死してなお踊れ: 一遍上人伝 (河出文庫 く 20-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309416861

感想・レビュー・書評

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  • 鎌倉時代後期にブームとなった念仏を唱えながら踊り狂う「踊り念仏」の仕掛け人 一遍上人に関する著作。

    アナキズム研究が専門の栗原康さんがひらがなや擬態語・擬声語を盛りだくさん用い、解説する。

    以前磯田道史さんの『英雄たちの選択』(BSプレミアム)で取り上げ、栗原さんも出演されていてとても印象深かった。

    不確実で不安定な日常に加え、力で統治する武士という身分が確立し、力がものをいう理不尽が満ち満ちた時代。

    蒙古来襲で全国は、さらに極度の緊張状態が増し、何かにすがりたい、どうすれば心の安寧に手が届くのか、人々は右往左往したに違いない。

    生きると死ぬことの境界線が曖昧で、いつ何時どうなるかもわからない日常。
    物欲や権力など何にも執着することなく、身分問わず、ひたすら踊り、念仏に没頭することが人々のよすがになったことと想像する。

    生産性、有用性など今日最も貴ばれる価値観を全否定した一遍上人という存在にアナキズム研究者である栗原さんらしく光を当てたのかな。

    この一遍上人に端を発する現在の時宗のお寺の念仏をいくつかyoutubeで観たところ、結構しっぽりした雰囲気で当時とは異なるのだなと想像。

    徳島の阿波踊りは踊念仏に何らかの影響を受けて、引き継がれているという説もあるようで、日々の喜怒哀楽を踊ることで昇華させるというのは人間の本質的な動きなのではと察する。

    アフリカのどこぞの民族でも家族のお葬式に皆で輪になって踊る光景をテレビで観た記憶があり、人間の快不快の感情と踊りとは切っても切り離せないのかなと感じる。

    宗教や哲学の観念的な話題ながら、栗原さんらしく
    「ふおおおおおおおおお!」みたいな勢いがみなぎる一遍上人のお話としてまとまっていました笑。

  • とにかく一遍上人のかっこよさが伝わった。
    僕もいらないものはすべて捨て、新しい人生を好き勝手生きてみたい。

  • すごく良かったです、生きていける気になりました

  • 栗原が絵巻物『一遍上人絵伝』をものすごいドライブ感で実況中継しているような感じ。新約聖書の福音書のようでもある。

  • NHKBSで「英雄達の決断」という番組をやっていて、あるとき取り上げられていたのが一遍上人。そしてそのときコメンテーターとしてこの本の著者が出演しており、かれの“アナーキズム研究家“という珍しい肩書きと解説のわかりやすさに惹かれ、彼が一遍について描いた著書を読んでみることにした。
    一般的な伝記とは異なり、独特の文体で描かれているので最初はやや面食らう。なんだろう、町田康みたいな感じ。
    さすがアナーキストというか。ロックな感じというか。
    一遍がいかにして浄土宗に帰依し、そして踊り念仏に目覚めて時宗の開祖となり、諸国を漫遊していくのかをきちんと史実に沿って描きながらも、おそらく著者が一番強調したい、一遍のメンタリティ「すべてが無常であるならば、いっそすべて捨ててしまえ。すべてを捨てて踊ってしまえ」という部分をロックな解釈を踏まえてダイナミックに記述している。
    仏教のおしえについても、わかりやすく解説してくれていて、教養書としても読み物としても楽しめた。
    すべてが無常だとしたら、いっそ捨ててしまうことが果たしていいことなのかどうかはわたしにゃわからん。
    ただ、困ったら「南無阿弥陀仏」と唱えてみようとは思った。時宗は、信心があってもなくても、念仏を唱えれば救われるというのが教えで、そういう楽ちんな心のよりどころはとてもいいと思う。

  • この、熱量が高い音楽的な語りが、一遍の歩んだ人生といかにもマッチしていて、たいへんな臨場感だった。まるで、一遍とともに生まれて死んだような読後感だった。

  • 「自由」という単語を聞いてイメージするものは人それぞれ違うと思うが、私のイメージする自由がここにあった……!
    こういう風に生きれたら、心の底から思えたら、どんな感情が待ってるだろうな

  • 図書館で衝動的に借りた。「無政府主義=アナーキスト」を自称するマルクス主義者による一遍上人評伝。同じ言葉なのに漢字表記だったりひらがな表記だったりと、表記が不統一で非常に読みづらかった。踊り念仏を実施するシーンで「フォー」などの根拠不明で意味のわからない擬態語がやたらに出てくるのも不快だった。一遍上人による仏教的な清貧思想と自身のマルクス主義的な私有財産権否定とを強引に重ね合わせただけの内容で、教義についての説明も一面的かつ中途半端なのもいただけない。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=41352

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB28317784

  • 相変わらず栗原康は最高だ。
    全て捨てろ、踊り狂え。
    自分が取り憑かれている上昇志向、スキル身につけなきゃいけない信仰、生涯学習とかいう言葉、そういうのすべてNOだ。向上心、くたばれ。
    踊るぞ、踊るぞ、踊り狂って死ぬぞ、
    そんなことを思う。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。著書に『大杉栄伝 ―― 永遠のアナキズム』(夜光社)、『はたらかないで、たらふく食べたい ――「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)、『村に火をつけ、白痴になれ ―― 伊藤野枝伝』(岩波書店)、『現代暴力論 ――「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)、『死してなお踊れ ――一遍上人伝』(河出書房新社)、『菊とギロチン ―― やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』(タバブックス)、『何ものにも縛られないための政治学 ―― 権力の脱構成』(KADOKAWA)など。

「2018年 『狂い咲け、フリ-ダム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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