- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334037857
感想・レビュー・書評
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まえがきで丁寧すぎるくらい、この章は読み飛ばして
大丈夫ですとたくさん書いています。
「息子」が親の介護をすることについて。
前半部がデータの検証的な話で
実例が少なくぴんと来る話も
ないので、ちょっと失敗かなと思ったら・・・、
後半の読み応えのすごさ!!
仕事から介護に比重を移した時の、経済的、
世間的にもペナルティを受ける感じの例(女性は
全く逆になる)。
男同士の友人の集まりでは、介護の悩みは
話しづらい(言ってもお互いにいい気分にはなれない)
現実。
両親を介護していて、母親を介護していた時には
近所から色々と助けてもらっていたが、母親が
亡くなってからはめっきり誰も来なくなる現実。
これは、近所の人にとって○○さんの息子、
でしかないこと。
決して介護者としての息子、ではないという現実。
男として、これは非常に考えさせられます。
これらの後半部分については、もう一度読んでみたいと
おもいます。
久しぶりに、売らずに蔵書する本。 -
親を介護する息子たちを温かくも厳しい眼差しで説いている。
いまだに、介護といえば女性がするものという世のなかの感覚が根強く残っている。性別役割分業的にとらえるべきでないといった硬い言い方をしなくても、実態としてもはや、自分の親は自分で介護する、あるいはその算段をつける時代になりつつある。そのようななかで介護する人たちの声をもとにしている。「28人の現場から」という副題がついていることもあり、各人のいろんな喜怒哀楽のエピソードが紹介されていることを期待して読んでみたんだけど、各人のエピソードが大して収まっておらず、むしろ各人へのインタビューなどをもとにした「息子介護」なるものの分析に大部が割かれている。
そんなうち、温かな眼差しと感じたのは、息子介護って思ったより希望があるものだなということ。皆さん、もっと困ったり憤ったり卑屈な思いをしながら介護しているのかと思ったら、そこは十人十色だろうけど、ちょっとした楽しみや和みがあったりする。こういうインタビューを(人を介して)受けられるくらいだから客観的にみてもわりとうまく息子介護している人たちなんだろうけど、そういうバイアスはあるにしても、希望ある事例に触れられたのはよかった。以前読んだ『男が介護する』(津止正敏著、2021年)ではもっとジェンダー的な部分で卑屈になったり葛藤するものというような紹介のされ方だった気がするけど、本書によるとそうでもないみたい。多くの人が、ジェンダー意識なんか二の次で、悩むとすれば親やきょうだいとの人間関係だったり介護のしかたといった、息子でなくても向き合う課題のような気がした(そこに、自身が息子であったり男であることによる特徴的な課題はありそうだけど)。
あわせて、よくも悪くもだけど「ミニマムケア」という介護への向き合い方も一つの知恵といえそう。育児世代でも妻と夫の家事時間の差を上げ、男性の家事参加が叫ばれるけど、妻がいま急いでやらなくてもいいことをやらなければならないと思い込んでやっていることもあるんじゃないかと思う。ともにミニマムケアでいくというやり方もあるはず。
同様に、男の介護って孤独な介護疲れのあげくの暴力や殺人が話題になりがちで問題ありありのようだけど、かといって女性の介護が万全なわけでなくむしろ危ういこともあるだろう。でも女性的な介護が一般的・スタンダードになっていることで危ういことも当たり前のこととして半ば正当化され顧みられないこともあるかもしれない。
一方、苦言を呈している点といえば、息子(男性)の介護ってコントロールしたいような思いが反映されてしまうこと。先述の「ミニマムケア」にしても、できないことの棚上げ、親の衰えなど見たくないものから目を反らしているとの指摘もあるとか。
ただ、誰がやっても介護は悲喜こもごもなはず。自分のやり方、自分なりの介護がなされればいいんじゃないだろうか。著者はこんなふうにも書いている(p.308)。
「『困っていない』僕らは、本当に困らなくてよいのか?」
「どうしたら僕らは、困るべきときに困ることができるのか?」
困っているときに困ったと言えない、助けてほしいときに助けてと言えない、弱みを見せられない男の「弱さ」を、「強さ」とかんちがいするのはやめたほうがよいのではないだろうか。男には弱さを認めることのできない「弱さ」がある……この問いに答えるのは、男たちの永遠の課題だろう。
介護って悲喜こもごも、困ったり迷ったり憤ったりしながらしていくもの。男だろうと女だろうと、誰だろうと。そういう意味で、困りながら介護をしていくことを当たり前として、息子たちも困りながら介護していることを表出しながら生きていくといい。 -
背表紙に上野千鶴子の名前があったので読みましたが、上野先生は解説だけ。詐欺にあったような気分になりました。
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むかしは、介護といえば、女性がこれにあたるものとされる向きが強かった。娘であったり、息子の嫁であったり。それがいまや、配偶者による介護だったり、息子による介護だったりというのが、増えているようですね。とくに息子介護については、一人っ子化、晩婚化、独身でいる人の増大という現代人の在り様の傾向が影響していて、さらに、就職難や、介護が理解されない社会構造などもその背景としてあるような状態。本書ではその解決については述べられませんが、現状分析としては、なかなかに的を突いたものになっているように読み受けました。
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息子介護はブラックホール。解説で上野千鶴子は指摘する。介護、をめぐるシチュエーションは息子介護に限らず、100人いれば100通りのそれがある。しかしそれにしたってブラックホールなのが息子介護なのだ。
理由はなんとなく、感覚としてわかる。それこそ「もう一つの男性学」ではないけれど、日本の男という生き物を考えたときに、そうなるよね、という確かな感覚がある。が、ゆえにこの本に価値があり、意味があると思う。
介護の専門家ではない著者だからこそ、の、単なる事例集でもなく、公約数探しでもなく、みんなにやってくるそのときを、それぞれに考えさせる本。
上野先生、勝手にしなれちゃ困ります、とセットがいいんでないでしょうか。 -
今後、ますます増えていくだろう、息子が親を介護する「息子介護」。
息子介護の諸相を、聞き取りによって明らかにしている。
個人的には、「もうひとつの男性学」とか名づけてお終いにできぬ、他人事でない、切実な問題。
読み進めながら一番気になったのは、息子介護の次世代は誰が介護するのかという点。 -
女性でも考えさせられる。兄弟や旦那さんが介護をするということは無関係ではないので
息子しかいない私にとっても気になる内容です。
介護をする男性に圧倒的に足りない部分はコミュニケーション能力だと思うので...
息子しかいない私にとっても気になる内容です。
介護をする男性に圧倒的に足りない部分はコミュニケーション能力だと思うのですが、いかがでしょう?
介護疲れで事件を起こしてしまうのってほとんど男性ですから。
助けてーって言えれば、現状が変わるのかもといつも思ってしまいます。
コメントありがとうございます。
ご指摘の問題、かつて講演で聞いたこと
がありなるほどと思ったことがあります。
...
コメントありがとうございます。
ご指摘の問題、かつて講演で聞いたこと
がありなるほどと思ったことがあります。
それは、男性は会社で仕事などミスや
失敗があっても、大抵はリセットされて
また新たなスタートが切れる。
でも、介護はそのリセットという時間は
ないものとなります。
そこに順応できない傾向があり、かつ、
ご指摘の通り身内の苦しみを皆に
伝えることに抵抗を持つ。だから
上手くいかなくて、最悪の介護殺人に
行きついてしまうということ。
そういう、「助けて」が言い合える
集団の形成はこれから必要だと
感じております。