10億分の1を乗りこえた少年と科学者たち――世界初のパーソナルゲノム医療はこうして実現した
- 紀伊國屋書店 (2018年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784314011655
作品紹介・あらすじ
2007年5月、ウィスコンシン小児病院に2歳の男の子がやって来た。
食事をするたびに腸に小さな穴が開き、その穴が皮膚表面まで通じてそこから便が漏れるという奇病を患っている。 「10億人にひとり」レベルの稀な症例を前に、医師たちは様々な検査をするが原因がまったくわからず、 過去の文献にも例がない。このままでは10歳までもたないと思われた。
2009年、ついに医師たちは最後の手段として臨床の場では世界に例のないゲノム解析により、
原因遺伝子を突きとめて治療の手がかりをつかもうという大胆な試みに踏みきる。
その結果は? そしてこの医療が突きつけた倫理問題とは?
診断名のつかない難病を抱えた少年との出会いから、世界初のパーソナルゲノム医療が
実現するまでを息詰まる筆致で綴った医療ドキュメンタリー。
2011年「ピューリッツァー賞・解説報道部門」受賞記事の書籍化!
感想・レビュー・書評
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恐ろしい奇病により何度も死に直面する少年ニック。そんなニックを必死で支える家族。そのひとつの命を救うため、医療従事者と研究者たちが立ち上がる。3500万以上の塩基配列(エクソームに限定)をひたすら読んでいく科学者たち。全員が「必ずできる」「必ずやる」と信じて、DNA解析技術を医療に応用し、勝ち取った勝利だったので、奇跡ではなく信念の感動実話と呼ぶほうが正確かもしれない。それにしても信念と勇気をもった科学者・研究者は本当にカッコいい。
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大学付属獣医臨床センターで診察する獣医師として、実際の診療に役立つ研究をしたいと日々思っている。この本は、世界初のパーソナルゲノム医療が実現するまでを追ったドキュメンタリーであり、一つの命を救うために懸命に努力する研究チームの熱い思いを少しでも感じてみてほしい。
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ふむ
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難病の少年を救う最後の手段として、ゲノム解析だった。食事をすると、腸に瘻孔が出来るという難病。原因がわからずに振り回される医師や家族。未来のことと思われていたパーソナル医療が、すでに実用化されつつあることに驚かされる。一方でこの本は、科学と医療の進歩という話だけでない。少年の母親が強烈すぎて、読んでいて辛い部分がある。医師や看護師の説明不足に憤る気持ちがわからないわけじゃないけれど、自分でネットで調べたことをどんどん医師に投げかける。それでいて、信仰心が篤く、やたらと祈っている。医療が医師だけのものじゃないと世界が変化してきている背景もあるんだろうと考えさせられた。
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ゲノム医療実現への第一歩を踏み出した貴重な記録。