蓮と刀: どうして男は男をこわがるのか (河出文庫 136C)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309401607

感想・レビュー・書評

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  • 軽薄な文章で積み上げられて行く確かな知識の理論。
    ここまで潰されたら何も言えんだらうなフロイト論者も。
    少しそれはどうなのと思う部分もあるけれど、オカルトを開けて見たらこんなものかになるのだろうし。
    心理学ってまだ書くもんとしては浅く、いろいろわかってるとはいえ、大元のものは闇のままなのよね。
    それを私とそれ意外という形で切り離して見比べる。それが心理学。
    この部分はすごい、けれどそれを形にした時にゆがんでしまった。
    それを読み解くのがこの本。まあ答えに向かった話しているので、フロイトの論同様に一本のように見えてゆがんではいるのだけれど。
    こう言った形でかきすすみ、その論を実践するまではさすが。

  • とても刺激的で知的で面白かった。自分が生まれる前にこんなモノを書ける人がいたなんて。
    小説家としての橋本治はちょっと受け付けられなくて、ずっと離れていたのだけど、随筆の方には俄然興味が 湧きました。色々読んでみたい。

    彼の言う"ぼっちゃん"の成れの果てが、今日本を振り回しているデカイ幼児たちなのだろうなと思って、笑えるやら悲しいやら。

    現代ではLGBTQと言われる人たちがいるけれど、この知識でアップデートされた橋本治は、同じテーマでどんな文章を書くのだろう。読んでみたかったな。

  • 十九世紀というのは、哲学者が立証という形で根拠を必要とした時代なのね。立証を求める媒体がちがったから、生物学者になったり博物学者になったり心理学者になったりしただけの話。もっと極端な話をすれば、哲学者という私立探偵が安楽椅子探偵から行動派探偵に変ったというだけの話。

  • 『秘本世界生王子』(河出文庫)に収録された「ソドムのスーパーマーケット」の続編企画として書かれた作品で、現代日本の男たちのホモフォビアを批判し、同時に雑誌『さぶ』の読者交流瀾の自己紹介文に対しても鋭い批判の矢を放った本です。

    本書は、フロイトの精神分析の根底にあったのが、彼自身の父親に対する「恐怖」(著者はこれを「恐怖」と言い換えることの欺瞞性を告発し、「おとうさんがこわい」と記しています)だったことを指摘するとともに、この問題がその後の精神分析家たちに引き継がれていったことを、エーリッヒ・フロムの『フロイトを超えて』の批判を通して解明します。さらに土居健郎の『「甘え」の構造』と土居が分析の対象とした夏目漱石の『こころ』を俎上に上げ、とくに『こころ』の「先生」と「私」に流れていた「同性愛的感情」(著者はこれを同性愛「的」と表現することの欺瞞性を告発し、「ホモ丸出し」と記しています)を浮き彫りにしていきます。同時に著者は、こうした分析を通して、現代日本の男性たちを「おじさん」と呼び、自分が一人立ちできずにいるという問題を自分の外側に預けて平気でいることを舌鋒鋭く批判します。他方で著者は、ゲイたちの自己意識のありようにも容赦のない批判を向け、「ホモほど寂しいものはない」と述べたうえで、寂しいセックス観をくつがえしつつ、「仲良くなること」は気持ちのいいことであり、もっと仲良くなりたいと思えば(男と)「寝ればいい」という結論を提出します。

    著者自身が本書執筆時に知っていたのかどうかわかりませんが、フロイトの精神分析の根底に彼自身の父親に対する愛憎が存在したことは、現在では広く認識されています。そのため、著者の議論を威勢がいいだけの素人談義だと即断してしまう読者がいるのではないかと恐れるのですが、初期の著者の作品に特有の過激な文体の奥にある、ひととひととのコミュニケーションについてのラディカルな、しかし気づいてしまえばいたって当たり前の発想にこそ、読者は目を向けるべきなのだろうと考えます。

  • 「男はみんな男と寝るべきだし、可愛い男の子はみんな俺と寝ようヨォ!」という主旨のもとに軽薄な文体と広範な知識と精密な論理がひたすら積み重ねられていて奇書だなあ

  • フロイトの文章のちょっとした食い違いから、フロイトの論理的な誤魔化しを鋭く突いたり、そこから夏目漱石の「こころ」がゲイ小説だなんて飛躍してみせたり、日本社会の男の分析までやってのける様は圧巻。橋本治は凄い。

  • ゲイ論考
    「こころ」分析は、切れ味鋭く明解。

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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