セイバーメトリクスの落とし穴 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334044015

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに惹きつけられたが、おちゃらけたペンネームの素人が書いたプロ野球論の本。
    ブクログでのレビューを見てみると皆さん評価が高い。ますます気になる。
    野球大好きな者としては、どんな内容か確かめるべく図書館で借りてみた。

    読み始めると直ぐに読者の高評価に納得。野球をよく見てるなと感心する鋭い視点の数々。
    これは手元に置いておくべき価値がある本だと判断し、購入してじっくりと読み込むことにした。

    セイバーメトリクスを知っていて、高校野球~プロ野球~メジャーリーグと幅広く野球を楽しんでいる人向け。
    自分と著者とでは、感じ方・考え方が違う部分もいろいろとありましたが、視野が広がる良書だと思います。

    シーズン中はほぼ毎日野球を観ますが、今年は注目ポイントが増えて楽しみ倍増です。

  • 野球好きのための究極の解説本!
    ダルビッシュのTwitterを見て知って、阪神ファンでメジャーリーグ好きな僕にはとても興味の湧く良い本だった。
    すごいスピードで変化する野球界の新常識が、データを用いて論じられていた。
    最近流行りのスラッターが理論的にも凄まじくえげつないとボールだということがわかった。
    最後の方に書いてあった、データ野球が主流になってしまっている中で、エンターテインメント性を失わないようにしなければならない。という言葉が、機械化や形式化が進んでいる近年はどの業界にも言えるなと思った。
    いつになっても、人間味を持って、楽しむことを忘れないでおきたい。

  • 理論が凄い。
    素人とは思えない膨大な情報量と知識。
    NPBやアマチュア野球を中心として観ているので、MLBの話になるとその都度調べたり、選手に関してはYouTubeを見たりしたので読むのに時間がかかったが今まで知らないMLBの世界を知れたことや興味を持つきっかけともなった。
    次回作はNPBの話題が中心となるであろうと期待している。

  • 野球好きなら今では知らない人はいないであろうお股ニキさんの通称『お股本』。
    ダルビッシュとのやり取りで有名ですが、ダルビッシュだけでなく、ホークスの千賀滉大、高橋純平、和田毅、大竹耕太郎も読んだ名作。

    名作というのは目次から「オラ、ワクワクすっぞ!」ってくらい高まるもの。各章で必ず刺さる項目があるのが良くて、大抵中弛みになる傾向になる中盤(本作なら4〜6章)も目次の時点で面白いです。

    以下、箇条書きで感想を書いていきます。
    ・野球の技術論(正確にはお股ニキの見方・考え方のエッセンス)についてメインに書かれているが、本文や脚注に選手紹介や用語解説があるから読む前は詳しくなくても大丈夫!ただし、野球のルールは知っといてねw
    ・日本(の野球)の問題点についても書かれている。
    ・スラットやピッチング、バッティングについては、アナライザー達がyoutubeやtwitterに動画をあげてくれているのでそれを参考にすれば捗る。
    ・各所で「今後の野球はどうなっていくのか」について書かれている。そこだけでも野球好きの投資界隈は必読の内容。
    ・2019年2月時点の情報ベースなのでそこは適宜置き換えてね。

  • 本書を語る上で、触れなきゃいけないのは著者のこと。野球経験は中学野球部中退。しかしながら、野球好きが高じて膨大な数の試合を観戦、そこから得た知識と独自の研究が加わり、プロ野球経験者顔負けの慧眼と分析力。そこに分かりやすく伝える卓越したアウトプット力が加わり、Twitterにて監督采配や投球術について鋭い考察を連発。ちなみにこういう人を「プロウト(プロの素人)評論家」と呼ぶそうな。

    ある時、ダルビッシュについて発信すると、なんと本人からリツイート。交流はそれだけに留まらず、ダルビッシュに伝授した“お股ツーシーム”を実際の試合で投じるという、著者の指摘の鋭さを裏付けるとともに、ダルビッシュの良きアドバイスなら素直に傾聴する柔軟な姿勢について、当時多くのメディアで取り上げられた。

    本書は、これまでのTwitterの考察をベースに、昨今野球界のトレンドテーマである「フライボール革命」「盗塁やバント等の小技の減少」「継投の緻密化」「ジャイロボールの存在有無」「2番打者強打者論」等についてケレンのない持論を開陳。この一冊丸ごと「現代プロ野球論」になっている。今の野球って、こんなことになってるの⁈と思うはず。

    本の帯の惹句「プロ選手にもアドバイスする独学の素人が、野球界の常識を覆す」。ここでいう野球界の常識とは「プロ野球、とりわけ日本プロ野球にはびこる伝統主義」を指している。本書には理科系のリポートと思しき様々なグラフや図表が掲載されているが、著者はデータをあくまでもデータは現状把握と考察のための材料とみなしている。元来、野球は数字と親和性の強いスポーツ。DeNA監督のラミレスは昨年シーズン、データを盲信するあまり、コーチ陣と不協和音となり失速したのは記憶に新しい。また、アナリストを重用する球団も増えている。著者はその傾向を指して、選手に対する尊敬の無さの顕れであり、野球からエンターテインメント性を奪っていることだと直言する。

    イチローが引退会見で発した、最近のメジャーリーグは「頭を使わずにプレーするようになった」という話と同根である。要は、
    ●データ有りきで、選手の判断に信頼を置いていない。
    ●ホームランか三振の大味な野球になりつつある。

    読みながら、現在のプロ野球で用いられ、当たり前とされている作戦・戦術とは別の作戦の有用性をしばしば語り、その一方で「大局観」についても鋭い考察を披歴している。例えば、野村ID野球はあくまでも戦術であり、タイガースが勝てなかったのは、チームにエースと四番不在という戦力に乏しかったからで、ペナントレースの長丁場において、作戦でどうにかなる問題ではないという、どこかの思考停止の球団オーナーに聞かせてやりたい提言に溢れた好著でありました。

  • 私がしらない間に、セイバーメトリクスはずいぶん進んだのだなあと感じた。投手、打者、監督、経営など、いろいろな立場に対して、私がしらなかったり考えていなかったことがいろいろと書かれていて、最初から最後まで楽しめた。

    球種は、結果(軌道)と回転(軸)とは別のものであることというのは、言われるとそうなのだけれど、意識していなかった。それによってファン同士の話(用語の使い方)に食い違いが出るのは頭が痛いところ。

    著者はデータもよく読み、自分で考えて理解しているのが素晴らしい。能力と趣味と時代がうまく噛み合っている感じがする。幸せなことだと思う。

    回転の説明はちょっとわかりにくかった。とくに軸の方向を角度で表現していたけれど、どこが0度なのか、がわからなかった。

  •  本書は,セイバーメトリックスに代表されるデータ分析によった選手評価・球団経営を批判し,「本当にファンが求めている野球とは何なのか,エンターテイメントと結果重視のバランスを再考する」(27頁)ことを目的としている。
     著者であるお股ニキ氏はTwitterのハンドルネームであって,もちろん本名ではない。しかし,いよいよ出版業界にも,HNとアカウント名で書を著す時代が来たものだ。
     本書の構成は,第1章で野球を再定義したのち,第2~3章でピッチング論を投球術と変化球の側面から,続く第4章でバッティング論,第5章でキャッチャー論,第6章で監督・采配論,第7章で球団経営・補強論,第8章で野球文化論を再考する。
     このうち,著者が最も力点を置いているのが,ピッチング論とキャッチャー論だと推測される。所詮,野球はバッテリーの存在を以て始まるスポーツであり,ピッチャーがいかなる球種を投じるか,そのボールをキャッチャーはいかに捕球して審判にストライクと言わしめるのかが重要だという証左でもある。
     我々団塊の世代Jr.が1970年代後半か,80年代前半にエポック社の電子野球盤で遊んでいた頃,ピッチャーの変化球といえば,スライダー,カーブ,シュート,フォーク,そこにチェンジアップが加われば良いほうだった。しかし,20-21世紀転換期あたりから,ピッチャーの球種はバラエティーに富み始めた。スプリット,ツーシーム,フォーシーム,カッター,シンカー等々,何が違うのかが,素人では明確に分からなくなってきており,複雑すぎた挙げ句,それがまた野球観戦をつまらなくさせてしまっている原因かもしれなかった。
     本書第3章のピッチング論後編(変化球編)では,その点を実に理論的に,かつ明確に解説してくれている。すなわち,ボールの変化方向としては,食い込むか逃げるかという横の変化と,ホップするか落ちるかという縦の変化が組み合わされて成り立つ。それを構成しているのが,ボールにかかる重力,抗力,揚力である。これらの力の作用が,ボールの回転方向,回転数,速度を決め,それぞれの結果によって,シンカー→チェンジアップ→スプリット→ツーシーム→フォーシーム→カッター→スライダー→カーブという順に,変化球が決まる。いわば,ピッチャーの投球とは力学の実践版であり,かなり頭を理論的に使うスポーツでもあることが,改めて認識される。
     他方,キャッチャーの役割として,著者はとりわけフレーミングの重要性を謳う。それは,けっして捕球してからミットを動かす「ミットずらし」ではなく,「ボールの軌道を読んで先回りしてから,アウトサイドインでミットの先端で捕球すると同時に真ん中に引き寄せる」(168頁)技術を表す。近年のキャッチャーは,先発・中継ぎ・抑え(あるいは敗戦処理)の各投手から各球種を捕球するとともに,NPBならば,交流戦の普及によってバッターに関する情報を対戦相手分整理しなければならなくなった。その点で,非常に重労働なポジションと化している。そうしたキャッチャーのツールとして,フレーミングを意識しておくことが,今後観戦の楽しみの一つとなろう。
     著者によるTwitterの呟きが,ダルビッシュ有投手のコメントを受け取るうちに,新書レベルまで発展した経緯については,甚だ驚くばかりである。野球を好きな一観戦者として,本書が上梓されたことを大いに歓迎したい。なお,「かつては新聞の巨人やホテル,土地,百貨店の西武が球界の中心」(281頁)とあるが,百貨店を擁するのは西武ホールディングスではない。今後訂正が求められよう。

  •  ネットで持ち上げられた人が調子に乗って好き勝手書いてる本なんかな?と軽い気持ちで読み始めてみたが、とんでもない。実にしっかりとした「現代野球論」である。ピッチング、バッティング、キャッチング、采配、球団経営等々、現代野球がどのようなトレンドであるかを踏まえ、興味深く、面白い分析がなされていて、引き込まれて読んでしまう。特にピッチングの章は、著者本人が好き、ということもあり、読み応えがある。
     光文社新書といえば、バッタの本や土の本など、およそ深く気にしたことのない分野の専門家が、素人にその分野を分かりやすく、面白く紹介してくれる本があるが、この本は、野球(特に、「現代野球」)という競技を理解し、見つめ直し、新たな観戦の視点を得ることにはたいへん優れている。ただし、ある程度の野球に関する予備知識、観戦経験、こだわりがないと読み進めるのは難しいだろう。そういう意味では、大変面白い本なのだが、読み手を選ぶ一冊である。
     かくいう私もまだまだ理解不足。野球に関する分析、勉強を進めていくと、さらにこの本を深く味わうことができるのかもしれない。

  • ★難しいけど面白い
    ★字だけだとイメージしにくい
    ●何より重要なのは大局観であることをマダックスは教えてくれる
    ●そもそもストライクゾーンは厳密なルール通りの形ではなく縦長の楕円形に近い(?)
    ●スラッターがあることで他のストレートや大きな変化球逆方向への球種が全て活きる
    ●経験鍛錬を積んだ人間の感覚や勘の制度は素晴らしいもの
    ●全てを決め打ちして型に当てはめようとしすぎる監督は問題
    ●監督などの指導者にも波があり、最盛期を迎えたら徐々に衰えていく
    ●日本人が345番に据えるような打者を234番にずらすべき
    ●小技の野球はあくまでも弱者の野球である。王道定石をいった上でたまに意表をつくから効果的
    ●実はプロレベルならちゃんと狙いさえすればホームランや長打はそれなりに打てる(?)
    ●とにかくこの20年の日本は大局観を失いトータルで勝つことを放棄して投資や拡大とは真逆の発想で運営されて沈んでいった
    ●合成の誤謬で負け続ける日本
    ●実のところ日本人はそこまで野球の中身自体を好きなのではない

  • メジャーの話が多すぎ

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著者プロフィール

様々なデータ分析や鋭い視点と感性に基づき、ツイッター上で新しい野球の見方を提供する“プロウト(プロの素人)”評論家。ツイッターで知り合ったダルビッシュ有投手がその眼力を認めたことで火がつき、初めての著書の『セイバーメトリクスの落とし穴マネー・ボールを超える野球論』(光文社新書)はベストセラーに。ダルビッシュ有投手に教えた魔球「お股ツーシーム」は、多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。現在では、現役プロ野球選手にアドバイスすることもあり、選手から絶大な信頼を得ている。

「2020年 『データ全分析 ダルビッシュ最強投手論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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