植物はそこまで知っている ---感覚に満ちた世界に生きる植物たち

  • 河出書房新社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309252803

作品紹介・あらすじ

視覚、聴覚、嗅覚、触覚、位置感覚、そして記憶-多くの感覚を駆使して高度な世界に生きる植物たちの知られざる世界。

感想・レビュー・書評

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  • ステファノマンクーゾ氏の「植物は〈知性〉を持っている」という本に似ている。
    この本のいいところはエピローグだと思う。

  • 植物には脳こそないが、環境を認識し、適応する。

  • 最近、良質なサイエンス・"ノン"フィクションに出会う機会が増えたような気がする。なぜか、アジア出身の著者が多い(印象がある)。『がん』、『死すべき定め』などは、インド出身の医師、研究者だし、この本は、イスラエル出身の研究者だ。

    それにしても、なぜ、本書のような「科学の歴史的な記述」に、こんなにもわくわくするのだろうか。

    世の中に存在する、多くの「不思議」に、科学は、仮説というかたちで説明を試みる。多くの場合、仮説は1つではなく、別の研究者が、別の仮説、別の説明を試みる。それらを検証する中で、また、別の仮説が出てくる。まさに、テーゼ vs. アンチテーゼ ⇒ アウフヘーベンの躍動そのものだ。その動きの中で、これまでの「常識」を覆すような、新たな「説明」が登場する。「パラダイムシフト」のご登場だが、われわれ一般ピープルには、そのダイナミックさ、「凄さ」が、なかなか見えない。教科書には、その「常識」だけが載っていて、あたかも昔から、その考え方が普通だったかのように。地動説 vs. 天動説の対立を思うと、それがいかに凄いかはわかる訳だけれども、まぁ、普段はそんなことを意識しなくても、生活するのは困らないし・・・である。

    本書を読むと、道端の雑草が、周りの環境を、どう認知して、それらにどう対応しているか。その「不思議」に、ダーウィンをはじめ、多くの科学者が解明に取り組んできたことがみえてくる。植物学全体からしたら、ホントに一端の一端だと思うけれど、その解明の一端を垣間見ると、1本の雑草を見る見方が、本当に変わる。そんなワクワク体験をくれるのが、良質のサイエンス・ノンフィクション。また、そんな一冊に会うことができた。

    蛇足

    逆に言うと、「常識」を教える先生は大変だなぁと思う。本当は、その「常識」の裏にワクワクするストーリーがあるのに、そんな話をしはじめたら、時間がいくらあっても足りないし・・・

  • 植物に五感があることを科学的に説明して面白かった。(ただし、聴くことは科学的に証明されていないし、必要もないという結論だが。)

    視覚: 明るさを検知する
    嗅覚: 空気中のある種の科学物質を検知する
    触覚: ハエトリグサは有名
    平衡感覚: 上下がわかる
    記憶: 短期、長期、エピジェネティクス(遺伝子の配列は変えず、活性状態だけを変え、子にも伝える)

    ただ、人間の感覚とは違うし、知性はないので感じたことを解釈はできない。

  • ダニエル・チャモヴィッツ(矢野真千子訳)『植物はそこまで知っている』河出書房新社、2014年を読んだ。

    植物の感覚について書いた本である。

    11種の光によって反応をかえるとか、エチレンなどの空中微量化学物質を「嗅いで」反応するとか(実が成熟する)、根冠に重力センサーがあるとか、なかなか面白かった。

    とくに、触覚と記憶を扱ったところは驚きだった。
    植物は一般に触ると「ストレス」を感じ、電気信号を送る。茎を太くし、丈が大きくならないようするなど、生理的反応をかえる。

    で、これは遺伝子の活性を変化させるそうである(遺伝子が変異するんじゃなくて、活性がかわる)。そして、こうした「エピジェネティック」な「記憶」は遺伝するそうである。
    これは、ラマルクの進化論「獲得形質の遺伝」そのものだそうだ。ラマルクの進化論は、ルイセンコ論争のように社会主義生物学では一時期もてはやされたが(要するに、労働によって人類は進化するとやりたい人々にうけた)、遺伝子レベルでは否定されている。しかし、遺伝子の活性(遺伝子の周りにあるタンパク質の変化)に注目すると、個体が獲得した環境の「記憶」は遺伝するんだそうだ。

    なお、いい音楽を聴かせると生長がよくなるというのは、カウンターカルチャーの時代に発表された意見だが、科学的実験はなく、確認されていない。そもそも移動できる動物には、聴覚は必要だが、植物が音に反応する必要はないのではないかと書いてある。

  • 人間の5感や記憶などに相当する機能を植物も持っている?!、という最新の研究内容の紹介。
    ゲノムのレベルで植物と動物・人間にも共通の部分が発見されているとか。
    種が全く違うので作用の仕方は当然違うものの、素人から見れば、「ああー、何となく分かるような気がする...」的な発現の仕方に見えたりするから面白い(学者間でも異論は少なくないらしいが、それはそれ)。
    人間とは全く違う方法で?ではあるが、「記憶」に相当するものも持っており、世代を超えて保持されるってのも面白かった!

  • 植物がどれほど周囲のことを感じているか、驚かされるばかりだ。植物には光に向かって曲がる屈光性がある。さらに光を浴びている時間によって花を咲かせたりすることを光周性という。植物は色の違いを区別していて、青い光で屈曲する方向を知り、赤い光で夜の長さを測っているようだ。光をどのように感じるかというと、シロイヌナズナには少なくとも11の光受容体があり、あるものは発芽のタイミングを知らせ、あるものは光の方向へ屈曲するタイミングを知らせる。植物も人も、受け取る器官が違うだけで光を感知しているのは一緒だ。
     また、二十世紀初期、フロリダの農家では倉庫に保管した果物を熟れさせるため、石油ストーブで倉庫内を暖めていた。当時は熱により、果物が熟していると思われたが、石油ストーブの代わりに電気ストーブで暖めるようになったら、さっぱり果物が熟さなくなった。
     実は、石油ストーブの煙にエチレンという物質がわずかに含まれており、純粋なエチレンガスにさらすとどんな果物でも熟し始めることがわかった。つまり果物は「エチレン」の匂いをかいで反応していることになる。なぜエチレンで果物が熟すかというと、種子の拡散を確実にするためと考えられる、と述べている。果物が熟すとエチレンガスを発するが、それを別の果物が嗅ぎ、次々と熟していく、ということで、熟した果物のマーケットが開き、動物を呼び込むことができるからだ、という意見だ。
    さらに植物には触れられると活性化する遺伝子、TCH遺伝子があることが発見された。オジギソウ、ハエトリ草、オナモミなどが、触れると動く反応をするわかりやすい植物である。これらも、植物が接触を感じていることの証拠である。
    さらに、植物は「平衡石」によって重力を感じ、FLC遺伝子によって寒い冬があったことを覚えていることもわかってきているらしい。
    上記のように、植物は人の感覚とは全く異なるものの、様々な外的な刺激を受け、反応している、いわば世界を見ている、嗅いでいる、触れられている、記憶している、という驚きを本書は教えてくれる。
    新鮮な視点を与えてくれる良書であった。

  • 植物の遺伝学者による動物との類似性の紹介。植物を擬人化することは誤解を招くことではあるが、わかりやすさを取って動物の五感と植物の機能を対応させて近年の研究成果を紹介している。植物と動物の違いはまず脳がないことであり、刺激に対する反応はあるが刺激に対する判断とか感情はない。また骨格が違い、能動的に動くことは基本できない。

    視覚:各種光受容体があり、先端についていることがダーウィンの研究によって既に分かっていた。これによって開花時期をコントロールしている。
    聴覚: モーツァルトを聞かせると、などのねたはあるが、実際は聞こえている確証は無く、触覚として感じている可能性がある。
    嗅覚:熟した果実が連鎖反応を起こすことは知られていたが、エチレン受容体があり、それが熟した果実から出るエチレンをキャッチして反応している。また虫などにダメージを受けた葉も化学物質を出してほかの部分に連絡を取っている。その化学物質をほかの個体もキャッチして対応している(虫が嫌う化学物質の量を増やすなど)。
    触覚:食虫植物では毛に2か所触れると葉が閉じる。これは葉の中の電気信号によって、カルシウム濃度が変化してある点に達すると作動するようになっている。また、植物は触られることを嫌い、1日に軽く2,3回撫でただけで、成長が止まるものも多い。
    平衡感覚:重力を感じることができ、その仕組みははっきりとは分からないが、宇宙船での度重なる実験からわかっている。

  • 1章 植物は見ている
    2章 植物は匂いを嗅いでいる
    3章 植物は接触を感じている
    4章 植物は聞いている
    5章 植物は位置を感じている
    6章 植物は憶えている
    エピローグ 植物は知っている

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著者プロフィール

遺伝学者。イスラエルのテルアヴィヴ大学の植物学の教授、同大学のマンナ植物バイオ科学センター所長。米国のイェール大学のポスドク当時、COP9シグナロソーム遺伝子群を発見、世界的に注目されている。

「2017年 『植物はそこまで知っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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