あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた (河出文庫 ア 11-1)
- 河出書房新社 (2020年12月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309467252
感想・レビュー・書評
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日本では10年くらい前に「もやしもん」という漫画が流行し、わたしたちの体には無数の微生物が存在しするという細菌叢という概念の普及に大きく貢献しました。皮膚には常在菌がいて、普段は外界の細菌を排除している一方で、免疫力低下の際には猛威を振るうという日和見感染という言葉も知られています。しかし、本書のタイトルのように「9割が細菌」といわれたら顔をしかめる人も多いでしょう。この9割というのはもちろん重量ではなく細胞数ということなのでしょうが。
本書を読めば、多くの生物が微生物と共生関係にあり、場合によっては糞を子に食べさせることで微生物環境を受け渡すこともあるようです。人間も例外ではなく、妊娠時に特定の菌が膣に集合し、産道を通る際に引き継がれたり、母乳から引き継いだりと、その無意識下で行われるシステムには長い年月をかけた共進化の関係性がみてとれます。欧米的な食習慣、抗生物質の使用はその摂理と逆行しており、リスクとメリットを天秤にかけながら使用すべきだ、と著者はいいます。
さて、微生物が脳に与える影響を考えたことがあるでしょうか?最近では腸ー脳連関(gut-brain axis)という言葉が出てきていますが、その一端を担っているのが腸内微生物。彼らは例えば好みの食べ物が腸へやってきたとき、それを代謝して宿主であるわたしたちに多幸感を感じさせるような物質を放出します。すると、わたしたちはまたその食物=微生物の餌を食べてしまう。つまり、わたしたちの好みが操られているのです。
もちろん、それだけではなく、様々な要因があるでしょうが、ある種精神に影響を与えるている証拠が上がってきつつあり、今後の研究に期待が持たれますが、わたしのような性別違和というのはどうか?とふと疑問に思いました。これまで遺伝子検査で、影響のある遺伝子群はあるが、これがあれば性別違和が現れるという責任遺伝子は発見されていません。むしろ性というのはスペクトラムだということになっています。もし、微生物がわたしたちの性の感覚にまで影響しているということがあれば……それを知るのは怖いような気もしますね。
本書の結論はある種の「健康増進指南」ではあるのですが、それらはデータに裏付けられており、議論が分かれる点は分けて明示してあるところが好感を持てます。また、流れるような文章、構成、きれいな読みやすい訳に著者と訳者の力量を感じる素晴らしい一冊になっています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本は、「人間はほぼ細菌で出来ている❕」という衝撃の内容です。
細菌は、人間の体調だけでなく精神状態や脳にも影響を与えるらしいです。
恐るべし!細菌!!
「便の移植の勧め❕」など、なかなか濃い内容です(笑)
ぜひぜひ読んでみてください -
今まで全く意識してこなかった体内の細菌や微生物の役割についてまとめられていました
細菌というとなんかイメージ悪い感じですが、全てが悪いわけではなくて、いいやつと悪いやつがいて、体内で縄張り争いをしている、ということでした
縄張り争いには、日頃の食生活が絡んでいることがわかりました。日頃食しているあらゆる食べ物は、全て腸内で栄養としてダイレクトに取り込んでいるわけではなくて、細菌や微生物が餌として取り込んでエネルギーに変えてくれたり、血中へ送り込む量を調整してくれていたり、さまざまな役割をこなして貢献してくれていることがわかりました
20世紀後半から、先進国を中心に増えて来ている糖尿病やアレルギー、精神疾患などについても体内の細菌や微生物の組成の変化が関与している可能性があるという話はとても興味深く、信憑性の高い内容で勉強になりました
出産時に、母親から無菌の赤ちゃんに対して、生きるための細菌の「苗」を託す話、それを母乳で育てていく話はとても神秘的で母親の偉大さを痛感しました。
体内の細菌、微生物を意識する機会はヨーグルトやヤクルトくらいしか無かった自分がいかに無知だったか、とても痛感させられる内容でした、
体内の細菌や微生物の役割、効果については発展途上の学問のようで、ヒトゲノムの解析技術が発達したことで急激に研究が進んでいる分野のようですので、今後に期待したいと思いました -
もっと早く読みたかった。必読書認定!
腸内細菌の組成、抗生物質のこと、食物繊維のこと、帝王切開と粉ミルク。
目から鱗落ちた。食生活見直そう。 -
ツイッターTLで引用をみかけて興味を覚えたのでさっそく手に入れてみた。
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著者 アランナ・コリン、イギリスのサイエンスライター
熱帯雨林にてコウモリを研究中ダニに噛まれ病原菌性の病に。治療のために用いた抗生物質により生じた身体の異常は腸内細菌の変化ではないかという思いと、研究観察から細菌と人間との関係性を追求する。
本書英語名は「10%HUMAN」、そのタイトル通り人体を成す90%が1000兆の微生物。微生物と人は共に進化してきたが、人が腸内細菌を見捨て、肥満や糖尿病を代表に21世紀病が蔓延、普通化してしまっていることに警鐘を鳴らす。
・虫垂は、人体が用意した微生物の隠れ家
・ニキビ、肥満、うつ病、セリアック病、過敏性腸症候群、虫垂炎、癌、、、
・糞便の重量の75%は細菌
・1.5キロ分の細菌が常にいる
・約4000種
・ニワムシクイ(渡り鳥)
6500キロの渡りに出る前に体重を増やす(人にして63キロ→140キロ相当に)。越冬地に着いたことには元の体重に戻っている。しかし、野生のニワムシクイが渡りに備へ太る頃にカゴの中のニワムシクイも肥満体型となり、渡りが終わる時期に元の体重へと戻る。
→摂取したカロリー以上を蓄え、カロリー以上の燃焼をさせることが自然と出来る。「カロリーイン、カロリーアウト法則があてはまらない」
・親友が肥満になるとその人も肥満リスクが171%に跳ね上がる
・過食と運動不足だけで肥満になるわけではない
・トキソプラズマ
猫からネズミに感染。トキソプラズマは猫に戻るために猫にネズミに捕まりやすい行動をとらせる。人間にトキソプラズマが感染すると性格が変わったり注意散漫な性質に。感染者は事故を起こす確率が3〜4倍と高い数値を示す
・家畜への成長促進剤(抗生物質)
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健康と美容に興味がある人は必読の1冊。
健康と美容については、本によって書いてあることがバラバラなことが多く、混乱していた。けれど、この本は人間の根本的なことに追求しているので、迷うことなく、面白く読めた。 -
私たちの頭は、自分の体が自分だけでできていると考えているが、実は腸管内だけでも100兆個の微生物が存在し、我々と共生している。私たちは一生の間にアフリカゾウ5頭分の微生物の宿主になっているのだ。
そして私たちは遺伝子のことばかり気にしているが、私たちの9割が微生物でできているとすれば、その微生物が変化すれば、私たちも変化することになる。21世紀の病気は、感染症よりもアレルギーや肥満や糖尿病だが、それも微生物の変化が影響している。
とても良い本であった。