- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309416007
感想・レビュー・書評
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坂本龍一のお父様は、熱く激しい編集者だった。
一人の小説家を世に送り出すということは
ただの職業ではなく、ほとんど出産に近いと思った。 -
坂本龍一の父親で、河出書房の文芸編集者として三島由紀夫『仮面の告白』など多くの名作を世に出した名編集者の評伝である。
著者は河出書房新社(一度倒産して新社になった)で坂本の下で働いた編集者だ。
本書を読む前に、私が坂本一亀について断片的に知っていた事実は2つのみ。
①『仮面の告白』の原稿遅延に対する坂本の督促は非常に厳しく、三島は徹夜続きで仕上げた。同作後半の粗さはそのためだと、三島は言っていたという。
②連合赤軍事件が起きたあと、学生だった龍一に対して「もしお前が人を殺すようなことがあれば、責任を取るためにお前を殺す」と言ったという。
要するに「コワい人」という印象があったのだが、本書を読むと、そうしたイメージ通りの鬼編集者であったようだ。
文学への情熱は真摯でピュアなものだったが、作家や部下に対しては時に暴君となり、容赦のない厳しさがあったという。
《坂本一亀は自分を極限状況に追い込むことで充足感を味わう人であったが、部下をもまた同様の状況に追い込むことを欲する人であった》
《正直にいえば、坂本一亀が上司でなくなったときに味わった解放感も事実である》 -
高橋和巳 埴谷雄高 野間宏 三島由紀夫など錚々たる作家たちの作品を手がけた坂本龍一の父親 一亀。
文学と音楽と領域は異なるが人間関係ではアノニマスながら自分の生きる分野ではまさしく雄弁に剛腕振るったクリエイターだったのだろう -
坂本龍一の死去でこの本を手にしたが、戦後文学史が書かれているようで大変興味深く面白かった。坂本龍一はこの父あっての偉大なアーティストだったんだろう。一読進めます。
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教授こと坂本龍一氏の訃報を機に思い切って積読本を読了しました。
河出書房の文芸誌『文藝』の元編集者にして「伝説の編集者」と呼ばれる坂本一亀氏がいかに戦後の名作家たちと渡り合い、彼らの著作を世に送り出してきたかについて、かつての一亀氏の部下であった方が著した評伝が本作になります。
野間宏、三島由紀夫、埴谷雄高、高橋和巳……。純文学には全く詳しくないのですが、戦後文学史に燦然と名を輝かす、いずれも一筋縄ではいかない個性の持ち主である彼らに「書かせる」立場であった一亀氏も相当一癖も二癖もある人物であったようです。
教授の父君が名編集者にして鬼編集者であったというのは本書を読む前から何となく存じていましたが、そのようにコテコテの経歴の父君の元からいかにして教授のような音楽で名を馳せる息子が誕生したのか? を知りたいと思ったのも、しばらく前に本書を購入したきっかけでした。
燦々たるラインナップの作家の面々に対して単なる執筆の伴走者や原稿の取り立て人という立場にとどまらず、並々ならぬ太さの信頼を築き上げ、まさに共同作業で作品を作り上げていく努力と執念の人であった一亀氏。
最終章で著者が記している通り、極めて優れた音楽のクリエイターである息子と同様、一亀氏もまた1人の偉大なクリエイターであったのだと、今は理解しています。
ただ、本作には、一亀氏が編集長在任期間中に名作は生み出しても利益を生み出すことはできなかったなど、出版ビジネスに携わる一会社員としては必ずしも成功したとは言えないとする考察や、部下にも軍隊流の命令口調で昼夜を分かたぬ対応を強いるなどのワンマンぶりも、元部下の立場からシビアに記されています。
そのような行動を昔気質、昭和のモーレツ社員(死語)と言ってしまえばそれまでですし、利益を生み出さないものやコンプライアンスを守らないものは評価されにくい現代=2020年代のビジネス常識ではあり得ないことなのですが、一方で、過去の遺物として貶めたり評価の対象外とするには違和感があります。
もちろん全く同じやり方を現代の文芸界に適用することはしてはいけないことだと思います。ただ、現代の編集者も恐らく、現代において可能なやり方で有望な作家たちにアプローチして向き合い、作品の創作過程に携わっているに違いありません。形は違えど、きっと今もどこかで伝説の編集者は生まれ育っている筈だ、と信じています。 -
── 田邊 園子《伝説の編集者 坂本 一亀とその時代 20030601 作品社 20180423 河出文庫》
http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4309416004
♀Tanabe, Sonoko 1939‥‥ 東京 /1961-1978 河出書房新社勤務
Sakamoto Kazuki 19211208 福岡 東京 20020928 80 /龍一の父/河出書房編集者
安部 譲二 作家 19370517 東京 /遠藤 瓔子の元夫/籍=直也
https://twilog.org/awalibrary/search?word=%E5%AE%89%E9%83%A8%20%E8%AD%B2%E4%BA%8C&ao=a
♀遠藤 瓔子 作家 19391128 神戸 /安部 譲二の前妻/きもの工房
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19391128 遠藤文庫 ~ 空飛ぶ金魚女 ~
坂本 龍一 作曲 19520117 東京 /4児の父 [B] 東京芸大客員“教授”
https://twilog.org/awalibrary/search?word=%E5%9D%82%E6%9C%AC%20%E9%BE%8D%E4%B8%80&ao=a
♀坂本 美雨 歌手 19800501 東京 /龍一&矢野 顕子の娘 [B]
♀矢野 顕子 作曲 19550213 東京 /旧姓=鈴木“アッコ”誠の前妻/坂本 龍一の後妻
矢野 誠 作曲 19470625 東京 /顕子の前夫
…… 坂本龍一の嫁の矢野顕子との離婚理由は宗教が原因?
https://芸能人の嫁特集.com/2018/11/09/坂本龍一...
矢野顕子が高校時代、父親の知人「安部譲二」の自宅に下宿しました
が、奥さんの「遠藤瓔子」がエホバの証人だったことが、矢野顕子が
エホバの証人になるきっかけになったようです。
(20190507)
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本の本
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息子の性格は父親譲りだなぁというのが読後の率直な感想。
文学青年というわけでもないので伝説の編集者といえども名前と教授(坂本龍一)の父親であることしか知らなかったが、担当していた三島由紀夫、野間宏ら名だたる作家の証言(というほどのかたいものではないけれど)によってその編集者像が浮かび上がっている。
前述したように息子のほうになじみがある読者としては譲り受けた「裏方志向」の教授がYMOに参加し、表にでることがなかったらどうなっていたのだろうかという思いをいだいた。
もとより本書の成立は、「坂本一亀の存命中に、子息龍一から、父が生きているうちに父のことを書いて本にしてほしい、という依頼があったことが発端」というのは少し驚いた。
しかし、『ファミリーヒストリー』でアカデミーショー受賞祝賀パーティーでようやく肩を並べて話せたと語る息子は嬉しそうだったことを思うと、父親に対して畏れの気持ちと敬う気持ちに加え深い愛情があったのだろう。 -
単行本は友人から借りて読んでいたが、NHK 「ファミリーヒストリー坂本龍一~父との葛藤 福岡藩黒田家に仕えた先祖~」の放送前の”予習”も兼ね文庫版を読んだ。