土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334043681

感想・レビュー・書評

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  • 「土」って何?
    ホームセンターなんかで、いろんな土が売られているけど違いがわからない。
    と言って、学術書を読んでまで知りたいわけでもない。
    というわけで手にしたのがこの本。

    12種類に分類されている土すべてを実際に地球上を駆け巡り、掘り起こしてきた著者のバイタリティには敬服する。
    その土の写真がカラーで見られるので印象に残る。
    第3章の、人口密度と降水量のマップに世界の肥沃な畑の土マップを重ね合わせて見るとなんかいろいろと考えてしまう。
    世界の歴史には土壌の性質が少なからずかかわっている。
    土地(肥えた土壌)を奪い合う(戦争、買収)のではなく、土壌を改善する方法を競い合う世の中になって欲しいですね。
    金儲け目的で(土壌として使うのではなく)土地を売買し、土壌がどんどん破壊されてしてしまうことがないようにと改めて思いました。

  • そこら辺にある土に肥料等を混ぜ込めば何かしら食料となるモノが育つのかと思っていたが、大間違いだった。
    我らの胃袋を満たしてくれる食物を育てられる土が意外と希少なものだったとは。
    土から見た食糧問題。
    結構不安になる。

  • 978-4-334-04368-1
    C0244¥920E.

    土 地球最後のナゾ
    100億人を養う土壌を求めて
    光文社新書962.

    2018年8月30日 初版1刷発行
    2018年11月5日 第4刷発行

    著者:藤井一至(ふじい かずみち)
    発行所:株式会社光文社
    ---------------------------
    まえがき
     1 月の砂、火星の土、地球の土壌
     2 12種類の土を探せ!
     3 地球の土の可能性
     4 日本の土と宮沢賢治からの宿題
    あとがき
    引用文献
    --------------------------
    まだ、読み終わってはいないのだけれど、
    この一冊、とても良い。
    良い理由の第一は作者の人柄。もちろん面識はないのだが、「まえがき」を読んでものすごくワクワクする。まだ生きているし同じ言語を母国語としている、同じ文化のプレートにいる幸いに感謝したい。
    一体、どうやって育てたらこのような人間が出来上がるのか?
    良いと感じた第二の理由はカラー写真がふんだんに盛り込まれ、地図あり写真有り、しかも画像内に注釈まである。興味が途切れず理解しやすい。ゴクゴク飲める軟水のよう。親書なので、文字の大きさも、図や写真なども小さ目(少なくとも老眼対応サイズではない)がこの値段であればものすごく楽しめる一冊。

    もうやってないけど、この人、クレイジージャーニーで取り上げてもらいたいなぁ。もちろん国営放送の番組でもいいんだけど、あまり真面目で硬いと興味そがれちゃうからね。
    (国営放送の「又吉直樹のヘウレーカ」に出演されてました)

    川端誠さんの絵本に「鳥の島」ってのがあるけど、それを思い出しました。命は次の命に続くんだなぁ。

    ひと頃のガーデニングブームの時に安い土を購入してシロアリ卵でひどい目にあったという話も、コンクリートのために川砂採取するところや石や土砂のために山を削るところも、見たり聞いたりしてたけど、そもそもそんなに興味はなかった。
    全国旅していた時にお土産代わりに持ち帰った「砂」をガラス瓶に入れて並べたときは、結構違いがあるもんだと驚いた。
    岩と砂と土と粘土と土壌とかの定義や違いも。

    西ノ島は素人が見ても興味深いけれど、それも興味の対象なのかな?
    --------------読み終わりまして・・。

    さすがに植物の根がイオンをどうとかってのは、はるか昔に原子があって手が何本とかあったなぁ・・。と読み飛ばしつつ(さすが京大、一般書を手にする人にもそれは理解できると思ってるんだw)自分のふがいなさを感じつつ、それでも暮らせるありがたみをシミジミする。
    雑草を引っこ抜くたびに、種類によってその根っこも違うし、増え方も違うし、何とか駆逐できないものかと思うけれど、それさえある意味恵まれているのかもしれない。
    田舎暮らしゆえ、土は身近であるにもかかわらず、知らないことだらけ。
    水も自分の健康も食べ物もありとあらゆるものが、見えるものも見えないものも関係性があるんだなぁ(ボンヤリ・・)
    手元に置いて、何度も読み返してみたい一冊。
    内容は難しさや興味の対象などで、万人向けでは決してないけれど、自分にとって著者さんのキャラを含め楽しめました。

    96ページの図42 風によって砂塵が多く堆積した場所。肥沃な土壌が多い。ってのの図にウクライナ・パンパの表示 もう一つプレーソーってあるのはプレーリーだよね?テストで書いた覚えがあるぞ 笑

  • 土。この足もとに存在するありふれた物質には様々な特長があり、12種類に分類されるという。世界の12種類の土を探す著者の旅が、軽妙な語り口で語られる。

    チェルノーゼムやポドゾルなどは、その昔、高校の地理で目にした土の名だが、そういえばなぜ地学ではなくて地理で土壌について学んだのだろう?と改めて思い至る。

    それはやはり科学的な視点よりも、世界の食糧事情を担うファンダメンタルであるという社会的な視点からなのだろうか。

    土壌を研究する著者の目的も、あくまでも100億人を養うことができる土を見つけて、将来的な食糧不足を解消することにある。

    はたして、人類の未来を託すことができる土はあるのか。

  • 土壌学の本。著者によると、地球上の土は12種類に分類できるらしい。実際に12種類の土を求めて世界各国を訪問し、土とは何かを考察する。
    自分自身も農学部の出身だが、機械系だったので土そのものにはあまり関心が無かった。ぜいぜい植物の生育に必要な土と化学物質くらいの知識しかなく、社会人になると農業とは違う世界に進んだので、土がどのようにできるか等全く知らなかった。この本では、著者の体験と併せて判りやすく(例え話も適切)解説しており、読んでいてとても面白かった。土についての知識を得ることで、毎日見ている風景が違って見えてくるような気がする。旅行に出掛けたら、動植物と共にその土地について考えてみるのも良いかもしれない。

  • 地球上のすべての人間を食わせることができる豊かな土壌を求め、世界中を旅して土の謎を解き明かそうとする筆者の自伝的な研究紹介。
    私の大好きな、研究大好きクレイジー系科学者。もう少し本人の人間臭い部分が出ていても良かったとは思うが、土壌大好きの筆者に飲み込まれて一緒に土が好きになる。

  • 藤井一至氏が2018年に刊行した土に関する新書。

    ニュースで高校地理が必修科目となると聞いて、久々に地理の勉強してみるかーと思い購入し、一晩で読破。

    藤井氏がシャベル1つで世界中の12種類の土を巡る旅?(研究)の様子がとても読みやすくまとめられている。
    まるで藤井氏と一緒に世界中の土を巡っている気分が味わえた。

    読後は改めて私たちの生活の土台となっている土は、当たり前のものではなく、日本という国は恵まれていることが再認識できた。

  • 土 地球最後のナゾ
    100億人を養う土壌を求めて

    著者 藤井一至(かずみち)
    2018年8月30日発行
    光文社新書

    地球温暖化のニュースで流れる氷河が海へと倒壊する映像は、氷河が成長して押し出された縁の部分が陸地の支えを失って崩壊しているだけで、温暖化で融解しているわけではない。
    この本で最も印象に残る一文。バブル象徴映像として、バブル崩壊後にオープンしたジュリアナ東京の映像が流れるのに似ている。

    著者は、土の研究者で、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員。NASAが本気で目指す火星への入植。注目される火星の“土”よりも、100億人を養える足もとの土の可能性にもっと注目してもらいたい。
    学会定義:土壌とは、岩の分解したものと死んだ動植物が混ざったもの。
    土の黒色の正体は「腐植」で、火星の土にはない。腐った植物だが、落ち葉や枯れ草や根といった植物遺体に限らず、動物や微生物の遺体やフンも材料となる。
    火星の表面は凍っているが、かつて存在した水や酸素により粘土が存在。しかし、腐植がない。だから土壌ではない。月は砂であり土ではない。

    熱帯雨林の本には、豊かな森の下の土壌は薄く脆弱で伐採すると不毛化すると書いてあるが、それは落葉層、腐植層に限った話で、土そのものは深い。伐採すると土はレンガと化し、不毛な大地となるというのは真っ赤な嘘。

    日本の土の30%は黒ぼく土。世界的にレアな土が集中している不思議な国。黒ぼく土は反応性の高いアロフェンと呼ばれる粘土が多く、腐植と強く結合する。

    ウクライナでは最も肥沃な土・チェルノーゼムが1トンあたり1~2万円で売買され、砂漠地帯などへ持っていかれる。肥沃な表土を失った土地はごみの埋め立て地となっている。

    一つの地域の土壌の農産物ばかりを食べていると栄養素が偏るリスクがある。スーパーでいろんな産地の食材を選ぶことが健康にはいい。

    土の種類は世界に12種類しかない。
    1.未熟土:岩石、そして、未熟土がすべての始まり
    2.若手土壌:未熟土が風化
    3.永久凍土:極寒の未熟土
    4.泥炭土:未熟土が水浸しになったもの
    5.砂漠土:未熟土が乾燥
    6.ひび割れ粘土質土壌:玄武岩や粘土が多い未熟土
    7.チェルノーゼム(黒土):未熟土に腐植が蓄積、最も肥沃な土
    8.粘土集積土壌:チェルノーゼムが粘土移動
    9.黒ぼく土:未熟土が火山灰の場合
    10.ポドゾル:若手土壌で砂質が酸性
    11.強風化赤黄色土:若手土壌が風化して粘土移動
    12.オキシソル:若手土壌が風化して鉄が多い場合、or強風化赤黄色土が風化

  • 土ってやっぱりすごいですね!と考えさせられてしまう一冊。
    世界各地の土壌を研究している方の、壮大な研究成果。そしてまだまだ探求は続く。続編を期待しています。

  • 地球人工100億人を養う肥沃な土壌を探す旅仕立ての語り口調が面白い。様々な土壌の成り立ちや用途を面白おかしく解説してくれる。
    地球の土壌は12種類に分けられ、死んだ動植物が腐葉土よりも分解された腐食が土壌の栄養素の源である。腐食と粘土は様々な栄養素や水分を保持する力が強い。粘土と腐食が多い土壌が肥沃な土である。
    日本の土壌は高温多湿で微生物の働きが強いため、最も稠密な人口を養える黒ぼく土が多い。肥沃な土と世界で名高いチェルノーゼムは降雨量の少ない土地に多く、土と水が必要な作物栽培では一歩劣る。
    二酸化炭素や有機酸が水に溶け込むことにより酸性土壌となるため、アルカリの石灰肥料で中和する必要がある。
    水田は、灌漑水でアルカリ成分を取り込ませることで土壌を中性にし、嫌気性にすることで鉄さび粘土を溶かし拘束していたリンを供給する。また、水を入れ替えることで細菌環境をリセットし連作障害をなくす。
    書かれている内容をすべて理解するには、当然だが化学知識(各種イオン)が必要なためその点自分には難しかったが、単純な読み物としてもとても面白かった。

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著者プロフィール

国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所主任研究員

「2022年 『土の大研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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