イスラム2.0: SNSが変えた1400年の宗教観 (河出新書)

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  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309631141

感想・レビュー・書評

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  • イスラム2.0
    SNSが変えた1400年の宗教観
    著:飯山 陽
    紙版
    河出新書

    キリスト教の宗教改革が、グーテンベルクの活版印刷の聖書の普及がきっかけだったように、イスラム教の宗教改革は、インターネットの普及による情報革命に端を発する
    原理主義とは、イスラム教の原点、コーランとハディースに記載されていることを、忠実に実行にうつすことを意味する
    そして、イスラムの教えは、最後の預言者ムハマンドを通じて神の言葉として決して変更をすることを許さない教義である。そう610年にイスラム教が成立してより今日まで
    そのために、ムスリムは、周りと同化することはない。

    気になったのは、以下です。

    イスラム教徒はイスラム法によって統治される秩序の確立を目指し、彼らが正義だと信じるジハードを実行しますが、同じ価値を共有しない私たちにとっては、それはテロ以外の何物でもありません。
    彼らの正義の基準は神であり、神の下した啓示です

    インタネットの普及によって、イスラム教徒は啓示に直接アクセスできるようになり、徐々にこの共生の知恵が神の目から見ると過ちかもしれないという可能性に気づき始めました。
    コーラン、第4章144節には、「あなたがた信仰するものたちは、不信仰者を友としてはならない」と明示されています

    ジハード主義者からすれば、日本人はジハードの対象である「殺すべき敵」であり、日本は居心地のいい安全地帯であり、日本のパスポートは間違いなく使い勝手がいいのです。

    コーランは、第114章で1冊の本に収まる分量ですが、ハディースは、数十万あるとも言われるほどの膨大な数が存在するからです
    イスラム教の啓示テキストがあまりにも多いため、近代以前の一般信徒にとってイスラム法の基本を押さえることは能力的にも、また、物理的にも、まったく不可能なことでした

    インターネットは、イスラム教発祥以来、1400年間ほぼ変わらなかった、知的状況を激変させ、イスラム世界に革命的ともいえる変化を引き起こしました。
    イスラム2.0時代の到来です。

    ジハードの根拠は、コーラン第2章116節にある「あなたがたには戦争が義務付けられた」です。神はイスラム教徒に戦争を命じているのです
    異教徒には、イスラム教に改宗するか、ジズヤと呼ばれる人頭税を収めるか、それとも殺害されるかの3つしか選択肢がないのです
    イスラム支配下の異教徒にはズィンミー制というのがあり、イスラム教徒の絶対的優位に対する異教徒の劣位です

    コーランは神の言葉であり、コーランに示された啓示の正しさは、普遍的であり、その価値はどんなに時代がかわっても変わることはないと信じられています
    イスラム教徒にとっては、啓示は時代遅れという価値は全く受け入れられないのです

    ヨーロッパではイスラム教徒も数世代たてば、同化するという言葉がウソであったことに気が付きはじめています

    異教徒の女性は、議論の余地なく、売春婦とみなしています
    イスラム法では、ジハードで敵から奪った女は戦利品として戦士たちで山分けされ、自分の所有となった女は性奴隷としてよいとされています。
    同じイスラムでも、99%以上のエジブト人女性がセクハラ被害にあったことがあると回答しています。

    イスラム教徒は多産です。それは、コーランが推奨しているからです。

    学校イスラム化はトロイの木馬計画と呼ばれています。学校のイスラム化です
    イギリスを各国では、イスラム教徒が集住することで治安が悪化し、警察や当局者ですら立ち入ることができない、ノー・ゴー・ゾーンが出現している

    LGBT,同性愛者はイスラムでは違法です、姦通と同様、石打ち刑を設けているところがあります。

    イスラム教の棄教は、死刑。アフガニスタン、ブルネイ、モーリタニア、カタール、サウジアラビア、スーダン、UAE,イエメンの8カ国です

    棄教者のなかで特に深刻なのは、無神論者です。

    目次
    はじめに
    第1章 イスラム2.0時代の到来
    第2章 ヨーロッパのイスラム化とリベラル・ジハード
    第3章 インドネシアにみるイスラム教への「覚醒」
    第4章 イスラム・ポピュリズム
    第5章 イスラム教の「宗教改革」
    第6章 もしも世界がイスラム教に征服されたら…
    第7章 イスラム教徒と共生するために
    あとがき
    イスラム事件一覧
    参考文献

    ISBN:9784309631141
    出版社:河出書房新社
    判型:新書
    ページ数:272ページ
    定価:880円(本体)
    発売日:2019年11月30日初版発行
    発売日:2019年12月20日第2刷発行

  • 衝撃の内容。私たちは人種や宗教で人を差別してはいけない、と言われすぎて思考停止で何もかも受け入れてしまっている現状があると思う。共生できるか否か判断し、またどのように共生するか模索するにはまずは知ることが第一歩。その第一歩として良書だった。

  • カリフ制とは、スンニ派イスラム法学においては、唯一のカリフがイスラム共同体を統治しなければならないという制度。
    イスラム教徒はイスラム法のみに従わないといけない。主権は神に存するとされ、人間には立法も法の廃止、改正も認められない。

  • アジアに住んで、イスラミストのテロの恐怖を実感している。だが、自分はグローバリストだからイスラム教徒の友人は当たり前に身近に存在するし、彼らとも分かり合えると思ってきた。飯山陽の説明を読んでいると妙に納得する。お花畑理論ではない現実が突きつけられる。解決策がないと感じる。

  • どんなに叩きのめされても信仰を第一とし続けるイスラム教徒と、戦前は天皇を神と奉じて特攻だなんだとやっていたのに、負けた瞬間にさっさと手のひらを返す日本人。見方によってはよほどイスラム教徒の方が誠実で芯があって徳のある人々にみえる。肯定はできないけれど、外部からみるとエイリアンだけど内部からみると至極まっとうに見えるのはよくあることではないのかな。一つ思ったのは、神の前では富めるものも貧者も平等っていうのは本当なのだろうか

  • たいへんショッキングな内容。

    つい最近、十字軍物語も読了。それを読んでいた限りでは、イスラム教はむしろ被害者であったような感もあり、これまで、イスラム教=テロではなく、本当は平和な宗教なのだという言説をなんとなく信じていたんだが、誤解に過ぎないということを思い知らされました。

    ヨーロッパの移民問題も、中国のウィグル自治区問題も、本質はイスラム問題でないのかと思えてきた。それにもかかわらずメディアではイスラム教についてあまり触れていない事にも納得せざるを得ない。

    ただ、ここでイスラム教について思った事をそのまま書いてしまうと、喉を掻き切られても仕方ない・・・となってしまうので、このへんで止めておく。

    2020/7/9

  • うーん。これは凄いというか怖いというか、とんでも無いことになっているな。しかし本当に凄い宗教だ。どう世界と折り合いをつけていくんだろうか。それとも益々原理化して対立が深まっていくのだろうか。インドネシアなんか世界4位くらいの人口だったから国力つけて大国になった時にどう世界と対峙するんだろう。人口は国力だからこの宗教の戦略も凄いよな。でも根本的には対立は避けられないから世界はすごい問題を内に抱えているんだなぁ。悩ましい。悩ましいことだらけだ。世界は。

  • 読了。
    本書はある意味、ここ暫くで一番の衝撃だったかもしれない。今日のイスラム世界で起こっている事を理解しようと、様々な書籍にあたったものの、いまいち釈然としなかったのが正直なところ。今回、本書を読んで色々なことがストンと腹落ちした一方、自分の頭がお花畑であったことを自覚させられ、戦慄した。実はこの1400年間、イスラム世界の為政者は勿論、宗教家でさえも、何とか世俗を折り合いをつけようと努力してきたのだ。それがインターネットの普及で、誰もが解釈や意訳の余地が許されない「神の言葉」そのものにアクセス出来るようになってしまった。加えて、貧困や差別、絶望が後押しをし、クルアーンを「字義通り」実践しているISの方が、イスラム法学者の穏健な解釈よりも、教義に忠実では無いか?と考える者が急増している現実。しかもISは一般にイメージされる偏狭な宗教的過激派集団なのではなく「イデオロギー」なので、空爆などで排除することはテクニカルに不可能だということになる。ちょっと怖すぎたので、アンチの主張も探してみよう…。

  • カロリン・エムケの本を読んでもやもやもやもやしていたので積読から真っ先に消化。アンサー本かと思うような内容で読んですっきりした。読みやすくて面白いのでサクサク読める。
    実際に起こった事件や実際に行われた調査に基づいてイスラム教の教義・価値観・世界観について丁寧に分かりやすく解説してある。そして、インターネットによってもたらされた新たなムスリムの宗教観の変化について書かれる。最後の方のムスリムとの付き合い方編はかなり実践的でいいなと思う。私も何も知らずムスリムの方との付き合いで一回失敗したことがある。

    「イスラム教徒にとってはイスラム教こそが普遍真理ですから、近代的価値観がイスラム教よりも優れた素晴らしいものだと考える発想がそもそもありません」
    「西洋の価値はイスラム教より優れているので西洋に定住すれば必ず啓蒙されるという考えは、イスラム教に対する無知に立脚しており、それこそイスラム教徒に対する差別です」
    本当~に、その通りだ!
    ムハンマド風刺画事件にしろ、融和政策への反発にしろ、世界観が根底から違うということは、もういい加減明らかになってきているよなと思う。
    あくまで「多様性など、本当はないほうがずっとラク」だけど、それを踏まえて「実際問題として多様性が不可避であるなら、できるだけトラブルを避け、互いの不快を軽減する努力をするより他に道はありません」という飯山さんの姿勢は非常に共感できる。共生に都合の悪い所こそを、きりきりするまで見つめて道を探っていかないといけない。

    イスラム2.0時代の「自分を取り巻く全てが神の命令に反する罪深いものであるかのように思えてくる」アイデンティティ危機と言う話は、私も子供の頃キリスト教原理主義系の教育を受けて育ったのでとても理解できるところがあった。
    宗教と乖離した学校教育や現代社会の生活で、いつも神を、みんなを裏切っているという罪悪感、ストレス。何を選ぶのか、常に試されているという感覚。どちらを選んでも常に何かを裏切る。
    その結果として若者の間で「ヒジュラ」が流行しているというのは知らなかったしすごく面白い話だった。インスタやらyoutubeでヒジュラ・セレブなるものが誕生しているの、すごい!でも流行るの、分かる。皆「正しい」価値観と自分の生活のバランスを取る方法を模索しているんだな。
    その中で「無神論ブーム」もあるというのがまた面白い。これはヒジュラと逆へ行って、生活寄りでバランスを取ろうとしているわけですね。アズハルも振り回されるくらい、すごい速さでイスラームも変わっていっている、とてつもない時代に生きているんだなあ。

  • イスラムにの教義等の説明側の著書の方がわかりやすかろう。
    ネットの発展により、これまでイスラム学者を通してしか触れることのできなかった、生の「神の言葉」に誰でも触れることができるようになって、本来の非寛容を実践しようとする世界。

    イスラムの目的は、イスラム教の元世界を征服すること。

    さらに征服された世界を描き、多様化という綺麗事のもと、イスラムと触れずにいられない世界で、余計なトラブルを起こさない方法も書いている。
    判るのだが、結局、イスラムの拡大を防ぐことが、現実の世界では不可能ということかと嘆息する。

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著者プロフィール

飯山陽(いいやま・あかり)
1976年生まれ。東京都出身。イスラム思想研究者。アラビア語通訳。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。著書に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『イスラム2.0』(河出新書)、『イスラム教再考』(扶桑社新書)、『イスラームの論理と倫理』(共著、晶文社)がある。

「2021年 『エジプトの空の下 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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