喪失学 「ロス後」をどう生きるか? (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334044190

感想・レビュー・書評

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  • 〜〜
    死は突然にやって来る。思いがけない時にやって来る。いや、むしろ、死は、突然にしかやって来ないといってもよい。いつ来ても、その当事者は、突然に来たとしか感じないのである。生きることに安心しきっている心には、死に対する用意が、なにもできていないからである。
     しかも、死というものは、ひとたび来るとなると、実に、あっけなく来る。
    〜〜

    私の妻の死に直面して新たに抱いた『死』への認識と同じ表現だ。

    男という者は妻に先立たれると実に情けない存在に成り下がることが多く、数年のうちに妻を追うようにして死ぬ者も多い。それは女性の場合に比べて圧倒的に多い。それは、何故だろうか。生活力といった具体的なことではない。

    私の今の心境から推測すると、それは生きることの役割の無さを、連れ合いの死によって気づいてしまうこと。そしてもう一つは、根本のところで心的に生きることを自分以外のもの(会社、妻)に依存してしまっているからなのだ。

    子どもの発達過程における親と子の親密で情緒的な絆は、親は子どもにとって外界へ探索に出かける際の安全基地であるが、いつのまにか家庭のなかの男もその安全地帯にしがみついてしまうようになっていくのだ。

     悲しみの捉えかたの良い言葉が載っていました。
    臨床心理学者の山本力氏の言葉です。

    『仮に真実を星に喩えるなら、明るい昼間、星々は見えない。夜のとばりがおりて、真っ暗になればなるほど無数の星が見えてくる。悲しみは心に夜の闇をもたらす。そして、明るいときに気づかなかった星々が見えてくる』


     私が最近感じるようになったことに、“深い悲しみ”を経験することは、その人を大人へと引き上げてくれるということ。
     もう60歳を越えた私ですが、まだまだ自分を子どものように思えてならないけど、その子どもなりに、この経験が世の中の、特に人との関わりかたにおいて大きく成長させてくれたことを実感している。

     そしてこの本のなかにも同様の体験をした人の話や、言葉が出てするのでそれを再確認することになった。
     なんかね、世の中が少し低く小さくなった感じがするんだ。
     自分があの世に近づいているのだろうかと思っちゃうんだ。

     

  • 自分が考えてきたことが言語化されて本になっていた。やっぱりそうだったんだ。この考え方でよかったんだと思わせてくれた。

    人生を本に例えて、その本の重要な登場人物を急に失ったらその物語が続かないように思う。続けられないと感じるけれどそれでも人生は終わることなく続いていくことは冷酷なように思えるけど事実で、失ってから当分は自分1人のストーリーが続いていることにさえ気づけないような気がする。

    私は喪失体験に対し、心に穴が開いた状態だと例え、その穴はその人でしか埋められないことを悟った。その人とは2度と関係性が戻ることはないので埋められない。じゃあどうしたら辛くなくなるんだろう、自分が大きくなろうと考え本を読んだりさまざまな映画を視聴した。気がつけば2年半経っていてあの頃のように涙が溢れることはなくなった。時々泣けてもそれに対しての涙が枯れたのか少し泣いても前を向けるようになった。それどころか、喪失体験に対してではないけれど、その人に対して罪悪感や後悔の念しか持っていなかったのが感謝の気持ちを持つことができるようにもなっている。
    喪失体験をしてすぐ、失った人に感謝を持てるようになると〜というものを感謝できることを探しては感謝と後悔が結びついていた。
    今も後悔することはあるけど当時の自分にはどうしようもなかったことであることがわかる。

    私の人生はこれからも続き、また大切な人ができたとしても急に失ってしまうかもしれない。
    あの時も急に失うかもしれないというのは頭の中にあって、いつそうなってもいいように行動してきた。少しその気持ちがやわらんで当たり前のように続くと思っていた時に喪失体験をした。

    2度とそうならないように私はもっともっと考えて、自分に自信をつけてまずは自分の人生を生きていかなければならない。

    きれいなお水が喪失体験によってにごり、時がたって濁りが沈殿しまるで辛くないように過ごせても、環境や関わる人によって沈殿は攪拌されまたあの苦しみがいつでもやってくる。
    喪失体験は濁りをさらに濃くしてくる。

    だけど喪失体験を2度としたくないからといって人と関わることをやめてしまったり、人を信じなくなる人生を歩みたくはない。

    私は自分の人生についてどのように歩んでいけばいいのかわからなくなっている。
    物語は続くので未来はあるのだけれど、それを信じることも夢見ることもできなくなってしまった。

    グリーフケア、愛する人を失った時あなたに起こることという本を1年前に読み、今回この本に図書館でふと出会った。

    出会うべき時に出会うべき本と出会えるのだと、この本との出会いを運命に感じている。
    もう一度読み、また新たに人生を続けていく勇気を持とう。

    喪失体験は誰もが経験することだとわかってはいたけれど、じぶんと同じような考えや苦しみを自分が思っていたような言葉で表されているのを見たおかげでより一層感じられた。みんな喪失体験を経験している。それでも生きている。私はそれがはやかっただけだ。生きていこう。 
    日本語も構成めちゃめちゃな感想になった。心の声だだ漏れだ。

  • ・死は先のことではなく常に隣り合わせである
    ・後知恵バイアス
    →過去の後悔、起こってしまったことを、その時にまるで正確に予測して回避できるものと思ってしまうこと。事後的に予測可能であったと考える心理を後知恵バイアス。
    ・人間は喪失感のなかでも適応できる能力が備わっている。今はつらくても、これから人生が良くなっていく。
    ・喪失は人生の一部である。喪失があるから不幸ではない

  • 141-S
    閲覧新書

  • 読了日 2020/11/24

    気になったのでKindleで購入。
    とても久し振りに、文字で読み切った電子書籍となった。いつもだいたい読み上げてもらうし。
    スピードはやはり目で読んだ方が速いし、理解も(同じところを容易に何度も読めるという点で)深い気がする。


    目次

    はじめに
    大切なものを持っていた明石
    失うことを見据えて生きる
    みずからの喪失に向き合う

    序章 人生は失うことばかり
     生まれるとともに失う
     死別
     ペットの死
     離婚
     失恋
     身体の一部分や機能を失う
     失業
     介護によって失う
     がんになって失う
     老化
     最後は自分の死
     失うことは避けられない


    第1章 喪失とは何か
     いつでも遭遇しうる
     私たちは何を失うのか
     実体のないものを失う
     選択した喪失
     失っても取り戻せるもの
     予期せずに失う
     気づかずに失う
     失うのは一つだけではない
     失っても消えないもの
     失うことも必要
     公認されない悲嘆
     失ったかどうかはっきりしない
     子どもが経験する喪失
     理想の喪失


    第2章 喪失がもたらす影響
     誰もが経験する悲嘆
     悲しみだけではない
     愛着と分離不安
     悲嘆とうつ病の違い
     あとを追うように亡くなる
     遷延性悲嘆症
     日にち薬は本当か
     男らしさと女らしさ
     予期悲嘆
     子どもの悲嘆反応
     自殺がもたらすもの
     家族全体に及ぼす影響
     喪に服す
     人間的成長


    第3章 喪失と向き合うために必要なこと
     落ち込むのは当然
     向き合い方に正解はない
     自然に従えばいい
     あせらなくていい
     自分をゆるす
     人に頼ってみる
     身体を休める
     あきらめると見えてくる
     気持ちを言葉にする
     思い出を大切にする
     後ろ向きのままでもいい
     自分のための時間をつくる
     やるべきことリストが助けになる
     物事の良い側面に目を向ける
     体験者同士でつながる
     相談サービスを利用してみる
     求められるグリーフケア


    第4章 「そのあと」をどう生きるか?
     並行する二つの課題
     誰もが持つレジリエンス
     「立ち直る」ことはできるか?
     喪失の意味を求める
     誰かがあなたを待っている
     小さな目標を立てる
     体験を分かち合う
     次の世代につなぐ
     死者は無力ではない

    第5章 喪失に備える
     なぜ失って初めて気づくのか
     何を失いたくないのか
     失うことを意識する
     どのように失いたいのか
     備えは自分のためだけではない
     喪失を意識して学ぶ
     喪失を語れる社会


    第6章 自分の喪失を振り返る
     未完了の仕事
     問いを考えるにあたって
     喪失体験に関する10の問い
     ワーク全体を振り返って

    おわりに
    平成ロス
    主要参考文献

  • 10年以上に渡り応援していた俳優が逝去され、立ち直るためにこの本を手にしました。
    亡くなった方が自分よりも若かったのもあり、身内の喪失と同じくらい辛かったです。
    帯にある通り、「喪失のある人生は必ずしも不幸ではない」と納得しました。
    喪失感があるのは、自分と故人の間に何かが存在していた証なんです。
    死の受け止め方、悲しみ方は人それぞれだということがよくわかっている方が書いたのも好印象でしたし、無理に早く立ち直らせようとしないところも共感できます。

  • 141

  • 喪失とは何か、喪失にどう向き合うのか、系統立てて、分かりやすく解説。

  • 喪失は人の心身をダウンさせる大きな衝撃。そのショックを和らげる術はありません。
    そこからどう気持ちを入れ替えて立ち直るか。

    新しい内容が期待できるトピックではないながら、著者はよくこの難しく重いテーマに向き合ったと思います。

    人は、人生で大切なことは「何を得るか」だと思っていると、著者は言います。
    それよりも大切なことは「何を喪うか」だと。
    斬新な視点に、はっとしました。確かに私も、そうした意識なく、「得る」ことの方にばかり注目していたことに気づかされます。

    「失うこと」は誰もが避けられない痛み。恐れていてもどうしようもないため、しっかりと考える方が建設的。

    何も失わない日というのはなく、たとえば一日過ごすのも、自分の一生の一日が失われていっていることになります。
    そのことに絶望しても、仕方がありません。

    耐えられない喪失を経験した時、どうすればよいのか。
    前もって知っておくだけで、辛さが和らぐこともあり得るのです。

    また、「失うこと」がゼロになるわけではないと心得るべきですね。

    愛する人を失った時も、その人が残したことはしっかりと自分の中に残されます。
    それと同じく、自分が死んだ後も、残された人に何かを残すことができるということです。

    物理的な喪失だけでなく、残されるものがあることにも意識を向けると、前向きに人生を捉えて行ける気持ちになりました。

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著者プロフィール

関西学院大学人間福祉学部人間科学科教授
悲嘆と死別の研究センターセンター長

「2022年 『増補版悲嘆学入門 死別の悲しみを学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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