家と庭と犬とねこ (河出文庫 い 41-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309415918

感想・レビュー・書評

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  • わたしにとって石井桃子といえば「ドリトル先生」シリーズの下訳とエリナー・ファージョン作品の翻訳者。あの文体で綴られた生の人間の日常を読み、子供の自分と大人の自分が同じ空間にいっしょに存在するような、時空がねじれるような奇妙な感覚になった。

    明治生まれの女の人、少しでも時間があけばくるくると働くのが当然の時代の女の人の純粋で不器用な生き方が伝わってくる。少しでも時間があれば寝っ転がりたいわたしとしては、志が低くて申し訳ないような気持ちになった。この罪悪感は、たぶん自分は身の安全を第一優先に生きていて、それはつまらないと思っていることから来ている。だが、自分に石井桃子的人生は選びようもなかったこともわかっている。時間があれば寝っ転がりたい人間は、そうしなかった人の文章をときどき読んで、持てたかもしれない心のありようを想像して慰めを得ることができる。

  • 雰囲気買い。エッセイ。

    1945年から二年間に亘る百姓生活の話と、背中に傷をおった猫おキヌさんの話が中心……な感じ。

    一番印象に残ったのは「忘れ得ぬ思い出」という話。
    小学校の授業でカンジンこよりを皆で作っていると、要領が悪くて不器用な子が、ばか正直につなぎ目をしっかりつないだ切れないこよりを作ったという簡単な筋書き。
    でも、そのことがずっと残っていて、若い人のたかをくくった態度を見ると、この話をしたくなるという所まで読んで、印象に残った。

  • 児童書とは関係のない一面についてのエッセイ集だった。戦前〜戦後直後くらいの話が多かったのかな。さすがに知らない話だらけで面白かった。いつの時代も田舎の自然って人を引きつけるものなんだ…

  • 旅のおともに何か文庫本を、と思い出して書店に寄った。
    読みたいなぁと思っていた『幼ものがたり』は書店になかったので、人柄を知りたいしこの生活随筆集を選んで購入。

    季節のうつりかわり、子ども時代の豊かな時間、戦後すぐの東北での開墾生活、一緒に暮らした犬やねこのことなど。
    (カバー裏より)

    没後10年。
    児童文学界と埼玉の偉人。
    ペンを片手に机のそばで笑っている写真のイメージで、朗らかな方なんだろうなぁと思っていたら、イメージと違った。
    ときに感じる偏屈さは、純粋さゆえなのだと感じた。
    「しゃけの頭」、「つゆの玉」、「むらさき色のにおい」、あたりが印象に残った。
    「ひとり旅」(「透明になっていくような気持ち」)に共感し、慰めにもなった。
    前半は旅の電車に揺られながら、後半は自宅で腹這いになって読んでいたことを、この先覚えているような気がする。

  • 「山のトムさん」という映画を観て、現在が石井桃子さんということなので読んでみた。
    さすがの小気味良い文章で、心地よく読んだ。特に「ひとり旅」という一編が好き。「……その透明なからだのなかの心臓から泉のようならものが、こんこんと流れだしているのに気づいた。私は、どのくらいかのあいだ、死んだひとや生きているひとたちをだいじにしなければという思いに打たれて立っていた」
    この感覚、わかるような気がした。

  • 2020.7
    石井桃子さんの文章は正直で潔くてかっこいい。何か明るい。時々ぴしゃっと投げる言葉にはっとする。大事なものがここに全てあるような。信念を持って生涯働き続けた人。勇気と温かさをいただく。

  • 普段はたくさん本読みたいからどんどんページをめくっていくけど、この本はじっくり時間をかけて1ページずつゆっくり大事に読みたいと思った本だった。

    大事に思うことを大事にできること。思っててもなかなかできないからこそ、すごいなあ。色々と染みた。

  • 1948年〜2010年にかけて、新聞、雑誌、書籍等に発表されたものを2013年5月に河出書房新社から刊行し、それの数篇を入替え、再編集した55篇を2018年2月河出文庫から刊行。エッセイ集。内容的には昭和初期辺りのたいへんな時代を感じさせる話が多く、受け取りが、難しかったです。

  • プーさんなどの本を翻訳した方の、あちこちの雑誌等に掲載されたエッセイの寄せ集めなため、一貫性に欠いていて少し読み辛かった。時間も飛ぶし、経緯なども丁寧に説明されているわけではないし。それでも、翻訳をしながら少し農業をやり、動物を飼い…というのは私が今まさに憧れている生活なので、興味深く読んだ。石井さんの経験された農業は私が憧れてるものより全然本格的で、生ぬるいものではないけれど…

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著者プロフィール

1907年埼玉県生まれ。1951年に『ノンちゃん雲に乗る』で文部大臣賞受賞。1953年児童文学に貢献したことにより菊池寛賞受賞。童話に『三月ひなのつき』『山のトムさん』、絵本に『くいしんぼうのはなこさん』『ありこのおつかい』(以上福音館書店)、翻訳に『クマのプーさん』『たのしい川べ』『ちいさいおうち』(以上岩波書店)、『うさこちゃん』シリーズ、『ピーターラビット』シリーズ(以上福音館書店)など多数。

「2022年 『はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー KATY AND THE BIG SNOW』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石井桃子の作品

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