高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学

著者 :
  • 河出書房新社
3.87
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本棚登録 : 722
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309246284

作品紹介・あらすじ

貿易黒字が「勝ち」だと思い込んでいる人へこの本を読めば二度とそんな恥ずかしいことが言えなくなります。――上念司氏自分の理解の基礎を築き上げ、しっかりと学べる稀有な1冊!――山形浩生氏

感想・レビュー・書評

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  • 国家レベルの経済について、要領よく、その要所がつかめる内容でした。いったい、政府がやっている財政政策ってどんな意味があるんだ? と思うことがしばしばな人は僕自身を含めて多いと思うんですが、その大きな道筋を教えてくれる本です。まず、GDPの説明から始まります。ご存知のように国内総生産と呼ばれるものです。このGDPは国民総所得とイコールであり、総支出(消費・貯蓄・税金)とイコールにもなる。これを、三面等価という。ここを抑えておくと、数式で表した時に数学的に展開できて、その展開された式から「それがどういう意味なのか?」を考え、具体的に導き出すためのフィードバックができることになります。という序盤の辺りは基礎なのでおもしろくはないのですが、次章で、国の財政と企業の財政の違いが解説され始めて、少しずつ気付きが増えていき、おもしろくなると思います。市場を考えたときに、ゲーム理論ででてくる「ゼロサムゲーム」の考え方をあてはめる言説があります。限られたパイをみんなで奪い合うのだ、限られた中でのシェア率を高めるのだ、というように。しかし、市場は拡大し、パイは増大したりもします。市場も、消費分野のクリエイトができて大きくなれます。で、国際貿易もゼロサムゲームではないと著者は解説します。そして、続くリカードの比較優位論によって、貿易に関する得体のしれない不安を取り除いてくれる。貿易の利益は、より得意なものに生産を特化することで、どの国も得られるものだと証明できるんですね、数学的に。ただ、個人的に比較優位論は、生産を特化し貿易していくことの大事さについては分かったのだけれど、ここでは加味されていない「質(おいしいだとか)」についての変数ってけっこう大事なんだけどなあと思いました。また、特化して貿易することで各国が共存共栄できるのはわかりますが、それは世界平和が実現した世界においてであり、現在のコロナ禍のような突発的なよくない事象にさらされると、特化しているがゆえにモノの欠乏などに直面しないとも限りません。あくまで経済学的にはこうなるという理論なので現実には応用が必要なんですが、応用の段階になって道を踏み外してしまったり迷子になったりしがちなのが、経済の難しいところなのではないでしょうか。また、消費税増税の仕組みについても解説があります。貯蓄率が下がっていくと金利が上がる。金利が上がっていくと不況になる。で、どうやら金利を上げないためには財政赤字をゼロにするために税収を上げる。これが消費税増税の目的なんですね。「福祉に使います」だとか言われて増税されてましたが、こういう根本のところから説明して欲しいなと思いますよね。また、増税以外にこの局面をのりきる二つ目の方法は、物価上昇させる、つまりインフレにするということでした。インフレになると国の借金などの実質的な価値が小さくなります。現今の財政では、消費税増税と物価上昇、どちらもおこなわれている。最後の方に書かれていて、そうなのか、と考えさせられたのが、「流動性の罠」という、要するに、国民の大多数がお金を使わないでただ持っている状態によって、経済が上昇していかない、ということについてでした。日本は長らくこの状態に陥っているそうです。そうですよね、僕も経済学の授業で、お金は貯めないで使え、と教わりましたもの……。ただ、経済の難しいところは、さっき書いたように貯蓄率の低下が不況を招きもするので、そのあたりのバランスの大事さですね。バランスをとるために、政府は財政政策をし、日銀は金融政策をする。と、そんなところです。ひととおり読んでみると、初心者には、経済の見方が必ず変わるでしょう。入門書としてこれほどすばらしいものも、他の分野を思い起こしても、思い当たるものはなかなかないです。

  • 話題の書籍ということで、一読してみましたが、アベノミクスなど時事の話題も織り交ぜて、かなり初心者にも馴染みやすい内容でした。
    経済学は、理系の私には非常に難解に感じますが、この本は珍しく読み進めるスピードが速かったと思います。
    ただこの書籍を読んで思うのは、経済学には様々な主張・理論があるので、何を重視して学ぶべきなのか非常に悩むところです。
    従って、本書においても、所々で著者の主観を感じた次第です。
    まさに普遍化の渦中にある学問という意味でも、今後も様々な書籍が乱立するのでしょう。

  • 教師である著者が世間に溢れる経済に対しての情報を経済学の観点から解説した一冊。

    貿易黒字と貿易赤字や日本国債の増加と財政破綻の連動性、財政政策と金融政策についてなど本書を読むことによって世間にある経済の情報の真偽が理解できました。
    そして、重要な理論については繰り返し述べられており、理解が進みました。
    また、今まで知らなかった貿易収支を見る際の会計表である国際収支表の仕組みやISバランスの公式やIS-LM分析などの経済学の基本知識を深めることもできました。
    またギリシャ債務危機やアベノミクスについての解説もあり、より経済学の深い観点からのアプローチがされていて勉強になりました。


    経済学の基本的な部分についてはもちろんのこと貿易や国債についての考え方など本書を読むことによって新しい視点が身についた一冊でした。

  • いずれにしても高校生に経済を"実感"させることは難しいのですよね。

    なので高校生のころの自分に読ませることができても、いま自分が学んだようには理解できなかったんじゃないかなと思います。

    しかし、この本の価値が低いと評価するわけではありません。むしろ★5つ付けちゃうくらい良書だと思います。

    タイトルは読む動機づけになるので、このままでOKだと思いますが、「高校生が読むと良い本」ではなく、「高校生知識レベルの社会人が読むと良い本」なのだと思いました。

  • 分かっているようで案外分かっていない経済学について勉強になった。特に貿易黒字と赤字の考え方について理解できた。忘れないようにその箇所だけでも適宜再読しようと思う。

  • 経済学のまさに「学」の理屈をわかりやすく説こうとしている。冷戦後の日本経済を例にとって説明しているのでとっつきやすい。貿易は黒字だろうが赤字だろうが自由に行われれば、お互いにとってよい結果を生む、とか、国債は国民の資産であり自国貨幣の根拠になるものである、とか、「理屈」のレベルで納得がいく。ただそれが誰にとってのよい結果であるのか、とか、国民の資産というがそれを占有しているのは国民のうちの具体的に誰なのか、とかいうことについては触れていない。著者にしてみれば、それを論ずる前の理論的前提について説明しているということなのだろうが、それだけで、アベノミクスを高校生にかたるのはまずい気がする。

  • 経済

  • タイトルと内容が異なる。基本的にマクロ経済の話しか書いてない。内容は確かであるが、説明が分かりづらいのが残念。

  • 難しいけど、まあまあわかった。

  • 331||Su

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著者プロフィール

1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、玉川大学大学院修士課程文学部(教育学専攻)修了。『高校生からのマクロ・ミクロ経済学』[小社]が大きな話題となりベストセラーに。

「2017年 『中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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