- Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309467221
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
これぞル=グウィン。素晴らしい物語だった。
壮大で細やかで、緻密で、美しく切ない。
ル=グウィンのファンタジーはいつも、深い哀しみの川底にはっとするような陽光が煌めく一瞬のような、力強さと不意に見せる人間の明るさに胸を突かれる。
ラウィーニアの幸せについての考察、その一節があまりにも美しく強い。
思い出はそうして積み重ねるものであればいいと思う。
そして、詩人の物語が与えたラウィーニアという存在。
物語の一部であるラウィーニアが自分のことを語る成り立ち、死ぬことができるほど詩人が命を与えなかったという彼女。
これってもうSFじゃない?
やっぱりル=グウィンはSFの人なのね。
梟の声が聞こえてきそうな終幕だった。
後書きもとても興味深かった。
-
ローマ建国前のイタリア。トロイアから落ち延びた英雄アエネーアスと結ばれた、ラウィーニア姫の愛と冒険の物語。さすがグウィン❗️読み応えたっぷり‼️
-
あとがきまで愛に溢れて少し切ない。幅広い読者層に受け入れられると確信!
ウェルギリウスと『アエネーイス』へのル・グウィンさんの敬意と、彼女に対する翻訳の谷垣暁美さんの敬意で二重に包まれた、温かく素敵な一冊がいま私の手元にある。
・とある国のお姫様が男に出会う
・その男は未来で叙事詩を書いたウェルギリウス
・そう。現代の我々の世界にも繋がっている
・お姫様は彼の作品に出てくる登場人物だと告げられる
・自分が二次元創作物だったなんて強展開!信じられる?!
・古典アエネーイスのスピンオフ
・けど原作知らなくてもイケる
ここらへんまでで、ライトな小説勢も面白そうだと思いませんか?
・姫は運命を受け入れながらも、自分らしく生きる
・それが人間らしく、愛情深く、聡明で爽快
・英雄アエネーアスも魅力的
・ラウィーニアを通しているからかな。愛しい人
・味方の女性陣が好き
・父のじれったい敬虔も粋
・狂った母にさえ納得感はある
・お城と深い森
・きこりの家、洞窟、狼
・海風の香り、サルサ・モラ
ル・グウィンさんファン及びファンタジーファンを喜ばせる、地に足がついた登場人物、自然と住居のありありとした描写、崇高な信仰や儀式は雰囲気たっぷり。トリップできます。
・平和と戦争のギャップがきつい
・映画化できそう、皆に知って欲しい
・でもいじくらないで。自分の感じた世界観をそっとしておいてほしい矛盾
原作勢あるある。
かつてゲド戦記に泣き、クラバートの帯に「宮崎駿絶賛」と書かれていて慄いた私です。
結局長くなってしまった。
訳者あとがきが大変秀逸なので、私が語ることは特になかった(はずなのに)。
自身も愛と感謝を込めた重めのラブレターを書きたかったが、誰も読むまい。
拙い箇条書きが誰かの読書のきっかけになれば嬉しい。
もしそうなれば文化が、本が脈々と受け継がれる歯車の一つとして、ル・グウィンさんのファンタジーに組みすることができたようで、それは非常な喜びだ。-
クラバートは昔から大好きで。
行けなそうですが、興味があるのでカレル・ゼマンさんを調べてみます。
ありがとうございます!
外伝も良いですよ...クラバートは昔から大好きで。
行けなそうですが、興味があるのでカレル・ゼマンさんを調べてみます。
ありがとうございます!
外伝も良いですよね。
忘れてきたので再読したいです。2022/07/16 -
777naさん
カレル・ゼマン(ゼーマン)の娘さんが描いた絵本
「ギルガメシュ王ものがたり」(岩波書店)もお薦めします。777naさん
カレル・ゼマン(ゼーマン)の娘さんが描いた絵本
「ギルガメシュ王ものがたり」(岩波書店)もお薦めします。2022/07/19 -
2022/07/19
-
-
ここ一年以上熱を上げているソシャゲ「魔法使いの約束」のキャラクターのなかにファウスト・ラウィーニアという人がいる。まほやくのキャラクターはファーストネームの由来になった作品がそれぞれあると言われていて、ファウストの場合はゲーテの『ファウスト』であるわけだが、たまたまそれを手にとったのと同じ日に図書館で棚を物色していたら偶然この本が目に留まった。こんなの読むしかない!と思って手にとったら、これがすっごくおもしろくて一息に読み通した。ひらたく言うなら、ル=グウィンによる紀元前の詩人ウェルギリウスの『アエネーイス』の盛大な二次創作。もともとが紀元前の作品だから男性中心的な世界観ではあるけど、ウェルギリウスの詩の中ではただの脇役にすぎず台詞もないラウィーニアを主人公にして、その視点で物語を描き直すの、それ自体がフェミニズムだし、女を意志ある存在として描いてやろうという気概を随所に感じて心震えた。
「かの詩人がわたしを歌った部分は、わたしの髪に火がついた瞬間を除いて、あまりに退屈。(略)だから、もうわたしはがまんできない。もし、これから何世紀も存在し続けなければならないのなら、せめて一度、口を開いてしゃべりたい。彼はわたしにひと言もしゃべらせてくれなかった。」
一人称で語られる意味のある作品だった。出会わせてくれてありがとうまほやく。 -
ラティウムの王女ラウィーニアは、父と共に聖なるアルブネアの森を訪れた際、不思議な詩人ウェルギリウスの生霊と出会う。ウェルギリウスはラウィーニアの未来を語る。年頃のラウィーニアには、母である王妃の甥のトゥルヌスはじめ多くの求婚者がいたが、お告げで彼女は異国人と結婚することになっており、やがてトロイアからアエネーアスの一行がやってくる。ラウィーニアは彼こそ自分の夫となる男だと思うが、トゥルヌスはアエネーアスに戦を仕掛け…。
オリジナル設定のファンタジーだと思って読み始めたらウェルギリウスの『アエネーイス』がベースになっている古代イタリアの歴史もの(?)で意外でした。そしててっきり読んだつもりでいた『アエネーイス』を自分が読んでいなかったことに今更気づく。『イーリアス』や『オデュッセイア』等のギリシャもの、そしてウェルギリウスの登場する『ファウスト』は既読なのですっかり『アエネーイス』も読んだつもりになってた…。たぶん『アエネーイス』を読んでいたほうが本作への理解は深まると思いますが、まあ未読でもそれなりに面白く読めます。
基本的には『アエネーイス』ではあまり多くを語られていない、主人公の妻ラウィーニアの視点で、物語を膨らませた感じだけれど、異色なのは彼らより後世の人物である『アエネーイス』の著者ウェルギリウスが時空を超えてラウィーニアの前に生霊として現れること。つまりラウィーニアは歴史上の人物であると同時にウェルギリウスに語られたがゆえに存在している物語の人物であり、彼女自身がそのことを自覚し、肉体を越えた存在として自身の過去を語っている構成。
それにしても序盤でウェルギリウスがラウィーニアに、このあとこんなことが起こるよ、と全部ネタバレしてしまったのには驚いた(笑)未来人であり作者である彼が過去の登場人物に、誰がいつどんな死に方をするとかまで全部ペラっちゃうんだもの。まあ予言とはそんなものかもしれないし、読者はウェルギリウスを既読なら当然知っているあらすじではあるのだけど、結果ラウィーニアはいつ夫が殺されるとかまで全部知ったうえで結婚することになるし、未来を変えることはできないので可哀想といえば可哀想。
まあそれはさておいても、波乱万丈の一人の女性の人生の物語として読み応えはありました。お母さんがちょっと毒母なんですよね…。ラウィーニアの弟たちが幼いうちに流行り病で亡くなってしまってから、なぜか娘を憎むようになり、結婚相手についても自分のお気に入りトゥルヌスを押し付けようとするのだけど、自分自身が彼に媚びているところがかなり気持ち悪い。毒母との葛藤といい、女性に発言権のない時代に自分の生き方を貫くラウィーニアは現代的な強さがある。
アエネーアスの最初の妻との間に生まれた息子アスカニウスは、正直面倒くさい子だったけど、実は同性愛者で云々のくだりは現代的なLGBT問題も盛り込んであった印象。まああの時代は別に同性愛者でも咎められなかったと思うけど、王子としては跡取り必須なので問題視されてしまったのでしょう。
とりあえず『アエネーイス』はちゃんと読みたいなと思いました。あとル=グウィンの『ゲド戦記』も実は未読なのでいつか読みたい。 -
アーシュラ・ル・グインです。
こんなところで出されたら、見つからないわ〜!
「三体」といい、いまアシモフの「銀河帝国の興亡」映画作ってるんだって!
SFブーム、来るのかしら?
2022/02/16 更新 -
『アエネーイス』を読んでからにしようと思っていたのに我慢できなかった。近いうちに必ず。やはり岩波文庫かな。七五調訳!
トロイアを落ち延びたアエネーアスがイタリアで迎える妻ラウィーニアの物語。『アエネーイス』を下敷きに、一族、ひいては国の祭祀を助ける唯一の子として王のもとで暮らす女性の視点から、ローマ建国以前、ギリシア文化の後継者となる前の土着の信仰風俗などなど、考証と想像を活かして鮮やかに描写している。地に足の着いた生活感が至るところに見えるあたり、とてもこまやかでしかも骨太。
なおかつ大胆だなと思うのは、語り手のラウィーニアが語り手たる動機を自ら語るところ。「私の詩人」ことウェルギリウスは、私ことラウィーニアをろくに語らなかったから……思わず背筋がぞくぞくした。彼女が時空を超越する必然性を明かしたうえで、ほかならぬウェルギリウスの霊と言葉を交わし、こうすることで創作されたフィクションと創作者のいるリアルが響き合うフィクション(=本作)に仕立てているらしい。訳者あとがきで改めて意識された、時おり挟まる現在形の語り、そこから窺えるアエネーアスへの変わらぬ愛が胸に迫る。