ピグマリオン (光文社古典新訳文庫 Aハ 5-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752811

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。楽しかった♪ 読んでよかったです。

    劇作家・バーナード・ショー著作のこちら「ピグマリオン」が、ミュージカル映画
    「マイ・フェア・レディ」の原作という事は、書店で見つけた時に知りました。
    そして、帯には

    "「マイ・フェア・レディ」の原作には衝撃の結末が!" と

    あのオードリー・ヘプバーン主演の映画と、その原作である「ピグマリオン」とでは
    結末が大きく違うとあったことが、読んでみようと思うきっかけになりました。

    強烈なロンドン訛りを持つ貧しい花売り娘・イライザに、たった6か月もあれば
    上流階級並みの、お嬢さまのような話し方を身につけさせることができると
    豪語する言語音声学者であるヘンリー・ヒギンズ教授。それを聞いたイライザは
    少しでも品のいい花売り娘になりたいと、自らヒギンズ教授の門をたたくのです。

    舞台喜劇のこの物語は戯曲です。五幕ある各幕の初めには、舞台に施された背景
    天候、部屋の配置などの説明があり、登場人物たちの台詞の間にも
    感情や状況を表すト書きなどが添えられていて、読むだけで
    物語の場面や情景がしっかりと浮びあがり、まるで楽しい喜劇の舞台を
    観劇しているような気持ちになって引き込まれていきました。

    登場人物たちの人となりも個性的でユニーク揃いです。
    ヒギンズ教授は、美しく正しい英語を研究しているとはいうが、まぁ傲慢な性格で
    実生活はとってもだらしなく..??
    貧しい花売り娘・イライザは、少々気性は荒いのだけど、一旦こうと決めたら
    最後まであきらめない。負けず嫌いの真面目な頑張りやさん...。

    そんな主役の二人を取り巻く中で、ひと際私の心を惹いたのは
    ヒギンズ教授と意気投合する盟友の、言語研究家・ピカリング大佐でした。
    ヒギンズ教授は傲慢身勝手な態度で何かにつけて、イライザにけんか腰の
    暴言を吐くのですが、そんな時、二人の間に入ってピカリング大佐が
    さりげなくフォローする言葉の中には優しさがあって、素敵な初老紳士
    というイメージがして好印象でした。

    しかしながら...かつてイギリスには、母国語である英語を正しく発声するために
    参考にする記号というものがなかったために、イギリス中の人々はみな
    正しい英語を知らず、街や村の地域ごとでいい加減な口伝えで覚え
    話していたといいます。これは史実なのでしょうか..。ともあえれイライザは
    正しい英語を学んだばっかりに、"あんなに綺麗で完璧な英語を話す
    イギリス人はいない。だから彼女はイギリス人ではない" と思われてしまうのです。
    これにはなんとも皮肉なものだなぁと思ってしまいました。

    結末は、映画と違うとはいえ、読んで納得の終幕を迎えます。
    そして幕が下りた後、このお話はその後どうなっていったのか....
    後日譚が書き添えられているというのも嬉しいところです。映画と違うのだから
    原作を読まない限り、知り得ないという新たな世界が広がります。

    • nejidonさん
      yumiieさん、こんばんは(^^♪
      レビューを読んで、とってもとっても興味が湧きました!
      シナリオ形式?ト書き?後日談?
      いえ、それ...
      yumiieさん、こんばんは(^^♪
      レビューを読んで、とってもとっても興味が湧きました!
      シナリオ形式?ト書き?後日談?
      いえ、それよりもバーナード・ショーの作品だというのに、どうして読んでなかったのでしょう?
      自分が信じられません・笑
      ところで、ピグマリオンと聞くと「ピグマリオン効果」とすぐ連想してしまいます。
      君ならきっと出来るよ、とかいう期待の言葉です。
      私はそれを言われると力を出せないタイプです。
      yumiieさんはいかがですか?
      2018/02/15
    • yumiieさん
      nejidonさん、いらっしゃいませ。こんにちは♪^^
      いつもありがとうございます。

      「ピグマリオン」と~っても面白かったですよ♪...
      nejidonさん、いらっしゃいませ。こんにちは♪^^
      いつもありがとうございます。

      「ピグマリオン」と~っても面白かったですよ♪
      ぜひぜひ読んでみたください。戯曲です。私、変なこと書いちゃいましたね~。
      も~いつもこんなんです。(*ノωノ) 直しました。ありがとうございました。
      おかしなところがありましたらまたいつでも教えてください。
      よろしくお願いいたします。m(__)m ^^
      そうそ、ハッピーエンドの後の続きがあるんですよ!
      序章にも、著者ご本人の言葉で(翻訳されていますが)
      「ピグマリオン」に必要なのは序文ではなく後日譚だとあります。
      この部分は戯曲ではなく普通の小説のように最後に加えられています。
      とっても興味深くて面白いです。

      「ピグマリオン効果」ですか...これは難しい問題をお持ちになりましたね。^^
      これは...そうね...なんとお答えしたらよいのか..「君ならきっと出来るよ」
      というようなことは仕事柄、時々(しょっちゅうかも!?苦笑)
      強く期待をかけられていると感じることがあります。そういう時は
      力を出すどころか追い詰められて気持ちが押しつぶされそうになります。
      だけどその場の状況や、誰からどんなふうに言われたかによっては
      無意識のうちに知らず知らず頑張っちゃってるんじゃないかなぁ...って思います。
      というかね、私がやらざるを得ないから....(仕事柄)嫌だな..と思いながら
      「君ならできる」を「私にもできるかも」と自分で変換しちゃっているかもしれなくて
      とりあえずやってみる。え~いどうせダメ元だ!みたいなのはあります。
      自分としては無意識で、頑張ってるつもりはないけれど
      気がついたら出来てた! みたいな、そんなことは時々あります。疲労半端ないです。
      でも、まったくはなから自信のないことや嫌いなことにはどんなに言われても
      白旗をあげます。相手次第なのかなぁ。時々ありますよね
      「あんたに言われたくないわ」みたいなの。(笑)そういう時は完全に萎えます。(笑)
      ん? 逆かな? かえって張り切っちゃう?(笑)やっぱりものの言われようや
      言われる相手次第かな~。.....って、これは答えになっていますか? 
      ピントがずれていたらごめんなさい...。
      でもね..最近訳あって仕事をぐんと減らしたので今はまずまず快適♪
      好きな本がたくさん読める時間ができて気持ちはほぐれっぱなしです。^^
      2018/02/16
  • バーナード・ショーの戯曲。
    20世紀初頭のイギリス。言語学(音声学)者のヒギンズ教授が賭けをする。強烈な訛りのある貧しい花売り娘、イライザに、6ヶ月で上流階級の話し方を教え込み、貴婦人を作り上げてみせようというのだ。つまり、教授は話し方こそがその人の人となりを作り上げると考えている。このあたりは階級ごとに話し方が異なるイギリスならではという感じもするが、ともかくも教授、そして友人のピカリング大佐は、下品な花売り娘に上流階級にふさわしい言葉遣いとマナーを教え込もうと奮闘し、大成功を収めるが・・・というお話。

    ピグマリオンというのはギリシャ神話に登場するキプロスの王の名である。現実の女性に失望していた彼は、理想の女性像を彫刻する。あまりにもよくできたその姿に、服を着ていないことを恥ずかしく思い、服も彫ってやる。そのうち、彼はその像に恋をしてしまう。哀れに思ったアフロディーテがその像に命を吹き込み、めでたく2人は結ばれる。
    このエピソードをベースにしてはいるが、ショーの戯曲はなかなかに辛辣である。

    このお話は、原題の「ピグマリオン」よりも、ショーの死後、ミュージカル化、後に映画化されたバージョン、「マイ・フェア・レディ」のタイトルでの方がよく知られているだろう。
    「踊り明かそう」(I Could Have Danced All Night)、「素敵じゃない?」(Wouldn't It Be Loverly?)、「ほんの少し運が良けりゃ」(With A Little Bit Of Luck)と、何せ名曲揃い。貧しい娘がぐんと垢ぬけていくさまは劇的で見せ場も多い。
    きわめて上品な言葉遣いを習得する一方で、つい元の地金が出てしまう可笑しさもある。
    コックニー訛りを直そうとヒギンズが考え出したフレーズ("The rain in Spain stays mainly in the plain"(イライザはaiを「エイ」ではなく「アイ」と発音する)、"In Hertford, Hereford, and Hampshire, hurricanes hardly happen"(訛りがあるとhが抜ける))も有名だが、これはミュージカルのオリジナルというのは意外なところだ。

    本当のところ、ショーはミュージカル化には否定的だった。ミュージカルでは教授とイライザが結ばれることを匂わせるハッピーエンド的幕切れになっているが、実は、原作戯曲は違う。
    厳しい訓練の末、見事、言葉遣いもマナーも習得して貴婦人となったイライザ。しかし、彼女は気づいてしまう。自分が一個の人間として尊重されてはおらず、単に賭けの対象でしかなかったことを。そして中途半端に階級を超えてしまった自分は、もう元の古巣に戻って同じ暮らしはできず、さりとて本当の貴婦人にもなりえないことを。彼女は爆発する。しかし、自分本位のヒギンズは彼女が何を怒っているのか理解できない。掃き溜めから救ってやったのに恩知らずが何を言うのか。
    ミュージカル・映画はそれでもイライザが矛を収め、ヒギンズの元に戻るところで終わる。ロマンティックだけれど何だか釈然としない。いやいや、イライザ、その男はあんたを本当に愛することはないよ、と押しとどめたくなる。

    ショーは戯曲に対する「後日譚」を書いている。これが載っているのが本書のキモである。この後日譚がなかなか読ませる。そして、ミュージカル版の結末より「ありえる」だろう結末なのだ。

    自我に目覚めたイライザは、結局、自らを崇拝する若者と結婚する。けれどもヒギンズと完全に切れることはない。もはやヒギンズ邸は彼女にとっては実家のようなもので、結婚生活を送りながらも、ヒギンズの身の回りの世話もする。
    イライザの夫となる青年も、階級社会の中では宙ぶらりんな存在で、一応は上流階級に属するが、父を亡くして金がなく、満足な教育も受けていない。いわば半端ものどうしが結婚をし、教授や大佐の援助で商売などもするが、もちろん、大成功は収めない。どうにかこうにかやっていく形になる。
    イライザは夫にも大佐にも優しいが、教授が横柄な態度を見せるときつく反発する。神話ではピグマリオンとガラテアは結ばれるけれども、ショーのお話では、
    彫像のガラテアがみずからの創造主であるピグマリオンを本当に好きになることは決してない

    はてさて、イライザは見出されて幸せだったのだろうか。それとも花売り娘のままの方がよかったのだろうか。

    解説・訳者あとがきを含めて読ませる。

  • ぅぅぅううぇぇぇえええ!
    どんな顔して言ってるんだろうか…

  •  20世紀初頭のロンドンを舞台に、上流階級で言語学者である男ヒギンズが教養を身に着けていない花売り娘イライザに特訓を施し、上流階級の夫人として通用するような女性に育て上げようとする話。
     あらすじだけ見ると谷崎潤一郎『痴人の愛』や田山花袋『蒲団』を連想するのだけど、この物語はこれらの小説のような自らの愛・欲望といったドロドロした感情を掘り下げていく内省的な物語ではなく、階級や女性の立場といった社会的なメッセージを強く持った物語という印象だった。

     現代日本においては、「一億総中流」なんて言葉が(たぶん)高度経済成長期に生まれ、今でも意識的には自分を中流だと思っている人が多いようだ(2013年時点で9割近く。Wikipediaより)。私も財政的には中流だと思っている。でも、当時のロンドンはそんなことはなく階級というものが確固として存在し、「中産階級の道徳」(p.100)なんて発言が飛び出すくらい、倫理規範まで異なっていたようだ。
     ノブレス・オブリージュなんて言葉もあって、イギリスは日本と比べ階級社会である代わりに、各々の階級が各々の階級を尊重している……なんて上手くできた話は見たことがあるが、実際どうなのだろう。階級によって話し言葉まで大きく変わるだなんて、想像も付かない。

     また、階級に加え、女性解放・女性の権利、というテーマでも読むことができる。この作品から遡ること34年、イプセン『人形の家』では、妻であるヒロインの受ける扱いが夫の人形のようだと悟り、険しいながらも尊厳を求める道を進む物語が描かれた。
     本戯曲においても、イライザは悪く言えば賭けのネタに使われ、それはまだ良いとしても終わった後の扱いが可哀想なものだった。別に、彼女は「男は仕事、女は家庭」という枠組みに疑問を呈するという、いかにも現代的なことまでを考えているわけではないと思う。彼女は自分の知らない世界を見せてくれるヒギンズに特別な想いを寄せていたし、花売りでなくレディとして扱ってくれたことに、初めて自尊心というものを知ったとまで言っている。そうした一連の経験が、自分とは異なる階級たちの遊びとして終わったらポイな扱いを受けたら、そのダメージはいかばかりか。
     劇として行われた際に結末が改変されたということからは、この物語がいかに衝撃の大きいものだったかが窺える。ヒギンズとイライザが結ばれることは、まぁバッドエンドに比べれば観ていて心地良いものなのかもしれない。でも、満足な豚よりも不満足なソクラテスで……、とする立場からすれば、この挑戦的な物語への敬意としては些か欠けるところがあるようにも感じてしまう。

     風刺的色合いが強いとはいえ、男女のことが描かれている以上は(というか私が恋愛小説大好物なので)、ヒギンズとイライザの想いとすれ違いに目を向けてもまた楽しい。短い戯曲なので、とりわけヒギンズがどう考えていたかは想像に頼るところが大きい。もし一人称で書かれた小説だったら、彼らの内面はどのように描かれたのだろうか。劇も観てみたいな。

  • 『マイ・フェア・レディ』を知らずに読み進めていたのだが、とにかく面白かった。古典作品でこんなに笑ったのは初めてかもしれない。話の展開や登場するキャラクターたちの魅力のなせる技か、よく考えると腹立たしく感じそうなことも気にならなかった。終わりはとても現実的でハッピーエンドとは毛色が異なるけれど、大変身を遂げた後にどうしたいのか、ということを考えさせられた。

  • ◆DVD「マイ・フェア・レディ」を鑑賞後に。

  • 映画を先に観ていたので、場面を想像するといつもオードリーヘップバーンが出てきてしまう。
    物語の結末は意外であった。
    私としては映画版のほうが好みである。
    台本形式(?)だが、思いのほか読みやすかった。

  • 原書を卒論で扱いました。My Fair Ladyと合わせて大好きな作品。
    原書と訳本(古い)は読んだことがあるけど、こちらも言い回しとか全く違和感なくて楽しい。

    ツン:デレ=9:1のヒギンズ教授、汚い言葉も可愛いけど、訓練で外面も内面も素敵な淑女になっていくイライザ、口達者ダメ親父だけど憎めないドゥーリトル、癒し系紳士ピカリング、イライザが淑女となる過程を、同じ女性の立場から時には厳しく、温かく見守る自立した2人の女性・ピアス夫人とヒギンズ夫人(母)、ちょっと頼りないけどイライザに対して一途なフレディ。

    (↑割とめちゃくちゃに書いてはいるけれど)登場人物がとても魅力的なこと、それに加えて、ありきたりのロマンスを期待する読者の幻想を打ち砕くようなあの結末、何度読んでも大好きです。

  • 劇の脚本でもあるので所々舞台描写があるもののほぼ会話文。
    とてもテンポの良い作品。英語のなまりというものがどういったものかはわからないけれども、訳者のはからいでイライザの前半と後半が劇的に変化しているということがわかりやすくて楽しかった。

  • バーナードショー『ピグマリオン』光文社古典新訳文庫 読了。酷い訛りの花売り娘が言語学者の訓練によって上流階級のレディに変身する。ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の原作だが、落ちぶれる貧乏貴族との対比、女性の自立に無感覚な結末など、階級社会に対する辛辣な風刺の効いた作品である。

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