- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326302574
作品紹介・あらすじ
本書は、核兵器の拡散に主に勢力均衡論の観点から肯定的立場をとるウォルツと、組織論の観点から否定的立場をとるセーガンによる、それぞれの主張と相手への反論をまとめたものである。理論的な論争から最近の核拡散の事例、そしてオバマの「核なき世界」演説をめぐる議論まで、核兵器の本質に迫る白熱の論争を余すことなく収録する。
感想・レビュー・書評
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核兵器の拡散がもたらす帰結は、安定・不安定の正反対のどちらなのかを、高名な学者が議論する。
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ネオリアリズムの大家ケネス・ウォルツとリベラリズム派のスコット・セーガンによる核兵器の拡散についての本。
ウォルツは核兵器は最大の抑止力であり、核兵器の相互確証破壊が大国間の全面戦争を不可避にしたことで、戦後75年以上に及ぶ大国間の戦争がない「長い平和」が実現したことを最大の論拠とし、核兵器が拡散することでむしろ世界の平和はより安定化すると主張する。
一方、セーガンは核兵器の抑止力を認めつつも、組織論の立場に立ち、どのように洗練された組織も偶発的な事故や下部組織の暴走などにより核兵器を使用してしまう可能性を否定できないことから、世界の安定には核不拡散を推進することが望ましいと主張する。
この本の面白いところは、ウォルツ、セーガンがそれぞれの持論を展開した後、それぞれが相手の主張に対する異論を唱えているところ。
結論としては副題の「終わりなき論争」の通り、どちらかに軍配が上がることはなく論争は続く。
個人的には戦争に対する観念は核兵器の出現前と後では大きく変わったと思う。
ノーマン・エンジェルが1910年に戦費の負担を考えれば戦争はもはや合理的ではなくなったと言ったけど、2回の世界大戦を経て核兵器が出現したことでようやくこの言葉が現実的になったのかなと。
もちろん、小国同士の紛争や小国と大国の紛争は終戦後もずっと続いているけど、大国間同士による他国を巻き込んだ大戦は戦後75年経っても一度も起きておらず、この「長い平和」は有史始まって以来、未だかつてなかったこと。
これは核兵器の恩恵によるところが大きいことは間違い無いかなと。
「長い平和」を考える上で核兵器は避けて通れないと思うけど、核拡散についての論点を整理してくれる良書。 -
核問題を考える上での必読書とのこと。
核保有国になることで、自暴自棄にさせないという抑止される側になる。
軍事組織はその性向から、偶発的な戦争を生起させる可能性が高いので文民統制が必要。
国力が弱体化しつつある国は今戦争をした方がいいと判断することもある。 -
この本を読んで相互確証破壊といった核抑止力がじつはあやふやなものであり信頼性に乏しいと思った。そして核兵器が世界中に拡散する事に肯定的な反応を示すケネスウォルツの論はやはり支持できない。詳細は→http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou24301.html
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ノーベル賞平和賞に喝采した人も,反感を覚えた人も,どちらも必読の書。
テーマは核兵器の拡散は国際社会を不安定にするか?
抑止力による安定化を評価するウォルツと,偶発的使用という不安定性を重く見るセーガン。真っ向から対立する議論を丁寧に追っていく。
定量的評価には馴染みにくい問題だけど,考える価値はある。
歴史的・科学的な事実を共有した上での,核拡散に対する楽観論と悲観論の実のある論争。事実に重きを置かない印象論や責任の所在がはっきしない言説に何百万文字触れるより,この一冊を読んだ方が有意義なのは間違いない。
「実のある論争」と言っても,もちろんどちらか一方だけに理がある,みたいに決着がつくわけでないのは副題にもあるとおり。
この議論で双方から持ち出される事柄にはきちんと典拠が示されており,それらを(必要なら検証したうえで)出発点にして各自考えることになるのだろう。先入観なく読むのが吉。 -
東2法経図・開架 319.8A/Sa15k//K