飢餓浄土 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 89
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412689

感想・レビュー・書評

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  • ここに書かれている話は徹頭徹尾、グロテスクなものを地で行くのですが、その中に感じる人間の強さや弱さ。はかなさやおかしさを思わせます。

    この本はあるWebサイトで連載されたものを書籍化にあたって大幅に改善したものです。内容はというと、世界各国、特に貧困地域でまことしやかにささやかれるうわさや、恐れられている幻、そして霊に関する話などをあつめたかなりグロテスクなものになっております。相変わらず、この人の本は読み手を確実に「選別」します。書いている本人にはそのつもりはないみたいですが。

    読んでいて僕がなるほどなぁと思ったのはフィリピンやミャンマーやインドネシアなどで、まことしやかにささやかれる日本兵に関するうわさ。それはいいものも悪いものも含めてですが、ここに書かれていることが現地の人間の間でまことしやかに今でもささやかれているという事実を知ったときにはなんとも言いようのない複雑なものを感じました。

    そして、最後のほうに書かれている現在は復興を遂げたルワンダのかつて起こったフツ族によるツチ族の虐殺事件に関するエピソードで、道端に打ち捨てられた死体を犬が貪り食っていたという話から、その辺に落ちてくる人骨を犬が拾ってくると、かつて自分たちが受けた、もしくはやってしまったことに関する傷跡がまたよみがえってくるということから、犬を棒などで殴るという話が掲載されていて、ルワンダは経済的なところでは復興して、

    彼らの中では表面上はあの事件はなかったことにして取り繕っていても、決して忘れることができないという深く、暗い闇の底をのぞき込んだような気がして、なんともいえない気持ちになったことを覚えています。

  • 僕らは世の中の出来事について、うわべと理屈だけで本質を理解したような気になってしまって、物事を見誤っていることが多いように思う。石井光太はささいな出来事についても、徹底的にフィールドで調査を行い、そのうえで結論を出すという姿勢を貫いている。その結果、本書に描かれているように、戦争や貧困の本質をも見事んいえぐりだしているのではないかと思うのだ。

  • アジア、アフリカの途上国の現実を幻想や流言といった精神面から斬り込んだルポルタージュ。

    石井光太の一貫したテーマとも言うべき貧困地に赴き、貧困の現実を捉えるだけでなく、現地の方の精神的な世界にも迫った興味深い作品になっている。

    第一章では、各地で今だに語り継がれる残留日本兵の亡霊の話からアジアの現実を浮き彫りにしてみせる。

    第二章では、アフリカやアジアの国々で様々な理由により抑圧される性の現実を描く。

    第三章では、戦争が遺した悲劇と呪術や呪いといった不可思議が支配を続ける現実を描いており、第四章では、今だに戦地に残る流言について描いている。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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