教えから学びへ; 教育にとって一番大切なこと (河出新書)

著者 :
  • 河出書房新社
4.41
  • (26)
  • (15)
  • (3)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 308
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309631363

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • これまで出会ったどの教育本よりも分かりやすく、また深さに感動。親の願いも子どもの思いもまるごと吸い上げて、学校の未来を描き切る。汐見稔幸さんという方は教職や研究職にとどまらず、人の生き方を説く賢者だ。

    ギリシア、ドイツ哲学や古事成語、果ては東西宗教に至るまで、見識の広さに加えて引用がわかりやすい。蛍光マーカーだらけの重要文が早口でゆったりと語られる。何かを掴みとったような気になってしまうが、咀嚼できるまで何度も何度も読み返したい。

    抜粋したくても一冊まるごと素敵。その中から敢えて下の一文には、なんだか涙さえ浮かんだ。


    ──(語り婆のように絵本の読み聞かせでは)子どもたちのために心を込めて語り、子ども同士の心を作品の世界の中で結ばせ、少し騙して、最後に現実に戻ってこさせる─


    なんて愛情深いぴったりな表現なんだろう。大人が真剣になって、少し騙す。子どもに対しムキになって理屈を並べなくてたって良いのだ。。ありがとう汐見先生。

    我が家の語り部はアンパンマンからドラえもんになった。ここから手塚治虫にいって、とは親のエゴ。悲しいかなYouTubeに置き換わりつつあるが、子どもが寝る前だけはいつまでも読み語りしたい。語りは子どもとのどつきあいだ。
    朗読の練習にも熱がこもる。Audibleナレーターになりたいわ。

    学校に行かない子は自己選択児。学校教育は一本道ではない。マサチューセッツ工科大には音楽の授業もある。文理合一。
    lessonからstudyへ。

    子どもの自発的な学びや喜びを、大人はそっと添え手するだけでいい。理想論ではなく方法までイメージできるよう丁寧に説明してくれる。文句なしに名著。ブクログにも感謝。

    車とトイレにも1冊ずつ買っとこ。

  • これは面白かった!
    学びの総論という感じ。

    子どもも大人も学ぶ。
    どう教えるか、ではなく、子どもが学んでいる事実があるかどうか。

    学びとは自分をつくって、なりたい自分になって
    自分もみんなも幸せになっていくことなのだなと
    改めて確認できた。
    やっぱり最上位の目的にいつも迎えているかどうか。
    そのための手段はなんでもよいということ。

    そして、汐見さんのいいなと思うところは
    幸せとか学びという抽象語を具体で語っていること。
    例えば幸せはこう考えてる。
    『人間が心の深いところで求めているのは、「生きてるっていいな」という感覚です。それが幸せであり喜びだと私は考えています。』

    生きることへのよろこびが幸せにつながるということ。

  • 良書でした。子どもの頃、「なんで勉強するんだろう」と考えたことがある人は多くいると思います。この本は、それに真理に近いことが記されていると思います。
    教育は歴史的な背景からも、今までは『どう教えるか』ということが重要視されていたようです。
    ですが、本当に大切なのは子どもたちが『どう学んでいくか』『どう学びを育てるか』ということだと。それに重点を置かなくてはならない。
    本書の切り口で、初めからぐっと掴まれました。

    堅苦しい題名なのに、一つ一つ章にわかれており、そこから短い章にさらに分かれているので、少しずつ読みやすく、わかりやすく読むことができます。
    学生さんでも読んで損はないと思います。自分がどのように学ばされるのか?どう学んでいけばいいのか?そんなことのヒントになりそうです(^O^)

    『学び』とは何か?ということから、「教養」という大切な学びや読書の大切さなど、この本の議題から、私はまさにたくさんのことを学ぶことができました。

    特にデジタル化が進む中で、大切な教育の部分というのをしっかりと述べられており、どれも納得できるものでした。

    中には早期(幼児)からの教育はどんな効果があるのか、子どもたちへの学びを支えるためにどうしたらいいか?そんなことを筆者と一緒に考えていくので、子どもと関わる環境にある方は特に、ためになると思います。

    2021年に発行された最近のものなので、より心強い一冊かと思いました。

  • 教えから学びへ
    教育にとって一番大切なこと
    著:汐見 稔幸
    紙版
    河出新書 035

    行き詰まっている教育をどう改革するか、その方法が、「教え」から「学び」へです

    教師が教えるのではなく、生徒が自らが学ぶ これが本書のメッセージです

    気になったのは以下です

    ■なぜ、いま教育がいきづまっているのか

    ・「学び」は学校でのみ身につけられるようなものではなく、一生続く営みです
    ・科学技術は、人間の生活を改善するものではなかったのか
    ・自然などの環境を考慮しなかった日本の科学技術、それを支えてきた人材、そして、そのような人たちを育ててきた理科教育には、根本において何か欠けていたのではなにかと考え始めました
    ・19世紀になると、学問はさらに専門分化が進みます
     科学は、科に分かれた学問という意味の言葉です
     分化したものは、再び統合していくことが必要です
     しかし、近代の学問においては、統合が忘れ去られていました

    ■「教え」の教育から「学び」の教育へ

    ・教師が子どもたちに啓蒙する教育の時代は終わった
    ・時代の変化が速くなればなるほど、世代による感覚のズレが大きくなり、年長者の経験は古く役に立たないものになっていきます
    ・優秀な職員には次のような特徴があることがわかりました
     文化の違いがあっても、それを踏まえた上で相手の真意を聞くことができる
     対立している人を含めて、尊厳をもって他者を前向きに励ますことができる
    ・そして、人間関係において、お互いの影響力やそれぞれの政治的立場を素早く理解でき、リーガルリテラシが高い
    ・3つのR(読む、書く、計算力)と、4つのC(批判的思考力、コミュニケーション、協調性、創造性)が必要である
    ・当事者を大事にするという考え方は、日本でも独自に生まれています
    ・科学というのは1つのものの考え方にすぎない
    ・ある仮説をもってしか、ものは見えない
    ・発想はグローバルに世界規模で考え、行動はローカルに住んでいる地域や身の回りでできるところから実践していく グローカルという
    ・ダイバーシティーとは、多様であることこそが、豊かである、という考え方です
    ・インクルージョンとは、多様性を尊重し合い、共に成長することを意味します

    ■「学び」と「教養」

    ・わかるの3つのレベル
     ①言葉・名前を知る
     ②その対象の属性を知る、属性とは備わっている性質や特徴のことです
     ③現象の背景にある法則に気づく
    ・能力とは、IQ,語彙、言語処理速度、学ぶ能力、成し遂げる能力、可能性を最大に発揮する能力です
    ・3つの教養論
     ①教養とは、分化した知識をつなげて、つながりのある知識にすること
     ②教養とは、感心の発展的システムをもっていること、いろんなものに関心をもちアンテナを立てる
     ③教養とは、全体との関係で自分や自分の知識を位置づけること 知識を何度も反芻し、消化して、他の知識と合体していくこと
    ・教育というのは、学ぶ意思のある人が師と仰ぐ人を見つけ、「どうぞ教えてください」とお願いするところから始まります
    ・「学び」が苦痛なものになってしまったのは、本来の学びのあり方から逸脱した強制的なシステムができたことが原因です

    ■「学び」は体験から始まる

    ・対話とは、自分の考えを言葉にし、相手の考えを言葉で聞くことで、お互いの違いや共通するもの、どこまで一致しているのかを共に探すやり取りです
     冷静な意見表明、論点整理など高度な知性が必要です
    ・読書は、とにかくたくさん読めばいいというものでも、知識や情報を抜き取るためにするものでもありません
    ・読書によって鍛えられるのは、さまざまな思考の力です
    ・相手を深く理解するためには、たとえ自分の土俵や発想の仕方と相手のそれらが全く違うとしても、その人の語りの世界にまず入ることが必要です
    ・自分の土俵にたったままで、相手の土俵を理解するのは不可能です。本当に理解しようと思うなら、その人の土俵にこちらが身を寄せる必要があります
    ・そして、その上で、もう一度自分の土俵に戻る
    ・相手の土俵と自分の土俵を往来するうちに、だんだんと自分の土俵が大きくなっていきます
    ・相手から学び、同時に自分を失わない
    ・相手から学び、同時に自分が豊かに大きくなっていく、それが「信じて疑う」という読み方です
    ・人間の促成栽培はできません、早く熟せば、早く腐る

    ■「学び」を支えるための教育

    ・自分のものとなった知識を実際に使うためには、新しいスキルを身につけることも必要です
    ・自分が何をわかっていて、何がわからないのか、をはっきりさせていくことも必要です
    ・人が編み出したメソッドをそのまま受け入れても自分自身のスキルは高まりません。必要なメソッドは自分で考えるのが一番です
    ・大事なのは自分なりの計画を持つことです
    ・子どもが学ぶということは、それを知ろうと夢中になることです、そのようなときに学ぶは深まります
    ・熱中し没頭する時間をつくる

    ■「学び」は続くよ、どこまでも

    ・全ては仮説にすぎない
    ・学びが起こるきっかけは、問いです

    目次
    はじめに
    第1章 なぜ、いま教育がいきづまっているのか
    第2章 「教え」の教育から「学び」の教育へ
    第3章 「学び」と「教養」
    第4章 「学び」は体験から始まる
    第5章 「学び」を支えるための教育
    第6章 「学び」は続くよ、どこまでも
    参考文献一覧

    ISBN:9784309631363
    出版社:河出書房新社
    判型:新書
    ページ数:256ページ
    定価:890円(本体)
    発売日:2021年07月30日初版発行
    発売日:2022年01月30日2刷発行

  • 教育関係でぶっちぎりに面白く素晴らしい本だった。

    まず、自己研鑽に対して日頃大切にしている成長マインドセットについて、精錬された文章で言語化されている一面に驚き、勇気をもらえる。まさか、教育分野の知見を深めようと思って読み始めた本で、自己啓発の面で感銘を受けるとは。だから本との出会いはやめられない。定期的に繰り返し読み込むべき本だと思う。

    学びとは、脳の中に情報処理の回路が新しくできること。教育とは、子供たちが没頭する、熱中する時間を作ること。

    子供に教え、子供から学ぶ、そんな心構えを大切にしながら、実践と本書の反芻を繰り返して、子供の教育と自分の成長を豊かなものにしていきたいと思う。

  • これからの時代の「教育」に必要なことは何かが書かれている。
    知識を教えることに重点が置かれており、なぜ学ぶのかという問いと向き合うことが疎かにされていた。何のために学ぶのか、どう生きるのかを問いつつづけていくことが学ぶ目的であり、教育の役割とは知識をただ入れるのではなく、学ぶ力を育てていくことにある。

    学びとは、実際の体験で感じたことをきっかけに疑問を持つ、もっと知りたいと感じることから始まる。
    子どもの疑問や興味を大切にし、さまざまな体験を通して熱中する、感動する、といった経験をさせることが重要だと感じた。
    ただ上べの知識を得るのではなく、自らの経験を通してその意味をmeaningからsenseへと昇華させることで学びは深まっていく。既存の学校教育ではmeaningを詰め込むことにエネルギーが割かれていて本質的な学びになっていないと考える。
    教育に携わる方にも本書で学び、これからの時代の問題解決に必要な力を育むためには、どのような教育が求められているのかを見直して欲しいと感じた。

    MIT等で音楽学科を重視しているという話は初めて知り興味深く、もう少し調べて見たい。

    最後の「子どもって面白いな」と思い続けていることが教師や親の役目という言葉を心に留めて、子どもと向き合っていきたい。

  • 新書なので手軽に読めると思ったが、読んでみるととても内容が濃く、これからの教育がどうあるべきか根本から問い直そうとしている良書。
    効率的に早く知識だけを詰め込むことは、その子の世界感が育たない。そうではなく、社会の定義を教えそこからその子の意味、世界観を作っていくべきという考えはとても納得した。また、学びは子供の体験、日常から発せられ問いから始まる。ということは、学校の中だけの授業では子供をより良い人生に導くためや、主体性、彼らの世界観を育むための教育とはならない。そうではなく、学校と地域の連携を密にし課外授業の割合を増やしたり、著者の言っている学校を午前で切り上げて午後からは自分の興味のあるものをやっていくことが必要。

  • こんな先生には出会ったことがない

    先生方はこの本を読んでいらっしゃるんだろうか…

  • 教育は間違いなく、あるべき方向に戻ろうとしてる。あとは、この気づきにハード面が追いつくかどうかじゃないかと思う。汐見先生の言葉は、いつもあたたかいなぁ。

  • この本は、これからの教育のあり方に、学びの本質から読者と考えていく本だ。
    人に教えるとはどういうことか考えていた私は、その方法にばかり考えていた。
    しかし学びの原動力は「楽しい」「面白い」「不思議」と思うことにあり、その環境を作ることが最も必要なことであると気付かされた。
    そう、「どのように教えなければならない」→「どうしたら学びを得られる?」ということを考えると、今まで思いつかなかった面白いアイデアが浮かんでくるかもしれない。
    子どもたちが熱中できる学びの場とは、何だろうか。探求し続けたい。

全21件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1947年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。東京大学大学院教授を経て、現在白梅学園大学学長。東京大学名誉教授。こども環境学会副会長。専門は教育人間学。臨床育児・保育研究会を主宰。著書に『これがボクらの新・子どもの遊び論だ』(加用文男、加藤繁美氏と共著、童心社、2001年)、『「教育」からの脱皮』(ひとなる書房、2000年)、『はじめて出会う育児の百科』(小学館、2003年)、『世界の幼児教育・保育改革と学力』(共編著、明石書店、2008年)など。

「2009年 『子どもの遊び・自立と公共空間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

汐見稔幸の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
瀧本 哲史
リンダ グラット...
宇佐見りん
伊坂 幸太郎
アンデシュ・ハン...
出口 治明
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×