白痴 1 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463377

感想・レビュー・書評

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  •  小説を読み始めた頃、それこそ白痴のように読み漁ったドストエフスキーの長編小説。中でも白痴は一番好きだったので、新訳が出ていてとても嬉しかった。
     ムイシュキン(ムィシキン)公爵が列車でペテルブルクに来る所から始まるストーリーは、今まで良くも悪くも保たれていた均衡が崩れ始めるような・・・例えるならジェンガを一本一本抜いていくような緊張感があり、もうわくわくがとまらない。作者は本小説が失敗作だと自分で評していたようだけど、個人的には大満足。
     第一部で印象深いのは、やはり主人公ムイシュキンが持つ周囲の人間を引き寄せる力だと思う。列車の中でのロゴージン、エパンチン家の召使をはじめとして、白痴白痴と言われながらも何故か気に入られてゆく。私自身、列車内会話の時点でぐいぐい引き込まれていった。
     細かな感想は、3巻まで読み終えて纏めて書こうと思っている。以前読んだ新潮訳と訳の比較はできないけど、普通に読みやすかったとは思う。解説も豊富で、特に時代背景についてしっかり書かれているのはありがたかった。次を読むのがすごく楽しみ。

  • レフ・二コラエヴィチ・ムィシキン公爵。そして、ナスターシャ・フィリッポヴナである。
    ムィシキンは、白痴とも評されるが、おばかさん、とか、お人好しさん、の印象。
    ナスターシャ・フィリッポヴナは、本小説中つねに、なぜか必ず、フルネームのナスターシャ・フィリッポヴナである。火のような女。ファム・ファタル。

    150万ルーブリ、ムィシキンの予想相続額である。こんな巨額の金が、頻出する。
    気になるので、読み進める途中で調べてみた。当時の1ルーブリは、1000~2000円相当との説あり。
    これに従えば150万ルーブリは、15億から30億円!また、1部のクライマックス「ロゴージンの10万ルーブリ」は、1億!(~2億)。さらには、ロゴージンの相続額250万ルーブリに至っては、25億~50億である。(巻末解説には、こうした非現実的な額の大きさは、この小説の神話性を感じさせる、としている)

    それに関連するかもしれないが、私は、シェイクスピアを思わせるものを感じた。
    冒頭、ペテルブルグへ向かう列車の客室内、ロゴ-ジンとムィシキンの2人に下級役人レーベジェフがまとわりつき、こびへつらう。そして、本巻終盤の修羅場でも、ロゴージンの腰巾着のように再登場する。 そのタイコモチな感じは、なんとも古典劇の道化を彷彿とさせるのだ。
    ムィシキン公爵が主人公らしい。だがしかし、中途他の人物や家族のエピソードが、ドカンと膨らんでいく。
    巻1を読了したが、物語の方向性を想像できない。 
    スラップスティックな展開。ぶっとんでいる。自由を感じる。この小説は、いったいどこに連れていくのか? 予想がつかない。そこが、面白さ、味わいのひとつかも。

  • ドストエフスキーの小説は、ロシアに一度も行ったことのない私にも人物が生き生きと思い浮かべられるのがすごいところだと思う。それでもムイシキン公爵はちょっと「想像上の人物」感がぬぐえずに読み進んだ。社交界ずれして上流階級に固執する人たちを痛烈に皮肉るために生まれたキャラクターなのかな、という印象。私には公爵は正気に見えるけれど、作中の人物たちは彼を「イディオット」という。彼らのやり取りを読む中で、本当に「正気」なのはどちらなのか?と問われているように感じる。
    公爵が死刑について「これこそ人間の魂への侮辱」と言い切るところや、ガヴリーラに「面と向かって白痴と言われるのはいささか不愉快です」ときっぱり言うところでは特にハッとさせられた。純粋な人ほど悪意に敏感なところがある。そして純粋と無知とは別なのだ、と気づかされた。
    ナスターシヤ・フィリッポヴナもおそらく純粋な人物だ。彼女の今後が気になる。

  • 冒頭部分を読んで、アリョーシャ(カラマーゾフ)が出てきたのかと思うくらい、イメージがかぶった。つまりその純で素朴で愛される人柄が、この恋愛小説の鍵のひとつということになる。
    特にこの1巻は、今まで読んだ他のドストエフスキー小説の中で一番読みやすかった。

  • ブクログのリストで私が2024年読みたい小説に挙げた作品。当初は光文社古典新訳文庫版(全四冊)を選択肢に考えていたのだが、同じ新訳ながらも全三冊で完結するこちらの方が財布に優しい、そんな単純な理由により此度は河出文庫版へ目を通すこととした

    この「白痴」には、以前新潮文庫版を手にしたものの早々に途中で投げ出してしまった苦い記憶が伴う。今回本作に改めて目を通してみれば、その訳は第一部の前半から中盤にかけて記された各登場人物たちの冗長にも感じられる遣り取りが元だったという気がしないでもないが、そこを何とか堪えて頁を繰り、高慢にして魅力的な美女ナスターシャが登場する場面へ読み進むと、まるで霧の中を抜け出たかのように俄然話が面白くなった

    第二部以降の展開に期待したい

  • いわゆる5大小説の中では最も読みやすく、19世紀末のペテルブルクを楽しめました。世俗にまみれた人々の中に天使のような人物が舞い降りたらどうなってしまうのか。

  • 解説
    1 ドストエフスキーの人生、創作と『白痴』
    2 『白痴』の世界ー風変わりな訪問者
    3 旅する作家、変わるロシア
    4 神話的な時空間

    本書は文庫オリジナルの訳し下ろしです。

  • 江川卓訳『罪と罰』(岩波文庫)に続き、『白痴』はこちら河出文庫の望月哲男訳を選びましたが、(他と比較した訳ではないので絶対評価として)正解。読みやすく、かつ作品のストーリー・テイストに合った訳文と感じます。

  • スピード感溢れる翻訳がすばらしい。『白痴』は展開が速いので、このリズムに乗って読み進められるのはとてもいい。

  • レヴュは3巻にて。

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著者プロフィール

(Fyodor Mikhaylovich Dostoevskiy)1821年モスクワ生まれ。19世紀ロシアを代表する作家。主な長篇に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『未成年』があり、『白痴』とともに5大小説とされる。ほかに『地下室の手記』『死の家の記録』など。

「2010年 『白痴 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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