歴史学者と読む高校世界史: 教科書記述の舞台裏

制作 : 長谷川 修一  小澤 実 
  • 勁草書房
3.83
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326248483

感想・レビュー・書評

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  • 面白いです。主に以下の2つの部分からなる。1.色々な時代、地域の専門家から見て、教科書の記述が正しいかという話
    2.教科書の検定、採用、入試問題など、教科書の作成、利用に関する話
    1は、多数の人が書いているが、最初の長谷川修一氏による古代イスラエル史の論考が、一種の基調講演になっている。
    各社教科書における出エジプトやダビデ、ソロモンの記述を比較しつつ、世界史という教科の成り立ちや、教科書作成事情にも触れらていて、一読に値する。
    世界史の教科書の古代イスラエル記述って、古事記、日本書紀を歴史の時間に史実として教わるようなものだったのね。
    歴史の記述は、客観的ということはあり得ず、結局は歴史感や解釈としてしか存在しないと思うが、教科書に暗黙のうちに含まれるバイアスは知っておきたいですね。
    後半の2については、教科書作成の過程なんて知らないことなので興味深くはあるが、テーマは良くても、核心に迫っていない印象。例えば、入試の分析は戦前のものだけれど、やっぱり知りたいのは今どうかということかなと思うし、教科書作成と言いつつ出版社側の意見は無し。ま、無いものねだりをしてもしょうがないですかね。
    しかし、世界史が今時の選択教科として人気が無いって知らなかった。共通一次(年がばれる)では、倫社、政経の方が簡単だから有利とは言われていたけど、文系は!日本史、世界史が王道だとおもってましたわ。

  • 12章ぶんの歴史学×高校世界史教科書論が読める。私は長谷川修一の聖書考古学観点から世界史教科書の問題点を指摘する第01章(003–024)を目当てに読んだが、全体としても、新課程に入る前の各社世界史教科書の特徴(長所/短所)を窺い知ることができ、参考になった。また、第10章(新保良明)の教科書調査官の職務説明は、他ではなかなか読めないタイプの記述だ(237–245)。

    第12章の矢部正明による2018年時点での検定済高校世界史教科書7種の学校採用率基礎データ(via 内外教育2017-01-20)とそれらに対する寸評は、その後の新課程の教科書を直接論評したものではないが、2024年時点でも参考になった。山川詳説世界史Bのシェア率は新旧版合わせて52.3%と高い。帝国書院(新詳世界史B)7.8%、実教出版(世界史B)6.2%、山川新世界史1.0% について“構成、叙述に至るまで編集に「進取の意思」をより感じる”(p. 245)と述べている。これらの編集方針は帝国書院世界史探求/実教出版世界史探求/山川世界史探求新世界史にそれぞれ引き継がれている。

  • 世界史Bのころではありますが高校の世界史、世界史教科書を取り巻く状況について勉強になりました。

  • ●本書については、2名の学生がレビューしています。(それぞれ、2022年11月18日と2022年11月14日に公開。)


    【2022/11/18公開のレビュー▼ここから】
     高等学校において用いられている世界史の教科書について、立場の異なる複数の歴史学者が、その記述の内容や採択の裏側など、多様な観点から分析した一冊。
     本書の第Ⅰ部および第Ⅱ部では、研究者の視点から、教科書の記述の問題点が指摘される。受験の際に特に違和感を覚えることなく受け入れていた記述が、実は大きな問題を含んでいたという事実は衝撃的である。冷静な論調というよりは、執筆陣の感情が垣間見える箇所も多々あるが、最新の知見を踏まえた指摘の数々は非常に勉強になり、興味深い。第Ⅲ部で扱われる話題は、教科書制作・採択の現場や官立高等学校の入試問題など幅広い。教科書調査官の経験を踏まえた本音の吐露や、教科書採択に対する教員の考え方を調査したアンケート結果など、教科書に関わる方々の生の声は、生徒として教科書を使っているだけでは知ることができない、まさに「舞台裏」である。
     全体を通して気付かされるのは、教科書作成・採択・利用といったすべての過程において、関係者はなにかしらの苦渋を抱えているという事実である。現行の教科書や歴史教育が問題を含んでいるということに対する責任を、特定の人や機関に押し付けることはできないであろう。現状を打破するためには、まず、異なる立場にある関係者が、互いの苦悩を知ることが必要なのではないか、と考えさせられた。
    (文科三類・2年)(3)
    【2022/11/18公開のレビュー▲ここまで】


    【2022/11/14公開のレビュー▼ここから】
    大学受験で世界史を勉強したという方、まだ高校の時の教科書が手元にあれば、あらためて読み返してみませんか。
    『歴史学者と読む高校世界史』はその名の通り、歴史学者や高校教員、元教科書調査官などが高校世界史の教科書をさまざまな面から読み解く一冊。記述内容、執筆者、学習指導要領との関係、さらには教科書のシェア率まで視野に入れて、各地域史の専門家が高校世界史の現状と問題に迫ります。各社の教科書の比較、世界史教科書のなかの日本史記述の検討、そもそも高校の「世界史」という科目ってどんなふうにできたのか? 検定、採択、そして試験の実態は? など、非常に幅広いテーマを扱っていますから、受験生として読んでいた時とはまた違う、教科書の新たな姿が見えてくることでしょう。
    (文科三類・2年)(4)
    【2022/11/14公開のレビュー▲ここまで】


    【学内URL】
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000060118

    【学外からの利用方法】
    https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

  • 教科者の問題点を論考した専門書になる。特に全部読む必要が自分にはないので途中までにした・

  • HS2a

  • 東2法経図・6F開架:375.3A/H36r//K

  • 編著者:長谷川修一 、小澤実

    【版元】
    価格:2,500円+税
    出版年月日:2018/06/28
    9784326248483
    4-6 288ページ

    歴史学者、元教科書調査官、高校教員たちが高校世界史教科書の記述を吟味し、製作の舞台裏を明かす。(1)記述内容と執筆者に関する分析、(2)検定を行う文部科学省、教科書会社、高校教員、受験産業など、教科書というモノ、商品が作られるプロセスや制度、関係者に関する分析、この2方面のアプローチから浮かび上がる実態。
    http://www.keisoshobo.co.jp/smp/book/b361262.html

    【目次】


    第I部 高校世界史教科書記述の再検討(一)オリエントからアメリカへ
    第1章 高校世界史教科書の古代イスラエル史記述[長谷川修一]
     はじめに
     一 高校世界史教科書の古代イスラエル史記述
     二 古代イスラエル史記述の背景
     三 「史実」とは何か
     おわりに

    第2章 古代と近代の影としての中世ヨーロッパ[小澤実]
     はじめに
     一 執筆者の問題
     二 現行教科書記述における問題点
     三 現行教科書記述を規定する枷
     おわりに 二〇一八年の高校世界史教科書

    第3章 高校世界史教科書の中・東欧記述[中澤達哉]
     はじめに
     一 明治期~昭和初期の中・東欧記述
     二 第二次世界大戦以後の中・東欧史記述
     おわりに 歴史認識を映す鏡としての中・東欧

    第4章 高校世界史教科書におけるアメリカ合衆国─人種・エスニシティ・人の移動史を中心に[貴堂嘉之]
     はじめに 研究テーマと歴史教育との関わり
     一 高校世界史教科書の世界
     二 教科書執筆における新しい試み
     おわりに

    第II部 高校世界史教科書記述の再検討(二)イスラームとアジア
    第5章 高校世界史とイスラーム史[森本一夫]
     はじめに
     一 高校世界史におけるイスラーム史の現れ方
     二 「イスラーム世界の形成と拡大」に関する提案
     三 「イスラーム世界の形成と拡大」以外の部分に関する提案
     おわりに

    第6章 高校世界史における日中関係[上田信]
     はじめに
     一 高等学校学習指導要領における世界史B
     二 山川『詳説世界史B』の新旧比較
     三 朝貢に関する記述(山川〈新〉・東京書籍・実教・三省堂の比較)
     四 中国正史における「倭」「倭国」と「日本」
     五 中国人が真剣に調べた日本――鄭舜功『日本一鑑』
     おわりに

    第7章 高校世界史教科書と東南アジア[松岡昌和]
     はじめに
     一 世界史教科書における東南アジア記述
     二 「受動的」な東南アジア
     三 日本とのかかわり
     おわりに

    第8章 日本史教員から見た世界史教科書――世界史教科書の日本に関する記述をめぐって[大西信行]
     はじめに
     一 世界史B教科書の日本に関する記述の概略
     二 世界史B教科書の日本に関する記述の検討
     おわりに 新テストと世界史教科書

    第III部 高校世界史教科書の制作と利用
    第9章 「世界史」教科書の出発[茨木智志]
     はじめに
     一 「世界史」授業開始前の状況(一九四五~一九四八年度)
     二 「世界史」授業開始時の状況(一九四九年四月前後)
     三 「世界史」の授業の始まりと準教科書(一九四九~一九五一年度)
     四 一九五一年度用「世界史」検定教科書の挫折と対応(一九五〇~一九五一年度)
     五 初期の「世界史」検定教科書(一九五二~一九五五年度)
     おわりに

    第10章 世界史教科書と教科書検定制度[新保良明]
     はじめに
     一 教科書調査官の履歴書
     二 教科書調査官の検定業務
     三 教科書会社と教科書検定
     おわりに 今後の教科書検定に向けて

    第11章 官立高等学校「歴史」入学試験にみる「関係史」――その変遷と拡大[奈須恵子]
     はじめに
     一 官立高等学校「歴史」入学試験実施状況についての概観
     二 全般的な出題傾向の概観と「関係史」出題の特徴
     三 報告・講評にみる採点や出題のねらい─「関係史」についての報告・講評から
     おわりに

    第12章 高等学校の現場から見た世界史教科書――教科書採択の実態[矢部正明]
     はじめに
     一 高校教育課程から見えてくる世界史Bの実態
     二 高校生は世界史Bをどのように見ているのか
     三 世界史B教科書シェアからみえてくるもの
     四 高校現場での教科書採択の実態─高校教員のアンケートから見えてくるもの
     おわりに

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