漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫 し 5-23)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334718336

感想・レビュー・書評

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  • 御手洗物だったように思うが、もしホームズが小説のような行動を本当に取っていたなら相当目立った変人だったろう、というようなことを御手洗だったかに言わせていたが、おそらくそれを発展させて書いた小説だと思われ、刊行当時、ニヤつきながら読んだ記憶があります。(笑)
    もう1人のワトスン役に夏目漱石が登場。ホームズ物のタッチと、もう一つの視点である漱石を通したタッチが交互に描かれ、ある時はホームズマニア(シャーロキアン?)として、ある時はシニカルな可笑しさとして、全体としてホームズに対する愛情で包み込んだ微笑ましい作品になっています。

  • なんだかな〜と思いつつ頑張って読んだ。
    が、最後のシャーロックホームズがバイオリンを弾く場面が異邦の騎士で御手先がギターを弾く場面に重なり胸熱。が、それだけかな。

  • 漱石、ホームズ、ワトスン。魅惑のトライアングル


     時代は、現実と非現実との境目が霧立ち溶け合うような19世紀。英国・倫敦に留学中の夏目漱石は、下宿先で毎晩、亡霊のものに聞こえなくもない奇声に悩まされていました。そこで相談役として登場したのが、なんとシャーロック・ホームズでした!

     この縁で探偵と接点を持った漱石が、次はホームズが解こうとしていた難事件の解決に一役かうことに。亡霊に続いてはミイラ、またしても物の怪がらみの事件です★
     そんなわけで、夏目漱石と我が友シャーロックが一冊の本の中でめぐりあうという、大胆かつユニークなパスティーシュです。

     こう書いては作者・島田荘司さんのファンの方々(かなり多いと見ました)にお叱りを受けそうだけれども、一種の馬鹿馬鹿しさがウリの本だなと思いました。ただただノリで読むだけ(?)だなと……。でも、感想が短すぎても寂しいので、捜査チームが漱石、ホームズ、ワトスンの三人になったことで生まれる効果を挙げてみようかな★ どのようなものであれ、三角関係という構図は、そそるので!

     コナン・ドイルが残した「聖典」には、ワトスンから見たシャーロック・ホームズの姿が、一方的に綴られています。ワトスンはホームズを愛しているから(笑)、もしホームズに都合の悪いことがあれば、友愛のこもったワトスン的叙述によって、うまくもみ消して記述していると思われます。

     しかし、今回の語り手は夏目漱石という、彼らから見たら異邦人です★ ワトスンから見た名探偵ホームズと、漱石から見た迷探偵ホームズの間には、かなり激しいギャップがあったようですね。それが大層おもしろおかしく描かれていて……、何というか、ウケたな。

     よく、普段の生活で「経験した人にしかわからない」「関係者でなければわからない」なんて言われかたで攻撃されることがあるけれど、この本を引っ提げて「部外者の目に映る事情も負けじと面白いぞ」と私は言いたい!

  • 漱石の文体もドイルの訳文調もどっちもすきだから楽しい
    こちらのホームズはだいぶひどい調子だけど、でもなんだか現実味があっておかしい

  • コナン・ドイルと夏目漱石の文体をパロディに。
    楽しい。
    昭和59年の作品。

  • ロンドン滞在中の夏目漱石がホームズと出会っていたら…という設定のホームズパロディ本。完成されたプロの二次創作という感じでした。漱石とホームズどっちが実在の人物だか架空の人物だか一瞬わからなくなりました。
    同じ出来事について書いてるのに漱石視点とワトソン視点で捉え方や誇張の仕方が全然違うのが面白かった。ホームズを初っ端から変人として捕らえてる漱石と若干神聖視してるワトソン。これって御手洗シリーズでいうと石岡君の書く御手洗とハインリッヒの書く御手洗がまったく別人のようになるのと同じことなんじゃないかなと思ったりしました。

  • 思いっ切り空想の羽を伸ばした小説。
    最後の結末は途中から見えたが、それでも軽やかでかつ素敵な終わり方。
    ただホームズの変人ぶりに焦点が置かれているのか、英国時代の漱石の「塞ぎっぷり」がキャラクター造形にそれほど生かされていないか。
    漱石の閉塞感を上手くデフォルメできれば、全体的にもう少しハチャメチャ感が出せたような気がして少々惜しい。

  • イギリス留学中の夏目漱石がベイカー街でシャーロック・ホームズと出会い、奇怪な事件の謎を解いていく話です。
    群を抜いてよく出来た本格ミステリです。
    ノイローゼに陥っていた夏目漱石についても資料をきちんと研究したということが分かる書かれ方をしています。
    その辺も違和感なくストーリーに組み込まれていると思います。
    多々、笑える場面もあります。
    夏目漱石のホームズを見る心情描写がとてつもなくおもしろいのです。
    明らかに変人を見る目でホームズを見ている夏目漱石には大笑い必至です。

  • 爆笑必至。ホームズのパロディー。トリックも作者らしい。

  • イギリス留学中の漱石の遭遇するミイラ事件。ある婦人が再会した弟がおびえる東洋人。発見されたミイラの中のメモの謎。甲冑の謎。シャーロック・ホームズの推理。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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