤギ皮をなめして服や傘を作ることに膨大な時間を費やす必要もない。

    生まれたときから当たり前のように享受しているこの生活は、いま土の下で眠っている先人が、膨大な間違いを積み重ねた犠牲の上に成り立っている生活なのだ。

    野蛮人との遭遇や相棒フライデーとの出会い、救出される前後のエピソード等はほとんど覚えていなかった。

    最後の陸路でポルトガルからイギリスを目指す途中、雪山でオオカミの集団に狙われるシーンは、ジャック・ロンドンの「白い牙」を思い出した。

    また挿絵も出版当時のものを採用しているのか、趣がある。
    男性の頭身が全体的に短く描かれていたり、馬が左右の脚を同時に出す、ウサギやチーターのような駆け方をしている。(実際の馬は左右の脚を交互に繰り出して駆けるが、写真が発明されて実際は違うとわかるまで、こう走ると信じられていたらしい)

  • 子供の頃に何度か読んだことはあったけれど、大人になって初めて読破。
    デフォーは最近、ペストについてのジャーナリズム的な文章が注目されたけど、ロビンソン・クルーソーのサバイバル生活の中でも、詳細に数字を駆使して描かれている(この小説はフィクションなのに!)。それにより、私達もなんとなく様子を思い描くことができ、結果として島の生活の様子を単純に楽しめる。

    大人になって知ったけど、この本は主人公の内面的な悩み、宗教観、教訓などをふんだんに盛り込んだ小説だ。
    わかりやすいので、今持っても感じることが多い。

  • 冒険小説の代名詞のような作品。とても300年前の作品とは思えない完成度。

  • 普遍的な生活よりも刺激的な人生を望むロビンソンクルーソー。その性格が根端となり、無人島での生活を送ることになる。様々な工夫を通して快適に暮らせるようになり、また仲間も増え無人島脱出を目指す。


    何もない場所から知恵を絞り、快適な生活に向けて試行錯誤する。ロビンソンクルーソーを応援したくなるような物語だった。

  • この本の大まかな内容はそれとなく見聞きして知っていたけど、今回初めて読んでみてその内容の深さと面白さに驚いた。
    冒険譚として心躍らせるワクワク感がありつつ、人生の本質に通じる格言が至る所に散りばめられている。およそ300年もの昔に書かれてからいったいどれほど多くの人々を読書の世界に導いてきたのか、畏れ多い一冊です。

    これは、なるほど確かになぁと唸らされた一節です。
    「危険を目の前にしたときの不安というものは、危険それ自体よりはるかにわれわれを戦慄させる。われわれを大いに苦しめるのは、危険の対象ではなく不安の方なのである。」

  • ピア・サポーターズSさんのおすすめ本です。
    「イギリスが世界に誇る古典文学の一つです。
    今でこそ漂流モノは定番ジャンルですが、その先駆けとなった作品です。
    漂流モノの元祖なだけあってドキドキハラハラ請け合いの作品なので、ぜひ読んでみてください!」

    最新の所在はOPACを確認してください。
    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00541212

  • 300年前に書かれた小説と知ったときは非常に驚いた。現代に生きる人々にとっても、読めば多くの教訓を得られる優れた小説だと思う。

  • 無人島に漂着した主人公は創意工夫と不屈の精神で生き抜いていく。
    「何事によらず絶望してはならないことを私はすでに学んでいた」
    冒険小説としても魅力的だけど、人生の教訓が詰まった箴言集として読むこともできて面白かった。

  • 世界史でガリヴァー旅行記と共に学んだこの作品だが、300年前に書かれたとは思えないほど面白かった。バラエティ番組でサバイバルの企画をやったりするが、まさにそれが小説になった感じ。ロビンソンの波瀾万丈な人生と、無人島での自給自足の生活、最後の方に人間に出会って脱出したことなど、テンポよく読めた!

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著者プロフィール

1660年ロンドン生まれ。商売や入獄を経てジャーナリストとして活躍し、論説紙の記事で健筆をふるう。1719年『ロビンソン・クルーソー』を発表。他に『モル・フランダース』『ペストの記憶』など。

「2011年 『ロビンソン・クルーソー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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