現代アートとは何か

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309279299

感想・レビュー・書評

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  • アートジャーナリストとして、今のアート界の現状について詳しく取材し、本のタイトルである、現代アートとは何かについてをわかりやすく語っている。庶民には知り得ない、アートの舞台裏(学芸員、キュレーター、富豪、政治との関わり)について、ここまでしっかり、わかりやすく書いて伝えることのできる人が他にいるだろうか?批評でありながら平易な文章で書かれていて、ぐいぐい読めてしまう。値段以上の価値がある、2018年の買ってよかった本の1冊。

  • 読んでいる時にちょうどトーハクで「デュシャンと日本美術展」が開催されており、「泉」と利休の花入れの写真が並んだポスターが貼られ、「日本美術が蛇足、こじつけ、また日本スゴイか」などとブーイングを浴びている。
    本書は現代アートの父がデュシャンで、現代のアートはすべてデュシャンのレディメイドから始まった、と賞賛すると同時に、まさに「千利休との共通点」を書いている。切ってきた竹をアートに見立てるのは「デュシャンと同じ着想を300年前の日本でやった」とも。一瞬、犯人はお前か!と思ったが、デュシャンと利休並びに日本美術を並べる話法はアート界の”伝統芸”なんだなと知る。デュシャンは、レディメイド、下ネタ・エロの導入等アイデアは画期的だが「それだけ」という印象ではあるのだが。
    閑話休題。
    いちアートファンとして参考になった。特に前半の業界話、プレイヤーのあり方やカタール王室が現代のメディチ家であるということ。後半はアートの見方を論じる。創作の動機が「新しい視覚・感覚の追求」「メディウムと知覚の探究」「制度への言及と異議」「アクチュアリティと政治」「思想・哲学・科学・世界認識」「私と世界・記憶・歴史・共同体」「エロス・タナトス・聖性」という7種で、チャート化して見るというアイデアも。(もっとわかりやすくキャッチーな表現にできなかったのが残念なところ)
    ボリス・グロイスの言葉「今日の芸術家はもはや生産しない、あるいは生産することが一番重要なのではなく、選別し、比較し、断片化し、結合し、特定のものをコンテクストの中に入れ、ほかのものを除外するのである。言い換えれば、今日の芸術家は、鑑賞者の批判的・批評的な眼差し、分析的な眼差しを我がものとするのである。」これは的を射ている。
    ともあれ現代アートがウケず、日本美術展や国立の美術館で開催されるジョジョ展が盛況、行列となる日本。冒頭ヴェネツィアでパーティに出席して知り合いに会う話に始まり、会田誠と酒を飲んだりChim↑Pomに電話する話が散りばめられ「僕は”業界人”です」というスタンスによる内輪の盛り上がりという感じもした←失礼

  • 現代アートを理解するために必要な視点を「マーケット」「ミュージアム」「クリティック」「キュレーター」「アーティスト」「オーディエンス」の6つに分け、グローバル資本主義社会における現代アートのルールを解き明かす。


    『巨大化するアートビジネス』(紀伊国屋書店)が面白かったので、さらに最近書かれた本を探して出会った。前掲書はビジネス目線の本なので省かれていた〈現代アートの評価基準〉を、本書はじっくり教えてくれる。
    「理論家が力を失っている」と語られる「クリティック」の章。反対に、アーティーストにとって今日のアートはすべてがコンセプチュアルであり、アートは理論を求めているとする「アーティスト」の章。そして、デュシャンがレディメイドを発明して以来、アーティストは「選択し、命名し、新たな価値の付与」を行うという点で、鑑賞者に一歩先んじているに過ぎないと語る「オーディエンス」の章。この三章は現代アートの定義を整理してくれる。
    一方で、アーティストが行なっているのは大雑把に言えば「プレゼン」であり、そのプレゼンに美術史への目配せがないとアートとして位置づけてもらえないという話なら、批評がなぜ衰弱してしまったのか疑問でもある。アーティスト自身が理論家となり、オーディエンスが能動的解釈者として関わることで、権威的な批評が成り立たなくなったのか。
    本書では現代アート界で評価されるためのアティチュードを丁寧に解説してくれるので、村上隆やChim↑pomの立ち位置もやっとわかってきた。同時に、それはどうしようもなく西洋中心主義な評価軸でもある。現在、世界で1、2を争うアートコレクターだというカタールの王家も、そのコレクションの選別基準はヨーロッパにべったりだという。
    この潮流を変えようとしたのが、1989年にジャン・ユベール=マルタンがキュレーションした『大地の魔術師』展と、ヤン・フートがキュレーションした『オープン・マインド』展だった。この二大キュレーターにフォーカスした章は、時代を知る人のルポルタージュとしてとても面白いし、展示を見たくなった。冷戦終了と同時に現代アートのグローバル化と脱エリート化が始まったというのも興味深い。

  • 業界について辞書的に出来事を知るには良かったけれど、もうちょっとアートのことについて掘り下げられていたらなあ、と持ったりしました。でもこうやって表面だけ見るのが現代アートなんだよというのであれば、そうなのか、と納得します。

  • 愛知トリエンナーレをプロデュースしたディレクターによる現代アート産業俯瞰図。現代アートを形作る画廊やオークションハウス、アート・バーゼルやベネチア・ビエンナーレの舞台裏が描かれる。一般生活ではアクセスできない美術産業界を垣間見れる貴重なモノローグではあるが、舞台の内側の人間であるはずなのに、美術産業界に対する嫌悪感が見え隠れして、エンターテイメント教材として読めなかった。

  • 記録

  • コンテンポラリー アートは現代美術ではなく、現代アート。
    前半はアート界の様々な業界話。
    知らない作家を調べながら読むのでなかなか読み進まなかったが、知識が増えた。
    後半は現代アート論で、目からウロコ。
    現代アートの3大要素は、インパクト、コンセプト、レイヤー。そして7つの動機。
    アートの価値を決めるのは個々のアートラバーになりつつある。
    日本の問題点にも言及。かなり辛口だけど事実かも。
    ビジネス書のような切れ味で明快。面白かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/704015

  • グローバル社会における現代アートの常識=本当の姿を描きつつ、なぜアートがこのような表現に至ったのか、そしてこれからのアートがどのように変貌してゆくのかを、本書は問う。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1335548

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著者プロフィール

1955年生まれ。編集者。『03』、『ART iT』、『Realtokyo』編集長を経て、現在「Realkyoto」編集長、京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。編著書に『百年の愚行』ほか。

「2018年 『現代アートとは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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