植物はそこまで知っている: 感覚に満ちた世界に生きる植物たち (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464381

感想・レビュー・書評

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  • 広義的な意味で言えば、植物は、見る、嗅ぐ、接触を感じる、重力を感じる、憶えている。しかし、巷間言われる「聞く」ことはない。というのが、今の科学的知見。

    専門的な用語も交えているので、安易な啓蒙本とは一線を画するが、その分、一つ一つのトピック、エビデンスの取り上げ方が興味深かった。構成も見事である。

    ・植物は動物よりも、遺伝子が複雑。
    ・植物は色の違いを区別している。青い光りで屈曲する方向を知り、赤い光りで夜の長さを測っている。
    ・開花時期を調節するにはたった一枚の葉に照射するだけでその植物全体に影響が及ぶことが分かる。
    ・鼻の中にある受容体は、脳の辺緑系に直結している。この辺緑系は進化的に見たとき、脳の一番古い部位にあたる。
    ・根の最先端の細胞が重力を感知している。
    ・根冠の中央部にある細胞には、「平衡石」というヒトの耳石に似たものがある。
    ・記憶は無限なのに、それを維持するためのタンパク質はごく少数しか存在しない。
    ・ヒトであっても、痛みと苦しみは脳の別の領域で解釈される別の現象。
    ・耳とは、重力を感じる平衡感覚器のなかに、あとから聴覚器が入り込んだもの

  • エピローグがいいね。
    植物と大差ない人間ばかり。自分も然り。
    この表現だと植物に失礼か。

  • 植物が好きだから、植物側のことを知りたくて
    読んだ本。科学的根拠に基づいてて、
    たぶん植物さんはこう思ってんだよーじゃない本で
    読んでよかった本。
    植物は見ている。植物は香りを嗅いでる。
    植物は接触を感じている。植物は空間を感じている。
    植物は記憶を憶えている。植物はいろいろ知っている。でも植物は聴いてない。
    植物がもっと愛おしくなった。
    感覚が満ちるってどんな事なのか人間だとどうゆう時に感覚が満ちるって感じるのかとか、波紋のようにいろんな事考えながら読みました。

  • 植物にも、視覚、嗅覚、触覚が備わっている。植物は案外、ヒトに近い存在なのかも知れない。

     ヒトには1種の光の明暗を感じる細胞と、3種の光の色を感じる細胞があるのに対し、植物には11種類の視細胞を有している種がいる。青い光で体内時計を調節し、赤い光で活動を休止するなど、生息地を移動できないからこそ、より繊細に光を感じている。
     植物は揮発生ガス(エチレン)に対応する受容体を有している。この他の受容体もあると考えられるが、まだ見つかっていない。エチレン受容体によって、ツル植物は寄生したい植物に優劣をつけ、小麦ではなくトマトの方へツルを伸ばす。
     植物は刺激を感じると成長を止めることがある。これは外的環境が不安定なときは植物の丈を高くするのではなく、植物を頑丈にする方へシフトするからである。
     また、植物の尖端にも平衡石があり、重力によって上と下を判断している。平衡石が接している側を早く成長させることで、植物は天に向かって伸びる。光を感じたほうの逆側を早く成長させることで、光に向かって伸びていく。ツルが接した方とは逆側を早く成長させることで、真っ直ぐ伸びていたツルは目的の植物に巻きつく。

     聴覚は未だ発見されていないが、動物の難聴に関わる遺伝子が植物にもある。音楽を聞かせると植物はよく育つ言われているが、科学的な根拠はない。

     ハエトリグサの閉じるための記憶はイオン濃度に由来する。また、親がストレスを経験したとき、これが遺伝子の活性箇所に影響し、それが子に遺伝して、ストレスに強い子が育つことがある。遺伝子の非活性は、糸状のヒストンタンパク質がDNA二重螺旋に絡み付くことで、転写が行われないために起こる。再活性化のメカニズムはまだ分かっていない。

     祖先は同じだったため、植物はヒトと同じ遺伝子を保有している。植物も電気信号を使って情報を伝達している。
     植物は成熟するとエチレンガスを放出し、これを検知した他の個体は一斉に果実を成熟させる。成熟タイミングを合わせることは、花粉・種子拡散生物を多く呼び寄せ、生存競争に有利に働く。害虫による侵食を検知した葉はある種のガスを放出することで、そのガスを検知した他の葉が対抗物質を生成し、害虫に食べれないようにする。

  • 科学者たちの研究を基に、植物の視覚、触覚、位置感覚が証明されています。
    植物を擬人化して語った内容ではありません。むしろ終盤でそれを批判しています。
    遺伝子にも触れた内容ですが、文系でも分かりやすかったです。

    観葉植物を育てる上でも参考になる点がいくつかありました
    ・葉の光受容体は光の合図を受けると、全身に伝わる信号を送り出す
    ・人間が毎日数秒触るだけで、葉の生長が遅れていた
    ・植物は細胞壁への圧力を調節するために、細胞の内外にポンプで水を出し入れする
    ・植物はクラシック音楽を聞いていない(ドロシー・レタラックの研究結果に科学的根拠はない)

  • 植物は世界をどう認識しているか。
    動物の視覚、聴覚、嗅覚、触覚、記憶などに相当するものはあるのか、あるとすればどういうメカニズムなのか。
    非常に興味深い内容で、擬人化を戒めつつ、植物にもいろいろな感覚があることを先人たちの研究成果を踏まえて解説している。

    優劣ではなく、別の形で世界認識をし、別の生き残り戦略をとった生物として、植物の能力に感心する。

  • 園芸の本ではないのだが、植物を育てることにもとても役に立つ。
    特に、植物は接触を感じているとか、平衡感覚を持っているとか。
    擬人化したくなるが、決してそうはならずに、科学的に記述が続くのもGOOD。
    とても面白かった。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB23917740

  • いつごろからか植物にわりと話しかけることがある(まわりに人がいないとき。。)私の期待とは内容ちょと違って、我々の五感と対比して生物学的に論理的にどのように反応しているかを説明してくれた。

  • 植物の世界観に触れる。
    植物に脳はない。
    しかし、人の認識できる世界で現在の植物の研究の成果を見せられるとその世界に驚く。
    見て感じて成長し種となり、何年も紡ぐ。

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著者プロフィール

遺伝学者。イスラエルのテルアヴィヴ大学の植物学の教授、同大学のマンナ植物バイオ科学センター所長。米国のイェール大学のポスドク当時、COP9シグナロソーム遺伝子群を発見、世界的に注目されている。

「2017年 『植物はそこまで知っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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