解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463896

感想・レビュー・書評

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  • 何事も時代の最先端をいく人物が、世間に理解されることの難しさを思い知らされた。
    教会が権威と結び付き、異なる意見を受け入れない時代に、事実に基づく証拠と実績を積み上げていった人物に感服させられる。
    ユーモアたっぷりのエピソードに彩られ、彼の人物像を垣間見られた気がする。

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    内容(「BOOK」データベースより)
    「『ドリトル先生』や『ジキル博士とハイド氏』のモデルとも言われるジョン・ハンターは後世、近代外科医学の父と呼ばれるようになる。しかし混沌とした草創期にあって、彼は群を抜いた奇人でもあった。あまりの奇人ぶりは医学を超え、進化論まで及び、噴き出すような多くの伝説さえ生んだ。遺体の盗掘や闇売買、膨大な標本…ユーモラスなエピソードに満ちた波瀾の生涯を描く傑作。」

    原書名:『The Knife Man』
    著者:ウェンディ・ムーア (Wendy Moore)
    訳者:矢野 真千子
    出版社 ‏: ‎河出書房新社
    文庫 ‏: ‎496ページ

  • 近代外科医学の開祖であり、革命的な博物学者でもあった男の伝記。
    解剖するためなら非合法な手段も厭わないうえに、科学的興味のために自分に淋病菌を接種するような間違いようのない変人。しかし好奇心に突き動かされた行動力と、人間味あふれる人格に魅力される。

    特筆すべきは、まともな科学的診療が行われていなかった時代に、徹底的に実験医学を基にした医療を行い、その先進的な考え方を余すことなく後進に伝え、育成に多大な貢献をしていたこと。
    当時(今でも)の価値観では奇人としか言いようのない人物だが、多様な生物はただ一つの生物から派生したものであり、神が一夜にして作ったものなどではないと喝破するなど、その先見性と科学的思考力の冴えはすごいとしか言いようがない。

    若手科学者向けに開講した講義を2期連続で受けた若者に、先生の言っていることは去年と違うと非難されて、
    「そうだろうとも、私は年々賢くなっているからな」と回答するあたりに、現代も続く科学者として忘れちゃならんものがあると気付かされる。
    どんな時代でも大事なことは変わらない。
    とてもよい本だった。

  • 皆川博子さんの「開かせていただき光栄です」のダニエル先生のモデルとなった、18世紀イギリスの解剖医ジョン・ハンターの生涯。
    伝記を久々に読みましたがとても面白かったです。
    ハンター先生、かなり破天荒ですが、伝統や慣習にとらわれない柔軟な考え方と、観察や実験をして培った知識で、時代の先をゆく説を立てていたの凄い。
    瀉血と嘔吐、下剤の時代に、ちゃんと治療してたというのも。この時代の作品を読んでいるときにいつも、「なんで瀉血なんてしてるんだろ?」と長年疑問だったのですが、その理由が解りました。しかしギリシャ時代からこれとは……。
    近代外科学への功績がとてつもないですし、ダーウィンより70年も前に進化論に辿り着いてた人ですが、エピソードが面白すぎて…伝記って堅苦しい気がしてましたが読み物としてもワクワクしました。
    ロンドンのお屋敷の庭に多種多様な動物たちがいて、そしてハンター先生はアジア水牛に牽かせた馬車(牛車?)で移動。見たすぎる。
    ハンテリアン博物館は訪れたい場所のひとつです。

  •  世界中から一万点を超える動物や標本を集めて「ドリトル先生」のモデルになった一方で,非合法な手段を問わず集めた標本の多さや,珍獣どころかシャム双生児や巨人など特徴的な人間を見つけると葬儀業者に金をつかませて死体を手に入れたことなどから,「ジキル博士とハイド氏」のモデルにもなった超奇人の波瀾の生涯を描く伝記である。
     医師と言えば内科医physicianのことであり,外科医は床屋が兼ねながら瀉血したり疣を取ったりすることが主な仕事だったフランス革命より少し前の時代は,まだ麻酔や消毒薬などが普及する以前で,手術の成功率は極めて低かったが,ハンターは,自ら解剖を繰り返して人体の構造を知り抜き,手術の前に動物で何度も同じ手術を行うことで成功率を高めた。内科医による瀉血や浣腸,水銀治療といった旧弊な治療を否定し,外科医の地位を内科医と同等まで押し上げて,「実験医学の父」「近代外科学の開祖」と呼ばれるようになった。
     当時の医学界では異端であったハンターだが,弟子たちには,観察し比較し推論し実証することを要求した。ハンターの思想を受け継いだ多くの弟子が,彼の考え方を世界に広げ,「近代免疫学の父」と呼ばれるジェンナーを筆頭に,近代医学の発展に貢献していく。
     おどろおどろしいエピソードに目を奪われがちだが,実際には他に類を見ないほどの知的巨人の物語であり,訳者あとがきには「こんなに面白い本に出会ったのは久々で,訳出作業を終えた時には「もっと訳したいのに」という名残惜しさを感じた」と書いてあるほどの傑作で,一読の価値は必ずある。
     ちなみに,ハンターのコレクションを所蔵するハンテリアン博物館は,ロンドンの王立外科医師会の建物内にある(ただし,現在は建物が全面改装中で,2020年秋に再オープン予定)。いつ死ぬか人を雇って見張らせながら念願の末に手に入れたという身長2.3mの「アイルランドの巨人」ことチャールズ・バーンの骨格標本も展示されているとのこと。ロンドンを訪れた際には,是非どうぞ。
    Mak
    蔵本2階中央閲覧室 289.3||Mo

  • 先日読んだ「こわいもの知らずの病理学講義」で紹介されてたので読んでみたところ、とんでもなく面白い。
    そもそもこんな人がいたのかと驚いた。奇人ではあるが、今の視点から科学的立場としては全く当たり前のことを行っているのだが、当時の常識からは外れていたのだろう。死体の調達や強引な標本採取は現代でも受け入れられないが。

  • 超面白い。
    迷信まみれな一八世紀の医学を、ナイフマンことジョン・ハンターが実際的な経験と知見、そして何よりも、その類まれなる好奇心でもって当時の医学的常識に疑問符を突きつけながら、一人純粋に探求を繰り返す彼の生涯を俯瞰できる良著。
    解剖学だけでなく歯科や生物学にも強い興味を示すハンターは、まさに知的好奇心でもって世界の真理に到達しようとするファウストのような人間。

  • 仕事には忠実なのに辛辣な性格で随分と敵を作ったのに地位も名声も収入も得るこの人はもはやスーパーマンというかちょっと信じられない。どこかこの作者を胡散臭く思ってしまった。 
    ーーーーー
    『ドリトル先生』や『ジキル博士とハイド氏』のモデルにして近代外科医学の父ハンターは、群を抜いた奇人であった。遺体の盗掘や売買、膨大な標本……その波瀾の生涯を描く

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=24002

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB13431108

  • 289-M
    文庫

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著者プロフィール

イギリスのジャーナリスト。「ガーディアン」「オブザーバー」などの全国紙や一流雑誌に寄稿、記事のいくつかで受賞している。1999年に英国薬剤師協会で医学史の学位を取得、「マカベア・ベスト論文賞」を受賞。

「2013年 『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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