M/D 上---マイルス・デューイ・デイヴィスⅢ世研究 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309410968

作品紹介・あらすじ

東京大学における伝説の講義が、ついに文庫化。時代により変遷を重ねたマイルスの音楽世界を、理論はもとよりファッション、映画など、ジャンル横断的に論じた比較文化的マイルス論の決定版。上巻は誕生からエレクトリック期前夜まで。文庫オリジナル座談会には中山康樹氏も参加。

感想・レビュー・書評

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  • マイルスが”マイルス”になっていく過程が、ミュージシャンならではの勝手な共感の元にうまく解釈されていて面白い。リディアン・クロマチックと濱瀬理論によるそれぞれの『ソーラー』の分析が付録についていて貴重。

  • 第1章 マイルス・デューイ・デイヴィス三世誕生―1926‐1944(マイルス・デイヴィスの二〇世紀;イースト・セントルイスのセンチメント)
    第2章 ニューヨークの速度とビ・バップ―1945‐1955(都市/速度/スウィーツ;パリのリュクスと青春の高揚/失望)
    第3章 メジャー・デビュー、帝王の完成―1956‐1965(メジャー・デビューとオリジナル・クインテット;アンビヴァレント・アメリカの一九五〇年代;“都市音楽”から“汎都市音楽”へ;レヴォリューション/モード・チェンジ)

    著者:菊地成孔(1963-、銚子市、ジャズミュージシャン)、大谷能生(1972-、八戸市、評論家)

  • とにかくボリューミー。しかも上下巻。何度も怯んだけれど、ファッション、楽理、精神分析、交友録、ライバル関係など、あらゆる観点からマイルス・デイヴィスという人を分析していて飽きない。なによりこの人を論じるということは、ポピュラー音楽史を論じることでもあるのだからこの分量はさもありなんと納得。
    個人的に、上巻でもっとも衝撃的だったのは、ノラ・ジョーンズがあの、ビートルズも私淑した伝説のインド音楽家ラビ・シャンカールの隠し子かもしれないという説。こんなトリビアも満載。

  • 持っているのは文庫ではなく(ご本人曰く)レンガのようなハードカバーの本です。

    まず装丁の美しさは、持っている本の中ではダントツかもしれません。

    読み応えは十分。

    楽器や音楽の経験があったほうがのみこみやすいかもしれませんが、そうでなくてもジャズの巨星MD(マイルス・デイビス)がより面白く、そして身近に感じられることでしょう。

    星が一つないのは、本が厚いので、寝ながら読んだり、読書の場所が悪いとせっかくの美しい本を破壊しそうで怖いからです。

  • 2005年東京大学教養学部で行われたジャズの帝王、マイルス・デイヴィスの講義録。ハードカバー版は出版社が倒産しており希少本、アマゾンでも高価だった。書店で文庫本を見つけたので、早速購入。『憂鬱と官能の学校』、『東京大学のアルバート・アイラー』、『アフロディズニー』彼らの講義録全部好きだった自分にとっては、期待通りの良書でした。以下内容のまとめ。

    <誕生から1940年代>
    ・マイルス・デイヴィスは1926年生まれ、セントルイスで裕福な少年期を送る。白人上流階級同様の豊かな生活は、他の貧しい黒人ジャズメンとは異質の環境だった。
    ・地元でトランペットを吹いている時、演奏旅行でやってきたチャーリー・パーカーと競演、天才チャーリー・パーカーの演奏に感銘を受ける。
    ・18歳でニューヨークへ。ジュリアード音楽院に入学。当時のニューヨークは、太平洋戦争最中だが、戦争とは無関係に繁栄していた。マイルスは夜な夜なチャーリー・パーカーとつるみ、バップの演奏家としてキャリアを開始する。

    <1950年代>
    ・激しいバップは、マイルスの演奏スタイルに合っていなかった。マイルスは、自分のスタイルにあったクール・ジャズの第一人者に成長。音量を抑え、マイクにささやきかけるように吹くマイルスのミュートトランペットは、人種と階級を越えた、都市生活者の夜の孤独を表現した音楽として注目を浴びた。
    ・ジョン・コルトレーンらと第一期黄金クインテット形成。
    ・コードに対するモード演奏の開始。コードは、音符の縦の積み重ね、垂直的価値演算、ハーモニー、リズム一定。モードは、音符の横の連なり、水平的価値交換、リズム複数混在(ポリリズム)。ベース、ドラム、トランペット、サックスが、音の連なり=価値を水平的に交換していくのがモード奏法。
    ・モード奏法の傑作『カインド・オブ・ブルー』を1959年に発表。コード主体だったバップを超越。ジャズの帝王となる。

    <1960年代>
    ・バップ=コード演奏を超越する別の方法として、フリージャズが台頭する。盟友コルトレーンは、フリージャズと宗教倫理に傾倒し、自殺。
    ・音楽構造を感知する能力が高いマイルスは、フリージャズなんてデタラメだ、フォームがないとフリージャズを批判。ウェイン・ショーター、ハーピー・ハンコックらと第二期黄金クインテットを形成。モードジャズの傑作を発表していく。
    ・しかし、音楽産業は、ビートルズの登場によって、根本から構造転換していた。ビートルズの世界的大ヒットによって、それまでは子どもの遊び的に考えられていたヒットチャートが、世界規模のビジネスになる。
    ・黒人音楽ではそれまでジャズが主流だったが、60年代はモータウンがヒット。ソウル、ファンク、ロックに押されて、ジャズは黒人の若者が聴く音楽ではなくなっていく。多くのジャズメンがレコード会社から首を切られるようになる。
    ・60年代のマイルスは、ロックやソウルに背を向けて、ジャズファンに向けて、完成されたモード・ジャズを作り続けた。マイルスの電子化は、時代変化から遅れて、70年代に本格化する。(以下下巻へ)

  • 2011/10/16 購入
    2011/10/25 読了

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著者プロフィール

ジャズ・ミュージシャン/文筆業。

「2016年 『ロバート・グラスパーをきっかけに考える、“今ジャズ”の構造分析と批評(への批評)とディスクガイド(仮』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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