ニーチェ ---ニヒリズムを生きる (河出ブックス)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309624525

作品紹介・あらすじ

「誰の役にも立たず、ほとんどの人を絶望させ、苛立たせ、(略)あらゆる『価値あるもの』をなぎ倒し…近・現代人とまさに正反対の価値観を高らかに歌い上げる」ニーチェへ-「明るいニヒリズム」の哲学者がニヒリズムの始祖ニーチェの哲学に真っ向から立ち向かいながら、哲学のおそろしさと歓び、生の無意味と人間の醜さの彼方に「ヤー(然り)!」を見出すニーチェ論の決定版。真に「過酷なニーチェ」がここに甦る。

感想・レビュー・書評

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  • ニーチェの思想を「真摯に」解説している。

    特にニーチェの心の叫び(?)のように、キリスト教を中心とした既存の価値への怒りという背景/文脈やツァラトゥストラが超人(を志向/候補)でありつつ、人間的に揺れ動く、超人たりえない姿を描く。

    別書である明るいニヒリズムと同様に、どこまでも価値や意味の無さと死ぬということは消えるという思想が徹底されている。
    その考えは一定は同意しつつ(せざる得ない)、観念論に依るその理路自体が我執の源泉になっているようにもおもう。

    私は、身体性を大事にして、関係性や物語のなかに生きる(個に執着しない)こと、そのための方法を考えたい

  • 後半はよく分からなかったが、僕の抱えていた世のニーチェ論への疑心を解き明かしてくれたような本だった。やっぱり絶望しかないよな!なお、この本を読んで『ニーチェを学んだ』などとはとうてい言えない。「中島義道を学んだ」と言え。

  • 「超人のように振る舞うとはどういうことか?」という点を突き詰めていきつつ、ニーチェ研究者や「ニーチェ系」な人物をボロクソに批判する中島義道らしい「青さ」溢れる一冊。

    中島義道というとカントが専門のイメージなのだけど、神、理性、超人、そして絶望という4つの概念に対して文字通り「切り込んでいく」ところが期待通りのおもしろさなのだが、読み進めている意識のどこかで常に「ルサンチマン」という小さなしこりが著者と読者の両者が何となく気になりつつ、という点がおもしろい。

    文中にも出てくるネーゲル『コウモリであるということはどういうことか』だが、このコウモリを超人(を目指した「俺たちの」ニーチェ)にしてみた、というノリなのかも、とも思える。

  • 桐島、部活辞めるってよ

  • 著者は、ニーチェの思想について解説し、無毒化してしまう「哲学研究者」たちを(ニーチェとともに)批判します。そして、ニーチェがそうした「哲学研究者」たちとそれを求める大衆への深い絶望を抱いていたことに触れています。

    その一方で著者は、ニーチェのニヒリズムに対する批判も提出しています。ニーチェは、キリスト教とその世俗化によって人びとが絶望から目を背けていることを批判していました。そのうえで、そのような「受動的ニヒリズム」を徹底することで、「能動的ニヒリズム」へと抜け出ようとします。しかし、ニヒリズムに徹したからといって、何らかの利益や展望がもたらされるわけではありません。そこにあるのは「永遠回帰」、すなわち無意味なものがかぎりなくくり返されるという、過酷な真実でしかありません。それにも関わらずニーチェのことばに、とりわけ『ツァラトゥストラ』の「駱駝」から「獅子」を経て「子ども」へと至るという三段階説に、ニヒリズムの徹底によって何らかの救いがもたらされるという幻想を抱いてしまう「人間ニーチェ」の声が響いていると、著者は指摘します。

  • ニーチェは、10年ほど昔に格好つけて「ツァラトゥストラかく語りき」に挑戦してみたのですがさっぱり理解できず、全てのページで「お前は馬鹿」と言われている気がして、10ページほどで心が折れたことがありました。

    時が経ち、最近本屋で見かけた「超訳 ニーチェの言葉」をパラパラとめくったときにおぼえたのは強い違和感。さっぱり理解できないながらもたった10ページで感じた狂人じみた熱がまったく骨抜きにされ、ビジネスマン向けの新書に載っているような聞こえのよい言葉ばかりがそこにありました。
    「こんなはずはない。でも、原典に当たっても理解できないんだろうなぁ。何か良い参考書はないか。」という理由で買ったのがこの本。

    結局、この人をニヒリズムに至らせたのは、キリスト教に対する「騙された!」という強烈な怒りだったんだな。神は自らに似せて人を作ったのでもなければ、地球は宇宙の中心でもない。力無き正しい者が死後に天国に行き、悪い者は地獄に落ちるなど、正面切って戦えない弱者のねじくれた復讐じゃないか。そういう考えが根っこあると思えば、何となく理解できそうな気がしてきた。

    他にもいろいろ思ったことは有るけど、「老人と病人は死ね」という趣旨の発言はじめ毒が有りすぎるので省略。著者が冒頭の一文でこうも言っているし。
    「ニーチェの言説は、ほとんどの者にはまったく役に立たない。いや、誤解しない限り、ただただ有害である。」

    ニーチェ本人の思想に対してあれこれ言うのは、何か原典を1冊でも読んでからにしよう。どう解説してもらったところで、結局これは伝聞なわけだから。

  • 永遠回帰っていうのが最後の方で説明されてるんだけど、それが難しく理解しづらいので、本全体がぼやけた印象に。
    原作を読んでからまた挑戦したいな。

    能動的ニヒリズムと受動的ニヒリズムは、感覚的にはわかる気がした。

  • この瞬間を突き詰めると無となる。けれども、無を無と認識できるならばそれは無ではない。

  • 偏屈でペシミスト、もしくはうるさい頑固じじい。この辺が作者のキャラだとして、その軸に沿ってニーチェを曲解しているきらいがある。ニーチェ入門書としてはすらすら入ってくると読み進めているうちに、それは自分が著作を相当数読了しているこの作者のロジックに慣れ親しんでいるからだと気付く。しまいにはノストラダムスの大予言をご都合解釈する五島勉がごとく思えてくる。恐怖の大魔王はやはり振ってはこなかったのだから、このニーチェ講釈もそれくらいのレベルで捉えておいた方が良さそうだ。

  • 13/03/07。中島義道さんの著書は久しぶり。斎藤環さんの『生きのびるためのラカン入門』の文庫版の解説が中島さんだった。で、懐かしさから(笑)親近感がむくむくよみがえりgetしてしまった。

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著者プロフィール

1946年生まれ. 東京大学法学部卒. 同大学院人文科学研究科修士課程修了. ウィーン大学基礎総合学部修了(哲学博士). 電気通信大学教授を経て, 現在は哲学塾主宰. 著書に, 『時間を哲学する──過去はどこへ行ったのか』(講談社現代新書),『哲学の教科書』(講談社学術文庫), 『時間論』(ちくま学芸文庫), 『死を哲学する』(岩波書店), 『過酷なるニーチェ』(河出文庫), 『生き生きした過去──大森荘蔵の時間論, その批判的解説』(河出書房新社), 『不在の哲学』(ちくま学芸文庫)『時間と死──不在と無のあいだで』(ぷねうま舎), 『明るく死ぬための哲学』(文藝春秋), 『晩年のカント』(講談社), 『てってい的にキルケゴール その一 絶望ってなんだ』, 『てってい的にキルケゴール その二 私が私であることの深淵に絶望』(ぷねうま舎)など.

「2023年 『その3 本気で、つまずくということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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