愛をください (光文社文庫 つ 14-4)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334746001

作品紹介・あらすじ

もう君は一人じゃない-。児童養護施設で成長し、自殺未遂を繰り返す十八歳の李理香の許に見知らぬ男性から突然届いた一通の手紙。自らも同じ境遇だと明かす手紙の主・基次郎が綴る素直な文面に、李理香も次第に心を開くようになる。しかし、二人には意外な運命が待っていた。テレビドラマでも話題になった、往復書簡が織り成す純粋な「愛」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 相性が悪いのか、今まで読んだ作品のどれ一つも素晴らしいとは思えない作家が、この辻仁成だ。
    なにかこう気取ったような文体。
    不自然な設定から生まれる不自然な人間関係。
    言動に説得力のない登場人物たち。
    何よりも、主人公たちの不誠実さが嫌いです。

    この作品も、今まで人を信じたり好意を持ったりしたことが一度もないという18歳の少女が、突然同じ境遇だという男性から手紙をもらい、文通を始めるという突飛さに、のっけからうんざりする。
    しかも、手紙の中では嘘は書かないという約束まで。
    見ず知らずの年上男性(と名乗る人)と、そんなことするかね。

    東京に住む李理香と函館に住む基次郎は、びっくりするほど互いの内面に踏み込む手紙を交換し合い、友だちなどできたためしがないという李理香は、簡単に基次郎に懐く。
    ドラマチックに盛り上げたいのはわかるけど、そんなに不幸のてんこ盛りにしなくてもいいんじゃないのかなあ。

    母を亡くし、父に捨てられ、養護施設でいじめられながら育った李理香。
    ひょんなことから実父が近所に住んでいることを知り、憎しみからひどい言葉をぶつけるのだが、それが大きな事故の元になり…。
    李理香のことを忘れたことがないと言い、李理香のことばにショックを受ける父。
    だけど、それならどうして李理香を探し出そうとはしなかったのか。
    自分だけ再婚して子どもも生まれて、幸せな家庭を築きながら、李理香の何を忘れていなかったというのか。
    そして、知人に押しつけたまま捨てたもう一人の子どものことは、最後まで思い出さなかった父。
    作品中に言われるほど、いい人とは思えない。

    やっぱりこの作者、その人の言動がその人を表現する、ということができないんだな。
    地の文や台詞でいくら「いいひと」と言われても、実際の言動と言う補強がないから説得力がない。

    今後彼の作品は、もう読まなくてもいいなあ。
    私には合わな過ぎるので。

  • 不覚にも、涙。

  • 再読。これ大好きな話。手紙ものって好きでね。「足長おじさん」なんか最高!最近、辻仁成にはまってる。

  • 前略 泣けませんでした。理由は読書半ばですぐにオチにピンときてしまったのと、どうやら自分は美談に慣れていないようです。養護施設で育った男女の文通物語。男性側がどえらいロマンチストで戸惑いました。私は泣けなかったとはいえ、美しい話であることには間違いなく、愛のわからないリリカが時に間違い、悩み、揺れながら正しく生きようとする姿。そこには感銘を受けました。

  • 男女が文通を交わすにつれどんどん時が進み、物語が動いて行く小説。手紙が届くまでの時間にも、お互いの生活が動き、届くまでの時間をとてももどかしく感じるようになっていた。小説の結末もなかなか衝撃が大きく、また辻さんを好きになる一冊となりました。

  • 生きることは複雑だと常日頃思っていると、小説を読んでいても、気づけば少し懐疑的な目になって、その描写や解釈の正しさみたいなことを考えてしまっていたりします。
    でも、この小説の純粋さは、うがった視線を捨てて受け止めないといけないと思いました。そういう作品です。

  • 2017.2

  • かなり似たような状況にあり同じような問題を抱え悩んでいる身としてこの本を読む時は救いを求めていた。出口が見つけられるんじゃないか。でもやはり現実には起こりそうもないエンディングといとも簡単に心変わりしてしまう主人公に絶望した。これは全く違う環境にある人が読んだら感動するストーリーなのかもしれないけどすごく陳腐だ。

  • 文通という形でつづられた小説。
    明らかに作者の辻仁成(ひとなり)氏が以前ECHOESで作られた「zoo」が下敷きになっており、各章が歌詞の1節になっている。
    思い切り「ベタやんけ」思いつつ読んだら涙止まらず。
    小説の汚いところ(あえて逆説的にいうと)「時間」と「偶然」を都合よく操作して”ありえない”奇跡を演出することでしょうか…。
    この小説はもうネタバレはあまりしたくないのでもう備忘録程度にしたいのですが…。
    この物語にEmpathyを感じたのは主人公が父親を知らないことなのかな?
    それとも文通というアナクロな方法で即時性がないからこそ一字一字を丁寧に綴るという作業から生まれる真実が胸をうったのか…
    この「愛をください」を読んで文通がしたくなった(笑)
    すごくおおきなどんでん返しがあるのだけど…。これがきいてる。
    不治の病ってラノベの常套句なんだけど、この「愛をください」はきました。
    「人間はいつも未来について語っているんだよね」命が限られている相手(死が宣告されている相手)と話す時に普段俺らは「未来」の話ばがりしてるんだなと気がつくんだろうね。
    「成層圏が生き物を守ってくれている証が青空だと思う。地球が青い限り、生き物はここで生きていくことが許されているんだと思う。逆に言えば、宇宙の孤独から、この地球は何者かの力によって生かされ守られているんだ。青空は地球と宇宙の境目でしょ。

    「星は遠い遠い距離を越えてキミに何かを伝えるために輝いているのだから」
    「苦しみが現実にはこの世に存在しないものだと想像してみてごらん。そうすればいつしかあなたの中から苦しみは消え去って、全てが喜びに変わるはずだから」
    あえて「zoo」にはない章タイトルがあって「心に刺を生やしてるサボテン」
    辻氏は下記をいいたくてこの章を挿入したのでは?と勘ぐってしまう
    「砂漠の街で生きてる僕たちは、心に刺を生やしてるサボテンの心。身を守るために生やした刺のせいで、大切な人たちを遠ざけてしまう。星が灯る空を見上げてサボテンは今日もひとり。冷たい月の光に包まれて明日を待ちつづけてる。砂漠のサボテンたちよ。花を咲かせてごらん。きっと誰かが君に声をかけてくる」

    この本を読んで沖縄と函館にいきなくなった

  • 児童養護施設で育った少女が自殺未遂をしたことがきっかけで、ある男性から手紙が来る。彼女はその手紙の相手と会わないことを約束に、生活をありのままに書き、手紙に依存する。しかし手紙はあるときから来なくなってしまう。相手は彼女が病気であるといっていたが、じつは。。。っていうもうこれ、最高よ。

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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