イラストで読む ギリシア神話の神々

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (135ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309255743

感想・レビュー・書評

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  • ときどき絵画展に行ってみると、その色合いに癒され、繊細な筆づかいに驚き、なんともいえない幸せな気分になる。
    でも聖書やギリシャ神話の題材もけっこうあって理解するのはなかなか大変だ。とはいえ……画家がつけたその絵のタイトルや背景を少しでも知っていれば、もっと世界観が広がって、より楽しめそうな気がしている。

    この本の筆者も、はじめはぐちゃぐちゃとしたギリシャ神話を理解することに一苦労だったと嘆いている。
    で、私ははじめも今も久しく混乱し続けている(笑)。
    だから作者は神々とその物語をわかりやすいイラストにして説明したらしい。なんとありがたい、これがかなりおもしろくて、家系図もあり、イラストの細かい描写や欄外の小さな呟きに思わず笑ってしまう。ヘルメス神の靴にはかわいい翼が生えていたり、最高女神ヘラの背景は大輪のバラ! ならぬ、孔雀羽がもりもり描かれていたり、女神アテナがメデューサの首をスマホのチャームよろしく携帯しながらほくそえんでいたり……イラストの細かいディティールを発見するのも楽しい。

    ギリシャ神話は最高神ゼウスを頂点とした個性的すぎる神々の物語で、結構人間臭くておもしろい。父クロノス(ティタン族)VS息子ゼウス(とその兄弟姉妹ら)の血みどろの覇権争いの末、勝利したゼウスは権力を手中にする。そっか~だからティタン族はどれもこれも不遇な扱いをうけているわけで、地底タルタロスに閉じ込められたり、カウカソス山に縛られ鷹に肝臓を食われたり(プロメテウス)、西の果てで天界を支え続けたり(アトラス)……その罰もすさまじい。

    ゼウスはあちらこちらで女性をつくっては子を生す。そのひとつひとつの物語がおもしろいうえに、その子らの物語もドラマティックだ。彼は白鳥や牛に変身できるけれど、黄金の雨に変身したのにはさすがに呆れた。そうして美女ダナエと交わるストーリーも劇的で、あのティツィアーノやレンブラント、クリムトといった画家たちもこぞって描いていて、絵画もカラーで紹介されている。

    そのダナエの生んだ子が有名なペルセウス。ヘルメス神から翼のある靴を借りて飛び回り、アテナ神から最強の盾をかり、全身レンタルづくし。見るものすべてを石にするというメデューサと対決するシーンはなかなか手に汗にぎる。絵も紹介されていて、この本はつくづく絵画の解説本みたいだ~。

    また巨人のティタンは「タイタニック」の語源となり、怪鳥セイレーンは「サイレン」の語源らしい。セイレーンは美しい歌声で旅人を幻惑して食い殺してしまう妖女で、なるほどサイレン、要警戒だ。オデュッセウスは船旅の最中に自身をマストに縛りつけ、耳栓をしてセイレーンの魔の手から逃れた――このシーンの生々しい混乱ぶりも絵になっていておもしろい。

    また有名なブランド・エルメスの語源は、ヘルメス神からきたものらしい。エルメスは高級すぎて手がでないけれど、ヘルメス神のやんちゃぶりは本を開けばただで出会える! ヘルメスはわたしのお気に入りの一人で、軽妙で茶目っ気のある神で、伝達や仲介、コミュニケーションを司る今ふうの神だ。さらに詩歌の女神はムーサあるいはミューズ(muse)と呼ばれていて、そこからミュージックやミュージアムといった芸術にちなむような言葉が誕生しているらしい。ほぉ~目から鱗が落ちる思い。

    どれも神話は男や女がわらわら出てきて混乱するけれど、とりわけギリシャ神話は絵画でも彫刻でも、あらゆる芸術、小説や言葉の数々……網の目のようにどこまでも広がっていて、どこかで必ずつながっているおもしろさがあるからやめられない。
    作者の漫画仕立てのイラストは笑えて秀逸なので、興味のある方はぜひどうぞ(^^♪(2023/9/17)

  • 『少年少女世界の名作文学』で夢中になって読んだギリシャ神話を、大人の目でもう一度味わいたくなった。

    「神話の大筋を理解しよう」をテーマに書かれたこの本は、神々のプロフィールや物語をイラストで紹介してありとてもわかりやすい。

    まず「人物相関図」を見てびっくり!
    姉弟関係にある父クロノスと母レアの間に生まれた末っ子ゼウスは、正妻ヘラ以外に多くの愛人を持つ。 おばにあたるテミスやムネモシュネ、姉のデメテルとも関係し子が産まれている。12神の中のアルテミスとアポロンの母レトは彼のいとこだった。これが"神話では普通のこと"だというから驚く。美しいとばかり思い込んでいた神話は愛憎渦巻く物語だった。

    名画の謎や星座になったいきさつもコメントがわかりやすい。
    ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」や
    ティツィアーノ「ヴィーナスとアドニス」など、物語絵の背景を知っていれば名画鑑賞がより楽しめそうだし、彫刻の知識も少し増えた気がする。

    「トロイ戦争」は最後にしっかり書き込まれてある。沢山の参考文献をもとに一冊の本にまとめられた著者の苦労がうかがえた。

  • 杉全美帆子のイラストで読む美術シリーズ制作日誌
    http://sugimatamihoko.cocolog-nifty.com/

    イラストで読む ギリシア神話の神々 :杉全美帆子|河出書房新社
    http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309255743/

  • ヨーロッパの美術館に行って説明書きを読んでも人物の相関関係だったりストーリーだったりが断片的でモヤモヤしていつか体型だってまとまって知りたいと思っていたので、漫画で書かれていて本当に分かりやすかった。途中途中で実際の画家が描いた絵の挿絵もあり見た事のある絵も多くて良く流れが分かった。
    神々の名前が例えばゼウス、ユピテル、ジュピターと言ったように同一人物でギリシア語、ローマ語、英語で全く呼び名が異なるのも混乱する一因。
    また画家によって同じ人物の神様でも見た目が違うのが、お側に控えてるシンボルの道具とか動物とかの説明がきも分かりやすかった。
    それぞれの神々同士の関係図も詳しく書かれていて、えっ!そこ親子?ここは兄弟?みたいなのが随所にあった。

    それにしても神様達の、浮気、略奪愛、怨み、嫉妬、殺人、極刑、近親相姦…、とても神様とは思えない行為に逆に人間臭いと面白く読ませてもらった。
    一番の衝撃はメディアの話かな…

  • 何回読んでも面白い。マンガでコミカルに描かれてるので初心者向けで分かりやすいです。中でも冥界の王ハデスとデメテルの娘、ペルセポネのお話が好き。

  • ギリシャ神話とローマ神話のなにが違うんだ?
    アフロディーテとヴィーナスの違いは?
    という素朴な疑問からスタートしたので、わかりやすそうなイラスト入りの本書を手に取ったが、大正解だった。
    ギリシャ神話の最初の始まりから、有名なゼウス達オリンポス12神の話が網羅してあり、しかもギリシャ/ローマ/英語別の呼び方や絵画でのシンボルが記載してくれていたので、疑問が一つ解けた。

    ゼウスとユピテルとジュピターは呼び方の違いで同一人物なのね。

    そして、惑星がギリシャ神話から名前を取ったという話もここで納得。
    アース(地球)→ガイア、テラ
    マーズ(火星)→アレス、マルス
    マーキュリー(水星)→ヘルメス、メルクリウス
    ヴィーナス(金星)→アフロディーテ、ウェヌス
    ジュピター(木星)→ゼウス、ユピテル
    サターン(土星)→クロノス、サトゥルヌス
    ウラヌス(天王星)→ウラノス、ウーラヌス
    ネプチューン(海王星)→ポセイドン、ネプトゥヌス
    プルートー(冥王星)→ハデス、プルート

    ただでさえ登場人物多いのに、そりゃ混同してわからなくなるよねー!

    ◇印象的なエピソード
     ・本当の最初はガイアだった話
     ・ヴィーナスの誕生の絵画のシーンって…親父が息子にちょん切られたシチュエーションだったのか!!!
     ・人間を作ったプロメテウスがプロローグの語源
      しかし、その代償はかなり残酷
     ・英雄ヘラクレスの壮絶な死に際 
     ・美しい髪の毛のメデューサ、ポセイドンとアテナの神殿でいちゃついたばかりに化け物にされる
     ・鍛冶の神ヘパイストス、捨てられたヘラに報復し、ちゃっかり美の神を要求する
     ・黄金の雨に変身したゼウスと交わり妊娠したダナエ


    ○オリンポス12神
     ・ゼウス:主神。電雷、王笏、鷲がシンボル
     ・ヘラ:最高位の女神。結婚、貞淑、出産を司り、孔雀、カッコウ、牡牛、王冠がシンボル
     ・アポロ:芸術、音楽、医術など色々。月桂樹の冠、竪琴、銀の弓矢がシンボル
     ・アルテミス:狩猟、繁殖、自然を司る。ミニスカート、金の弓矢、鹿がシンボル
     ・アフロディテ:愛、美、多産を司り、ホタテ貝、バラ、鳩、黄金のリンゴをシンボルとする
     ・アテナ:戦争、学芸、工芸、織物を司る。メデューサの首の盾、フクロウ、オリーブの枝がシンボル
     ・ヘパイストス:火と鍛冶の神でやっとこ、かなづち、鍛冶の道具がシンボル
     ・ハデス:死者の国、冥界の王。ケルベロス、糸杉、メンフクロウがシンボル。
     ・デメテル:豊穣と穀物、農業の神。小麦、麦穂、ミント、キジバトがシンボル。
     ・ディオニュソス:酒、狂気、陶酔、ブドウの栽培、演劇の神。葡萄、蔦、イチジク、豹の毛皮がシンボル。
     ・ヘルメス:商人、旅人、盗賊詐欺の守護神。シンボルは旅人の防止、翼のついたサンダル、伝令杖ケーリュケイオン。
     ・ポセイドン:海界の王。イルカ、三又の矛、海洋生物いろいろがシンボル。
     ・アレス:破滅的な戦争などを好む戦の神。槍や武具がシンボル。

  • 2019/09/14

    わかりやすい…?とはいえど
    やはり神々は我々凡人人間にはわからん!
    エピソード多め、名前だけは知ってる神のことをより深く学べる一冊

  • 2022年、一冊目はこちら。

    ギリシャ神話のことがわかりやすくイラストでまとめられた一冊。
    物語と名画が同時に勉強できるというのも魅力。

    中野京子さんの「名画の謎」を読んで以来、ギリシャ神話の面白さに惹かれました。
    なんといっても、神々や英雄(神と人間が半々)たちのキャラクターの人間臭さよ!
    決してイエスキリストのように神聖なものではなく、ゼウスを筆頭に、浮気や嫉妬などのいざこざ、争いが絶えない。
    毎回突っ込みたくなるほどにこんなことばかり繰り返しています。

    ゆるめのタッチの漫画なので、若い人たちにもオススメしたい。
    名画を見ると固く感じるけど、ギリシャ神話の中身は色恋沙汰が多く、もう呆れるような人(神)たちばかりです。
    そこが面白いんだけど。
    個人的には、主役を張る物語はないものの、色んな場面で顔を出すひょうひょうとしたヘルメスがツボ。

    ゼウスが誕生する以前のガイアの話から、オリンポス12神を中心とする神々の物語まで、順を追って漫画で描かれている。
    登場人物たちもかなり多いが、相関図や説明がその都度描かれておりとても親切。読み終わる頃にはもう把握できている。
    (ゼウスは気に入った女性と結ばれるため雨や雲にも変身してしまうほど浮気性のため、彼の子孫が圧倒的に多い。そして正妻ヘラの復讐が引くほど怖い)

    パンドラの箱や、トロイの木馬やメデューサなど、言葉が独り歩きして有名な物語、
    プロローグ、エピローグの語源となった人物の話、エコーやナルシスの語源、オリオン座の誕生秘話…
    など、これって、ギリシャ神話が元になっているんだ、と改めて知ることが出来た。

    そして、ゴヤ、ルーベンス、クリムト、レンブラント、ティツイアーノ、モロー、カラヴァッジョなどの名画も各エピソードのページに掲載されており、「ああ、この絵はこのシーンが描かれていたのね!」と、神話と同時に理解することもできた。

    この「イラストで読む」シリーズは、他にもあるらしいので、読んでみたい。

  • 海外文学や美術・絵画を理解したいがために、今一度神話やら宗教やらの勉強をしているところで出会った本。他書も読んでいて理解しやすかったせいもあるのか、こちらの本はクスクス笑いながら読めました。

    肝心の内容としては、要所が押さえられており絵画とも合わせて紹介されていたので私にはちょうど良かったです。ぼんやりとしかわかっていなかった神話のエピソードが、「こういう話だったのね」と合点しました。同じような感じで、海外文学作品との紐付けがあるといいなと思いました。

    書いてあるイラストや言葉の一つ一つがクスッとした笑いを誘っており「イラストで読む〜」の他のシリーズも読みたくなってしまいました。

  • 著者のはじめにでも書いてあるようにギリシャ神話の様々エピソードに名画を載せて理解しやすいものになっていました。美術館行くのが楽しみになりました。ギリシャの導入としてはわかりやすいと思います。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。女子美術大学絵画科洋画卒業。広告制作会社でグラフィックデザイナーとして働く。イタリア留学し、08年アカデミア・ディ・フィレンツェを卒業。著書『イラストで読むルネサンスの巨匠たち』など。

「2023年 『イラストで読む 奇想の画家たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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