少子化論: なぜまだ結婚、出産しやすい国にならないのか

著者 :
  • 勁草書房
3.41
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本棚登録 : 108
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326653805

作品紹介・あらすじ

少子化対策がはじまって約20年経つが、出生率が依然低い日本。通説を見直し、わが国の少子化とその対策を最も総合的に論じる書。

感想・レビュー・書評

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  • 少し内容が冗長的に感じるが、少子化論について丁寧な分析をしている著作である。論文と同様に後半200ページ以降をまず読んで、詳細は各章を見ていく読み方が適切である。外国に住んでいた日本人親100名のインタビューから、日本社会全体が赤ちゃんや子育てに対して厳しい、冷たいとの分析があり、昨今のマタハラや、ベビーカー乗車への冷遇など、心的な面で日本人の意識を改善する必要があると強く思った。

  • 提言は少子化論としては新鮮で面白い。
    しかし、全体的に統計資料の使い方が雑である。
    視覚的な資料を出さずに数字だけ並べることが多く読みづらいのももちろんそうなのだが、数字すら出さずに極めて主観的な読みを提示することすらある。
    例えば、p.33で「近年ほど、出産退職をした者が増えてきている」とだけ書いてあるが、出生動向基本調査にあたると、同時に就業を継続した者も増えていることがわかる。特に、育休を利用して就業を継続した者は20年間で5.7%から17.1%へ激増している。
    これは一例に過ぎず、引っかかる統計資料の使い方をしている部分を細かくあげるときりがない。
    これらの統計から導かれた提言を信用しきることは、私にはできない。

  • 11月6日 お見合い記念日

  • 【版元】
    なぜ少子化は危機なのか、これまでの少子化対策の流れなど、基本知識から最先端の議論まで。家族や若年雇用の変容、父親の育児参加、都市と地方の差異、少子化の国際比較など多角的な視点で日本の少子化の全体像を分析。少子化克服への道を提言する。
    http://www.keisoshobo.co.jp/book/b108583.html

    【目次】
    まえがき [i-iv]
    目次 [v-x]

    序章 少子化の進行と変容 001
    I 出生率の反転傾向は持続するのか 001
    II なぜ危機なのか 008
    III 少子化の要因をめぐる議論 014
    IV これまでの政策は効果をあげたのか 018
    V 解明する問題 025

    第一章 家族は変わったか 031
    I 通説を見直す 031
    II 安定する家族 032
    III 分業戦略と共働戦略 039
    IV 強まる家族志向 043
    V 典型的家族のための少子化対策が課題 048
    VI 家族から漏れる人たち 057

    第二章 若年層の雇用劣化と未婚化 061
    I 進む未婚化 061
    II 未婚化の理由を探る 065
    III 非正規雇用、低収入、未婚化 072
    IV 非正規雇用者の両立難 084
    V 雇用、非正規の育休、ライフデザイン教育の対策拡充を 088

    第三章 父親の育児参加は増えたのか 093
    I 父親ブーム 093
    II 依然少ない参加 094
    III 日本的雇用と残業 101
    IV 父親の育児休業はなぜすすまないか 111
    V ふつうの父親が子どもに関われる社会に 114

    第四章 企業の両立支援の進展と転換期 121
    I 両立支援の進展 121
    II 経営環境変わる 126
    III 経営体力による格差とみえてきた問題 128
    IV 両立支援の効果 134
    V 次の展開 140

    第五章 都市と地方の少子化 145
    I 地方の出生率低下 145
    II 出生率に地域差が生じるのはなぜか 149
    III 雇用の悪化 153
    IV 都市と地方の子育て環境 161
    V 地域ごとの特徴 169
    VI 都市と地方のアドバンテージと優先課題 176
    VII 各地域にあった対策が必要 182

    第六章 国際比較からみる日本の少子化 187
    I 国による出生率の違い 187
    II 結婚と同棲 189
    III 出産・子育て 198
    IV 子育て支援の比較 206
    V 日本の課題 213

    終章 少子化克服への道 219
    I 少子化論のパラダイム転換 219
    II 政策提言 225

    あとがき(二〇一三年 松田茂樹) [243-246]
    文献 [iii-x]
    索引 [i-ii]

  • 少子化の要因➡︎未婚化の増 未婚化の増➡︎若年層の非正規雇用者増等による収入の低下 経済的理由が未婚化につながっている。少子化対策については国、企業の政策如何が主であるが、子どもに優しい社会環境は個人の意識の問題か。近所の子どもに声掛けしようかな。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:334.31||M
    資料ID:51300420

    少子化に関してあらゆる方面からの分析がされている。
    (母性看護学領域 推薦)

  • 結局のところ、少子化問題は解決しなさそうな気がする。

  • 日本で少子化対策を行なうようになって、約20年経つそうだ。その間、出生率は最低レベルから若干の改善が見られるものの、対策が決定打となっていない。この本で筆者は、少子化現象を再分析し、日本の少子化の最大要因は未婚化にあると述べる。その上で、スウェーデンやフランス、ドイツなど少子化対策に一定の成功をおさめている国々との対比を交えながら具体的な方策を提言しており、総論としてとても良くまとまった1冊だと思う。個人的には「生物種としての退化」といった根源的な問題も抱えているようにも感じている。

  • 1.松田茂樹『少子化論 なぜまだ結婚、出産しやすい国にならないのか』勁草書房、読了。少子化対策が開始されてから、すでに二十年。合計特殊出生率は微増したが、その対策の効果には疑問が生じる。著者は従来の少子化論とその対策を膨大なデータから検証し、そのことで未来を見通す提言を提示する。


    これまで「夫婦間の子どもの数」で論じられてきたが、現実の少子化の最大要因は「若年層の雇用の劣化により結婚できない者が増えたこと及びマスを占める典型的家族(夫は就業、妻は家事)という男女の役割分担において出産・育児が難しくなっていること」。

    従来の対策は、女性個人の育児と就業だけ絞って展開されてきた(それが悪いのではないが)。しかし、経過を反省するなら、ピンポイント的支援で少子化を捉えるのではなく、要因背景として見逃せない非正規雇用の問題を含めた総合的な協業と試み直す必要がある。

    「従来の少子化論は、わが国の少子化の実態、その危機、その背景要因の〈全体像〉を正確に捉えることができなかったのではないだろうか」というのが本書の執筆動機。少子化対策をガイドすべき少子化論の陥穽を正面から捉えることで、見えない問題に光を当てていく。

    現行制度はあまりにも育児当事者支援に偏重してきたが(何もないよりはいいのだが)、このことは子育ては個人ないし家庭で「完結しろ」という自己責任論の一種かもしれないと思った。不必要な「協同」が先行し、必要な「協同」がスルーされるというか。了。

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著者プロフィール

(まつだ しげき)中京大学現代社会学部(コミュニティ学専攻)教授。


「2021年 『[続]少子化論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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