夏目漱石、読んじゃえば? (河出文庫 お 34-3)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309416069

感想・レビュー・書評

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  • 若者に対して気安く話しかけるような語り口で、夏目漱石の作品を通して「小説の読み方」を説き、小説とは何かを伝える。各章は作品ごとに、『吾輩は猫である』『草枕』『夢十夜』『坊ちゃん』『三四郎』短編集『こころ』『思い出すことなど』『それから』『明暗』の十章で構成される。小説について本書で示される教えのうち、印象的だったいくつかを挙げる。

    ・小説の本質は物語にはない
    ・小説は最初から最後まで読まなくてもいい
    ・正しい読み方や間違った読み方は存在しないが、面白い読み方とつまらない読み方は存在する
    ・小説の面白さは自分で作り出す
    ・「言葉がどういう力を持つのか?」を知るためのサンプルが小説にはたくさんあり、人生をより豊かにする

    通読を重視しないなど、『読んでいない本について堂々と語る方法』で説かれる内容との共通点もあった。小説の読み手としてのレクチャーが主ではあるが、創作を志す読者にとって有用なヒントも含まれているように思う。そして、本書における漱石作品は単なるサンプルではなく、各章を読むことで各作品の理解が広がり、作品ごとの魅力と漱石作品全体の豊かさも伝わる。「坊ちゃんは中二病をずっと引きずっている人の話/キレる若者」「三四郎はシャイな草食系男子」「孤独は漱石のテーマ」「漱石の小説に出てくるのは上流階級の人ばかり」「明暗はドストエフスキーが描いたような関係の地獄を描いてみようとした」など、言われてみれば納得する指摘が多くあった。著者にとっての漱石作品ベストは、『吾輩は猫である』『明暗』とのこと。

  • 祝文庫化!

    夏目漱石、読んじゃえば??|14歳の世渡り術|河出書房新社
    http://mag.kawade.co.jp/yowatari14/2015/04/post_276.html

    夏目漱石、読んじゃえば? :奥泉 光|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309416069/

  • 夏目漱石読んじゃえば?
    ちょっと変わったタイトルの本書は漱石の10作品を取り上げてそれらにあった読み方を提案している。
    提案というよりも指示に近いか。
    文章の書き方も妙に上からっぽいので何故だろうと思っていたら河出書房の「14歳の世渡り術」というシリーズの中の作品だった。
    中学生向けね。
    とはいえかなり参考になった。
    もう一度視点を変えて漱石さんの作品を読んでみようと思ったし、読書一般に関しても今までと違った読み方が有るなあと思えた。
    特に著者の言う「小説の本質は物語ではなく文章にあるのだ」は映像でなく文字で記される小説の存在意味を表しているのだろう。
    そして「小説は最後まで読まなくても良い」「好きなところだけ読んでも良い」「難しい文字は調べなくても良い」「そんな文字を絵画のように眺めるだけでも良い」
    などは「小説は文章」というところから派生する考えならば納得できる。
    中学3年間の英語をしっかりと学べば日常の英会話に苦労しないという一部の発言のように(それが本当かどうかは知らないけれど)、こういった中学生向けの指南書は大人にも役立つ。子供新聞が大人にも有効なように。
    面白かった。

  • 中学生に向けた奥泉流漱石案内。
    全部読まなくていい何なら書名を読むだけでも人と本の関係は始まるのだ、
    物語だけでなく語り方も大事だ、
    というまっとうだが結構忘れがちな教訓を再認識。
    というよりそれは奥泉自身の文芸観でもある。

    ところで。「猫」の次に「それから」が好きなのだが、
    墓場から出てきた女が代助にギロチンを落とす!
    というイメージ。
    ずっと「それから」のモラトリアムや越境恋愛や不吉な毒々しさに惹かれてきたが、なーる!すっきり!胃の腑に落ちた。

  • 理窟がましい奥泉光の言ひ訳
     《小説や小説家の責任にしてばかりではダメってことだよ。もう一度言おう。小説を面白くするのは君自身なんだ。》とある。
     しかし、いくら小説をおもしろがるのが自分の責任でも限度はある。『フィネンガンズ・ウェイク』やピンチョンなど、読むのが困難な小説をどうおもしろがればいいのか。だいたい奥泉が想定してゐるのはプロの作品で、奥泉ははたして世の中にゴマンとある文学素人のうまいとはいへない小説を読んだことはあるのか。

     「読書は人生の役に立つ」ことも力説してゐるが、まったく根拠がない。これは人文系知識人がよく唾を飛ばして言ふ言説だが、どの場面で役に立つかぐらゐ例を挙げてください。

     「ストーリー主義を捨てろ」とも主張する。
     しかし「吾輩は猫である」に主だった筋はないが、章ごとに筋はあるではないか。迷亭の小話だって立派な小さな筋ではないか。「吾輩は猫である」は、筋の集合体小説なのである。だからストーリーがないのにおもしろい小説もそんなにあるはずはない。ストーリーがない小説を読むのは、白い絵を見るやうなものだ。

     小説はうしろのページから読んでもいいと書いてゐる。
     否定はしないが、シャツを裏返して着るやうなことで、要するに、邪道でしかない。

     奥泉光は芥川賞選評でも、佐藤厚志にたいして「近代はリアリズムが否定された」だの、とんちんかんな事を書いてゐる。この人はどうも丸谷才一以来の反リアリズムだから、この本の軽口もすまして気取ってゐるわりには、書いてあることが信用ならない。
     だいたいなぜ小説を読むことを力説するのに漱石を取り上げるのか。ただ漱石ファン奥泉による、漱石礼讃本ではないか。

  • 子ども向けに書かれた小説読解入門書。

  •  奥泉さんのおしゃべりは、内容はともかく、笑いとしては、関西の人には受けないと思います。なんか、東の方の、やな感じ。いとうせいこうさんは東京なのに笑えるんだけど。
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201910160000/

  • 夏目漱石の作品に対し、親しみやすい口調で新鮮な解釈を講じる。お堅くて難しそうで食わず嫌いしていた夏目漱石、読んでみようかな。

  • 今年は、小説を読む割合を増やそうと考えている。自分は小説を読むことの理由があまりわかっていないけど、なぜ小説を読むべきなのか、ということもこの本に書かれていて、少しモチベーションが上がった。
    夏目漱石をほぼ読んだことがなかったが、まず読むのは「明暗」に決めた。ドストエフスキー的な地獄や実存をテーマにしている作品らしい。自分は、気付かずに人を傷つけてることが多いだろうし、自分をコントロールできない人間って厄介だなとか、まだ夏目漱石を読んでないのに、この本からそんなことを考えさせられた。

  • 6月に、東京の、貨幣博物館に寄ってきて、子供達に会った時、夏目漱石の1,000円札があったので、眺めて野口英世と、比べてみた。

    この本を手に取った時に、お札の肖像と違って、何と、可愛く漱石氏が、表紙に描かれているのかと、、、、笑ってしまった。

    49歳で、亡くなったのだが、今の時代だったら、どのように過ごして、執筆していたのだろうか?と、思いながら、昔読んで、面白かった「吾輩は猫である」「坊ちゃん」等、、、
    最初の出だしを覚えてしまうほど、強烈な印象が、あった時代の事を思い出してしまった。

    この本の作者のように、小説はアートとしてとらえて読み進むなど、そして、小説は全部読まなくてよいと、書かれている。

    拾い読みをしてもいいとか、、、、
    今の学生の人達には、全部を読み切れと、言う方が無理なのかもしれないが、上っ面だけの読み方でなく、深層心理的にも、目を向けて欲しい。

    一字一句、難しい漢字に口語文は、難解かもしれないが、それも、知ることの楽しみとして、読んでみても面白いと、思うはず。

    簡単に本を読むことも、時間の無い若者たちには、必要なのかもしれないが、この時代の人は、こんなことをしていたのか?とか、人を好きになった時に、こんな心情になる人もいるのだとか、、、、自分の世界観に無い考えがあることに気付いて欲しいと、思う。

    少し、読みにくい部分もあるかもしれないが、親しみを持って、文学の世界に触れて欲しいと、思う所は、作者と、同じなのだが、、、何故か、ちょこっと違う視点が、あるように思えた。

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著者プロフィール

作家、近畿大学教授

「2011年 『私と世界、世界の私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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