日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略 (光文社新書)
- 光文社 (2019年3月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334043995
感想・レビュー・書評
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日本の工作機械業界が世界におけるシェアを獲得した経緯がMPU搭載という技術的なブレークスルーを切り口に解説されており、分かりやすい。業界人の歴史理解だけでなく、技術革新による破壊的イノベーションが起こりやすい状況を踏まえた、可能性ある技術と経営との向き合い方等の視点でも参考になる。
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名著!!
最終完成品でもなく部品でもない第三の道として補完財へ注目することの意義と可能性。
モジュール化されたパソコン産業が急速な技術進化を遂げたように、モジュラー戦略の持つ技術進化能力をできるだけ上手く活用することが肝要である。
それによって補完財と最終完成品との間に共進化メカニズムを作り、補完財が技術集積装置へと進化する道が開ける。
それによって正面きっての価格競争を避け、日本独自の役割を果たす事で共存共栄の関係を新興国と作り上げることに繋がる。
日本が世界一を貫く工作機械産業。その理由とそんな業界の中で、ファナックが素晴らしい業績を残している要因。 -
●パソコン作業よりも6年も早くマイクロプロセッサを導入したのは、実は日本の工作機械産業であり、それを主導したのがファナックだった。
●工作機械は「機械を作る機械」であることから「マザーマシン」と呼ばれ、車や家電、スマホ航空機等、あらゆる人工物を作るのに欠かせない機械なのだ。
●工作機械産業の技術水準は、国家の安全保障にまで影響与える。(東芝ソ連のココム違反事件)
● 1982年から2008年のリーマンショックで、27年間にわたって世界一の生産高を誇ってきた。現在は当然中国。
●CNC装置の工作機械への導入にいち早く成功したこと。産業革命以来最大の技術革新。工作機械をコンピュータで自動制御する頭の部分であり司令塔のようなもの。富士通の社内新規事業として1956年に始まり、その後分社化して独立したファナック。1975年にいち早くインテルのMPUを導入。
●NC=数値制御 CNC=コンピュータ〜
●NC装置をモジュール化する
●IntelはDRAMからMPUに転換
●現在CNC装置の世界市場における主力メーカーは、ファナックや三菱電機、またシーメンスに代表されるドイツ勢であり米国勢の活躍は見られない。
●現在のCNC装置の原型は、1978年に誕生したファナックの「システム6」であり、それが現在まで続いている。
●パソコンとCNC装置の融合を積極的に推し進めたのが森精機。
●車の自動運転と工作機械の自動制御の類似性。日本の完成車メーカーは、自社の車への最適化に過剰に引きずられないように、中立的な自動運転開発組織を別に設立すべきだろう。
●完成品にこだわれば、市場の成長に連れて日本にキャッチアップしてくるアジア諸国との直接対決を避けることができない。それに対して補完財に着目することで、最終製品を作るアジア諸国が台頭すればするほど、補完財の需要が増加すると言う、いわば共存共栄の構造を作り出すことができる。中国地場企業の工作機械の生産高が増えれば増えるほど、補完財としてCNC装置の需要が増えるのはまさにそれに相当する。
●日本はこれから一体何を作るべきか…完成品でもなく部品でもない第3の道としての「補完財」に着目すること。 -
ファナックとインテルの戦略の変遷を辿りながら、日本の製造業は将来どのような役割を果たすべきかを論じている。
標準化の持つコスト競争力と、特注化の持つ顧客最適力の相反する性質に対して、ファナックがどのようにバランスを取って開発を進めたかが分かりやすく書かれている。
技術的知識がない私でもサラッと読めました。 -
企業にとって、徹底した顧客主義は常識である。しかし1970 年代後半からの日米の工作機械産業の盛衰をふり返ると、破壊的イノベーションが必要な局面では、盲目的な顧客主義の遵守は企業生命を脅しうることがわかった。
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強いものづくりの背景には工作機械=マザーマシンの産業がある
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【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 世界最強の裏方産業はどのようにして生まれたのか/第2章 誕生ーファナックとNC工作機械/第3章 マイクロプロセッサの誕生とインテルの戦略転換/第4章 ファナックとインテルの遭遇/第5章 日本の盛衰はなぜ分かれたのか/第6章 工作機械のデジタル化と知能化、そしてIoTへ/終章 歴史を知り未来を創るために -
ファナックはかつて富士通の一部門だった。恥ずかしながら知らなかった。