ガウディの伝言 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033644

作品紹介・あらすじ

形、数字、謎の部屋…サグラダ・ファミリアの彫刻家が読み解く天才建築家のメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • 外尾さんのガウディに対する理解、愛情、そしてサグラダファミリアを完成に導く決意と思いが詰まった心に迫る一冊。
    外尾さんが自ら語らずともその苦労や苦悩が必然的に伝わって来て目頭が何度も熱くなります。
    だからこそガウディの事、サグラダファミリア建設に関わる人たちの思い、人として生きていく上での幸せや苦しみを体得し、その溢れる思いが表現されている。
    素晴らしかった!感動した!

  • サグラダファミリアに対するガウディの考えがよくまとめられていて面白い。
    これを読んですぐスペインへ行った。

  • いつ読んでも気持ちが入っていて好きな文章だ…これを読んでから本物のサグラダ・ファミリアを見ると感動が違う。今の建設状況がどうなっているか気になる。

  • バルセロナに行くために読了。ガウディの名前しか知らなかったが、いやはや。本を読んで抱いた印象は情熱あふれる感性の高い芸術家というよりも緻密かつシンプルな理論型で科学者よりの建築家、、て感じ。

    驚くのは著者の方のガウディとの一体感というか、まるで乗り移ったかのように思考し、語ることができること。日本人なのに、である。

    ガウディ、そしてバルセロナを観るのがとても楽しみになりました。

  • 「ガウディ=サグラダファミリアの設計士」以外の知識がない状態で、日本人がその建設の重要な役割を担っていることを知って興味を持ち本書を取った。

    ガウディ生前の記録が限られる中で著者が読み解くサグラダファミリア、ガウディの想いが明快な日本語で綴られ、天才建築家の天才たる所以に理解が深まる。(禅における空の概念を用いて石を掘ることを解釈するなど、本書が日本人的感性で書かれていることは理解の助けとなっている。)

    以下2点、印象深い内容を自分の言葉で抽出する。
    ・サグラダファミリアは、芸術ではなく道具である。使われることに徹底的にこだわった機能美は、それ全体で一つの楽器となる構造をすらを持つ。象徴・構造・機能の問題を一つの答えで解決してしまう。

    ・ガウディが残した最後の言葉「諸君、明日はもっと良いものを作ろう」- 自分はその完成を見ることができないことがわかっていた。それでも恐らくガウディは幸せだった。なぜなら、サグラダファミリアへの愛があったから。愛とは、しばしば愛し愛され合うというものではなく一方的なもの、つまり自分のことを二の次にしても他のためになりたい、ひいてはそれが自分の幸せになる、という非対称なものである。自分のことしか考えない人に愛はなく、愛がない人には未来への希望がない。幸せとは、現時点で全て充足している状態ではなく、未来に希望を持った状態のこと。今が満たされている億万長者でも、それが明日なくなるかもしれない不安にあれば幸せではない。その意味でガウディは幸せだっただろう。

  • ガウディの建築がアール・ヌーヴォーの文脈で語られることにずっと違和感があった。ガウディの建築が唯一無二だからといえばそうなのだが、みな何かと装飾ばかりに目を奪われている点。内部空間の構造にも着目したい。まるで森に迷い込んだかのようでありながらバランスの取れた装飾の下の幹。本書では、ガウディの建築は装飾と機能と象徴を一体化させたと語られる。またガウディは曲線を特徴に上げられるが、実際は双曲面構造が多く用いられむしろ直線が特徴?だというのは面白い。2023年6月にサグラダ・ファミリアの展示が予定されているが、こういった点が掘り下げられているのではないかと期待している。(鳥居先生監修なので特段心配はない。)

    個人的に気になっていたカサ・ビセンスに見られるムデハル様式の要素は、ガウディが取り入れた様々な建築様式の一つに過ぎないという解釈であった。少し残念な気持ちも正直ありつつ、数個の宗教や民族の枠組みにとらわれない真理をガウディは目指していたと分かり、納得。

    いまでこそスペインで最も観光客を引き寄せるサグラダ・ファミリアだが、建設過程は多大な苦難に見舞われる。
    スペイン内戦下で建物が破壊され資料が燃やされたことは有名だが、フランコ独裁下においてはカトリック教会であるサグラダ・ファミリアの建設に携わることは独裁に賛同すると見なされた。変わりゆく社会情勢の中で、ただガウディを信じて石を掘り続けた職人たちに尊敬の念を抱く。

    本書執筆時ではサグラダファミリアは2020年完成予定であった。その後ガウディ没後100年の2026年完成予定と発表されたが、それも新型コロナ感染拡大の影響で延長。
    外尾さんはサグラダ・ファミリアの完成にガウディの生誕・死後何年などと区切りをつけないでほしいと望んでいる。「神はお急ぎにならない」。生前、ガウディは語った。時間を、そしてガウディをも、超越してほしい。

  • もしスペインを訪れるなら、サグラダファミリア聖堂を見てみようと思うなら、必ず読んでおくべき本。

    読みながら奈良の法隆寺や古刹を作った職人達のことが思われてならなかった。こういう建築は信仰を抜きには語れないのだと思う。それが良いとか悪いとかいうことではなく、人を衝き動かすものが物欲や名誉欲だけではないのだということを心して、われわれはこれらの作品に対峙しなければならないと思うのだ。

    色や形や構成比やバランスをすぐわれわれは云々するが、それらはもともと高貴な精神性の前に額ずく存在だった。その聖性を顕すための手段であった。ガウディという偉大な存在を通じてそのことをより深く捉え、自らの表現を究めていく著者の姿勢は求道者のそれに似ていると言えるかもしれない。

    ガウディは、自然を徹底的に観察してそこに神の意志を読み取ろうとした。そして、その意志に沿ったものを作ろうとした。ガウディのデザインは一見奇抜に思えるが、そういった目で見ると意外な謙虚さにあふれていることに気づく。
    著者が何度も繰り返す「機能とデザインが不可分一体になった造型」も、ガウディのそうした態度が表れているのだろう。そもそも自然が造ったものには仕上げ材と構造材に別れているものなどありはしない。

    百年を超えて営々として聖堂を造るエネルギーには敬服する。昨今では観光客の増加とともに寄付も増え、資金も潤沢になってきたというが、それが果たしてよいことなのだろうかと著者は危惧する。私も同感である。

    百年先の自分が生きていない世界を思い描きながら石を刻んだ人々がいた。未来への希望を抱くことで現在の困難を耐え、貧しいながらも充実していたであろう彼らの人生をこそ、われわれは範とすべきではないのか。

  • 一度生で見てみたくなりました。

  • 甥っ子から初クリスマスプレゼント

  • 私がはじめてサグラダファミリアを知ったのはアニメルパン三世のTVスペシャル。
    サグラダファミリアに秘密が隠されていて、隕石の欠片を塔の上に取り付けると隕石の不思議な力でサグラダファミリア全体が輝き始める。
    塔が楽器の役割を果たし音楽が響き渡る。その幻想的な音楽は当時TV局に電話が殺到したくらいである。そして隕石の光でサグラダファミリアの未完成部分が浮かび上がっていく。完成版の光るサグラダファミリアができあがるのだ。その幻想的なシーンが忘れられず私はずっとサグラダファミリアに興味があった。
    今年の夏海に外旅行へいくことが決まった際に、スペインが候補にあがった。そこスペインの観光地を調べている内にガウディ自身にも興味が湧いた。そこでガウディについての本を読もうとして、この本が一番手に入れやすかった。
    この本を読んで驚いたのは、あのアニメの幻想的なシーンがあながち間違いではないことだ。勿論隕石の欠片なんて一切関係ない。だがサグラダファミリアは塔が楽器として音を響かせる役割を持っているし、光を上手く取り込むように設計されている。
    その辺の仕組みは本を読んでもらえば分かるが、そのガウディの天才的な発想にはとても驚かされる。

    この本はガウディ初心者には分かりやすい良い本だ思う。しかし、実際にサグラダファミリアの建設に携わった人が書いた本で、当然その人の思いいれや考え方が大きく反映されていて客観的な事実のみの説明ではない。
    この本を読んで思ったのはやはり古き良き時代の職人は良いものだということである。

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著者プロフィール

1953年、福岡県生まれ。サグラダ・ファミリア聖堂彫刻家。京都市立芸術大学美術学部彫刻科を卒業後、中学校・高校定時制非常勤教師として勤務ののち、78年バルセロナへ渡る。彫刻家として認められ、アントニ・ガウディの建築、サグラダ・ファミリアの彫刻に携わる。2005年、アントニ・ガウディの作品群として外尾悦郎の作品を含む「生誕の門」と「地下礼拝堂」がユネスコの世界遺産に登録される。リヤドロ・アートスピリッツ賞、12年ミケランジェロ賞、20年文化庁長官表彰など受賞多数。サン・ジョルディ・カタルーニャ芸術院会員。天理大学客員教授。著書に『バルセロナ石彫り修業』(筑摩書房 )、『ガウディの伝言』(光文社)、『サグラダ・ファミリア ガウディとの対話』(原書房)など。

「2022年 『時の中の自分』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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