消費資本主義!: 見せびらかしの進化心理学

  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326299256

作品紹介・あらすじ

人々が見せびらかし消費をしてることならみんな知ってる。でも正確なところ何を見せびらかそうとしてるのかは、マーケティング理論もよくわかってない。カギを握るのは「ビッグファイブ特徴+知性」と「コスト高シグナリング」だ。マーケターには洗練された理論を、消費者にはかしこい消費生活のヒントを、進化心理学からご提案。

感想・レビュー・書評

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  • 原書は10年以上前に出ているけど、そうとは感じさせないような刺激的で疾走感あふれる訳。現代社会のイマココ感があって良い。
    ただ、誤植がとっても多い(どれも質的には「教養ある専門職」の読者ならスッと読み飛ばせるレベルだけど、量がハンパない)。

  • 桃山学院大学附属図書館電子ブックへのリンク↓
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000049339

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  • 大変おもしろかった。原著は2009年、訳書である本書は2017年刊行だが、今読んでも古さを感じない。むしろ、今の方が消費資本主義のリアリティをより感じるのではないだろうか。これは名著といえる。

  • 高級車や貴金属類に代表されるいわゆる、「見せびらかし消費」は極めて高コストな自分の資質のシグナリングであり、かつ他人からはさして関心が払われないものであると筆者は語る。自分の資質のアピール、また他人の資質の認知はそんなことをせずとも実現できる…筆者は現代の「消費資本主義」から、人間の生物としての基本へ回帰すべしと主張している。
    面白く、深く納得させられる本書だが、ちょっと長い(もう少しコンパクトにできるのではないか?)、かつ誤植が多い点をマイナスとしたい。

  • 難しくて読みにくい

  • この本は書評を書かないといけない

    著者ジェフリー・ミラーは、マーケターたちは消費者が見せびらかしたいものを理解していないという。富や地位を見せびらかしていると言われてきたが、そうではない。ぼくたちが本当に見せびらかしたいと思っているのは、正確には5つの主要性格特徴(ビッグファイブ)と知性なのだ。

    ビッグファイブとは、以下の5つのこと。
    経験への開放性、堅実性、外向性、同調性、情動の安定性。

    知性とはそのまま一般知能やIQと呼ばれるものだ。

    これら中核6項目は遺伝し、生涯を通して安定している。商品はこれらの特徴を見せびらかすために設計されていると考えられる。
    たとえば、ぼくがこの『消費資本主義』を読んだのは、本を楽しむということ以外に「本を読む人って真面目そうだよね」という一般的なイメージを利用して、自分の堅実性をシグナリングするためかもしれない。

    ここで問題になるのは、ほんとうに読んだのかどうか分からない点だ。ただ家に置いて「読んだよ」と言ってるだけかもしれず、そうであれば、ぼくの堅実性は内実のない騙しということになる。
    堅実性を信用してもらうには、せっせと時間と意志力を割いて書評を書けばよさそうだ。堅実性がなければ、450ページ以上ある本を読んでわざわざ文章を仕立てたりしないだろうから。
    このように、コストをかけてシグナルを信用できるようにするのを「高コストシグナリング」と呼ぶ。

    消費活動にも、高いコストをかけさせてシグナルに信頼性を持たせるものがある。精神の健康に悪そうなデヴィッド・リンチの映画やデスメタルが好きだと表明することは、開放性と安定性の高コストシグナルである。無駄に広いキッチンをほこりひとつない状態にたもっておける人の堅実性はたしからしく見える。

    ただ、このような消費活動は率直に言ってばからしいものだ。人間たちは進化の過程で、他の人間の特徴を精確に読みとる技能を身につけているからだ。数十分話すだけで相手のことはかなり分かってしまう。
    であれば、わざわざ高いお金を払ってまで商品を買う必要はなさそうだ。そこで著者は見せびらかし消費に歯止めをかける手段を提唱する。個人、社会、国家のレベルでそれぞれできることがあるが、ここでは個人の手段にしぼって話すことにしよう。

    大きな方針のひとつは、買わずに済ませることだ。上で書いたように少し会話して分かってもらうだけでもいいだろう。面白いのは、買わずにべつの手段でシグナルを発したほうが効率的なこともあるという主張だ。
    本棚を自作して本を入れれば、ただ小売店で本棚を買ってくるよりも強力な開放性、堅実性のシグナルになるはずである。

    借りるのもいい方法だ。ぼくはこの本を買わずに図書館から借りて読んだのだが、借りたおかげでこの本について語れることがやや増えた。近場の図書館に置いておらず苦労したとか、おもしろい本なのに借りられていないようで残念だ。など。
    商品のシグナリング効果は、所有するだけでなくそれについて物語ることで飛躍的に上昇する。『消費資本主義』を買って読んだだけならそれで終わりだ。しかし、『消費資本主義』を図書館から借りて、楽しみながら読んで、さいごには書評まで書いてしまったとなれば、より強力なシグナルを発するはずだ。

    どうだっただろうか?



    <blockquote>「問題は、マーケティングが物質主義を促進する点ではない。その反対だ。マーケティングは自己愛に溺れ主観的な快楽と社会的地位とライフスタイルにもとづくインチキ精神主義を促進する。製品の物質的な性質よりもその製品で心にひろがる連想の方が重要となるのだ。これこそが、広告とブランド確立の狙いだ」(p61-62)</blockquote>
    モノは満足をもたらす、情報は満足をもたらさない。ということを國分功一朗せんせいが『暇と退屈の倫理学』で書いておられましたね。情報というのはこの本でいうビッグファイブだったりするのでしょう。

    <blockquote>「リチャード・ブラウンやジョン・プロゼックの書いた専門家向けロレックス真贋鑑定ガイドでも読まないかぎり、本物のロレックスを偽物と区別するのはきわめてむずかしい。??というより本物のために二万八八〇〇ドルも余計に払うのを正当化するのがむずかしい」(p131)</blockquote>
    ブランドは情報の典型。たしかにいらない気もする。けど惹かれちゃうんですよねえ…。安心の担保にもなってるから、ずばっと切りすてるのも勇気がいる。とくにノンブランドで痛い目なんかみちゃうとね。

    <blockquote>「生殖能力をいつわる目的に幅広い年齢層で使える方法は、生殖能力を示す顔の手がかりを増幅する化粧品を利用することだ。ぷるぷるした唇、大きな目、目立つ頬骨、なめらかでつやつやした肌、ふさふさで輝くような頭髪、ごく少なめな顔面の体毛といった手がかりを化粧品で強化するのだ。...ほぼどんな文化でも、女性は化粧品を使って二〇代中盤の生殖能力のピークにある女性ならではの特徴にじぶんの顔の特徴を似せようとする」(p185-186)</blockquote>
    これはぼくのやってることと関係しているので引用しました。この点は微妙で、男性の若さ選好は文化的なものだと考える人も多いですよね。でも進化的な理由があるのだとすると、どのていど調整が効くものなのでしょうか?

    <blockquote> 「進化心理学者たちが本当に右翼の陰謀家かどうか判定すべく、同僚のジョシュ・ タイバーとスティーブ・ガンジスタッドとぼくで、オンライン調査を実施した。...政治的態度に関する一六項目の質問のうち一五項目で進化心理学者たちは保守的ではなく有意にリベラルなスコアを示した。...政治的問題に関して進化心理学者のリベラル度合いは進化論的でない心理学者となんら変わらなかった。それにアメリカ国民全体と比べると圧倒的にリベラルだ」(p345-346)</blockquote>
    進化心理学はアメリカではリベラルのひとに嫌われているらしいですね。日本でも人文系のひとはあまり進化心理学に言及しない気がします。

    <blockquote>「製品一つを所有するときの真のコストは、その製品を買うときに払う金額から、それを売り払うときの買い取り金額を引いたり失くしたり捨てたりするときの費用を足してから、その額を使用回数で割ると得られる。このコストは、おどろくほど高いことがよくある。ほんのたまにしか使いどころのないモノを買いすぎて借りて済ませることの少ない傾向に経済学者はしょっちゅう戸惑っている」(p358)</blockquote>
    これは、一度買って読んだり読まなかったりしたまま本棚にぶちこんである本のことを言っていますね。さいきんちょっと本棚の本を捨てようとビニール紐できゅうきゅうと縛っている最中、このことをずっと考えていました。借りるか電子書籍にしよう…。でも買った方が出版業界的にはいいんだろうなあ…買って友人にあげるのがシグナリングとしてもスペース確保としてもいいのかしらねえ

  • 人は要不要だけで物を消費するわけではない。共産圏ならまだしも自由経済の中では無くても困らないものがありふれていながらきちんと需給バランスが成立する。ときおり「なんでこんな物買っちゃったんだろう」と後悔の念にかられるのは、ある意味消費の自由を象徴している感がある。だから商品購入意思決定を「根本においてイデオロギー的」というのは言い得て妙。

  • 無駄なお金を使いたくないので読んでみたが、どっちにしろ、それなりの人付き合いがしたければ、身の回りのものや交際費でお金がかかる。

  • 東2法経図・開架 675A/Mi27s//K

  • 著者:ジェフリー・ミラー
    訳者:片岡宏仁

    【版元】
    3,500円+税
    出版年月日:2017/12/22
    9784326299256
    4-6 480ページ 在庫あり

    人々が見せびらかし消費をしてることならみんな知ってる。でも正確なところ何を見せびらかそうとしてるのかは、マーケティング理論もよくわかってない。カギを握るのは「ビッグファイブ特徴+知性」と「コスト高シグナリング」だ。マーケターには洗練された理論を、消費者にはかしこい消費生活のヒントを、進化心理学からご提案。
    http://www.keisoshobo.co.jp/smp/book/b329818.html


    【目次】
    目次
    凡例

    第1章 ダーウィン、モールにゆくの巻
    第2章 マーケティングの魔術
    第3章 マーケティングが文化の中心にある理由
    第4章 ゼニにやられた脳
    第5章 消費主義の根っこにある妄執
    第6章 適応度を見せびらかす
    第7章 誇示的な浪費・精度・評判
    第8章 体の自己ブランディング、心の自己マーケティング
    第9章 中核六項目
    第10章 消費者が見せびらかし、マーケターが無視する特徴
    第11章 一般知性
    第12章 開放性
    第13章 堅実性
    第14章 同調性
    第15章 魂の遠心分離
    第16章 見せびらかす意志
    第17章 自由を合法化する
    読者のための練習問題
    謝辞
    訳者あとがき
    索引

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著者プロフィール

ジェフリー・ミラー
ニューメキシコ大学で心理学の准教授として終身雇用権を得て、進化心理学、人間のセクシュアリティ、知性と創造性、人間の感情について教えている。コロンビア大学で学士号、スタンフォード大学で博士号を取得。著書の『The Mating Mind』(『恋人選びの心 性淘汰と人間性の進化』岩波書店)と『Spent』(『消費資本主義! 見せびらかしの進化心理学』勁草書房)は12カ国語以上に翻訳されている。2008年には、排卵期のラップダンサーはより多くのチップを稼ぐという研究でイグノーベル賞の経済学部門を受賞した。

「2022年 『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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