ちゃんと泣ける子に育てよう 親には子どもの感情を育てる義務がある

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309243665

作品紹介・あらすじ

もしかしたら、つらくなってしまうかもしれません。でも、子どもたちのために、どうしても今、知ってほしいのです。

感想・レビュー・書評

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  • 子どもが怒りや悲しみなどのネガティブ感情を爆発させているとき、親はそれに名前を与えて(感情の社会化)ただ抱きしめる。受容する。そうすると子どもはネガティブ感情があっても安全だと思えるようになる。感情の社会化が出来てないと、子どもが感情を抑圧したりして対応するけど、いつか破綻する時が来ます、という内容。

    泣きたい時に誰かに話を聞いてもらったり抱きしめてもらうと安心する。これは大人でも同じなのに、自分の子どもには出来ていなかったことに、ハッとした。
    泣かれるとついイライラしてしまうけど、そんな自分も受け入れつつ、子どもの感情にも向き合っていこうと思った。

    著者の『いつでも修復できますよ』という言葉がすごく救いになった。

  • はるさん推薦


    この本は非常に根深い問題をはらんでいる。
    子どもが安心して泣けないのは
    大人が自分の感情を大事にしてしまうから。

    では、どうして大人が自分の感情を大事になってしまうかと言うと
    大人もきちんと良い親でなくてはいけないと言う意識が働くから。

    子どもが泣くと、
    親は泣きやませなくてはいけない、
    よい親になろうとしなくてはいけない、
    という意識が働く。

    それは子どもが泣くことを受け入れられる社会ではないからだ。



    この著者は大人を悪者にしたいわけではない。
    大人(親)に寄り添って、優しい言葉で論理的にわかりやすく説明している。

    他の本も読んで見たいと思った。


    第一章 感情はどのようにして育つのか?
    感情の社会化が大切。
    ネガティブな感情こそも大事にしたい。
    感情の社会化とは、
    自分の感情を他者に伝える力の基本。

    身体で感じている感情を
    親がきちんと察知したうえで
    適切な言葉で名付けてあげると言うプロセスを通じて、子どもは感情を言葉に使えるということができるようになる。


    例えば、
    泣く事を否定されると、
    子どもは親に気に入られるために泣き止めようとするが、
    身体を逆流した不快な感情のエネルギーは、混沌としたまま置き去りにされてしまうことがある。


    怒りや悲しみなどのネガティブな感情が
    そのままむき出しの状態にあれば、
    それはとても危険な感情。
    でも、大人が抱きしめることで、
    安心、安全によってネガティブな感情をくるむことができると、
    それは持っていても安定な感情としてコントロールすることができるようになる。




    第3章学校で見られる子どもたちの危機の姿

    幼い子どもたち、
    あれ荒んだ感情を持つ子どもたち
    できないこと、失敗することへの不安の強さなどを持つ子は共通して感情の社会化ができてないことが多い。


    また親御さんにこうした話を伝えても、
    親として強くの怒りや悲しみや苦しみをしっかりと受け止められないことがある。

    親も良い親であることを求められると、
    うまくできない私、
    子育てに不安を感じている私の部分を否定されてしまうことになり、
    子育てにわたるネガティブな感情は承認されず、
    親自身もそれを否認してしまうことになりやすい。


    だから、子どもの問題行動を話すときに
    親としてこうして欲しいと要求するんじゃなくて
    「お母さんショックでしたよね」
    「お子さんに裏切られている気持ちになって辛いことと思います」
    と言う感じでお母さんの気持ちを聞いてあげると良い。


    【気づき】
    ・感情の社会化が大切

    ・感情は体の中をめぐるもの
    子どもの感情は、大人が大人として受け止めることが大切。


    【to do】
    ・よい気分だけではなく、
    ネガティブな気分の時も言葉で感情を伝える。
    子ども目線で体の中にどんな感情が流れているか考えて、声掛けする。


    ・泣いている時こそ抱きしめて、安心させる。
    怖かった→でも安心のサイクルを意識する。



    ・問題行動を伝えるときは、
    親御さんがどう受け止めるかを考えながら、
    話し、親御さんの気持ちに寄り添って共感的な言葉(ショックですよね、裏切られてない気持ちになったって辛いですよね)などと声掛けしたい。

  •  ママの為のアンガーマネジメントで著者が紹介されていたので、読んだ。子供は現在5歳と2歳。有名なハッピーアドバイスよりも現実的な本。行動を変化させなくてはいけないが、まずは知識として知ることが重要。親になる覚悟というのは本当にきつい。親自身が自立して、子供の不快感情を受け止める必要がある。

  • 心理学を学んだ友人から教えてもらった子育て本。
    脳科学の観点から、乳幼児期の感情や理性の育ち方、育て方を学べる良書です。

    「個人差はあるものの、4歳までは感情でしか動けない」と言うのは、1人目で薄々気づいてたものの、理性で感情をコントロールする前段階として、ネガティブな感情も含め、親が共鳴して、ちゃんと子どもの心の中の思いを「言葉」に置き換えてあげること、そうやって、子ども自身が自分の心の中に沸き起こる感情を認識できるようにすることが大事、と言うのは、私の中で目から鱗でした。

    あと、イヤイヤに対しても、社会的なルールなど守らなければならない枠組みは変えず、感情は承認して(辛いね、悲しいね、悔しいねなど)、葛藤のピークまでずっと見守る姿勢も参考になりました。
    そして、このサイクルの間は「今、まさに子どもの脳の中で理性の制御回路が出来上がってるんだ」と思っておけばいいので、イヤイヤ対応の「えー、なんでこうなるの?」のモヤモヤが「しめしめ、明るい未来へのトライ&エラー!」と余裕を持って接せられるように。

    ぜひ小さいお子さんをお持ちのお母さんに読んでもらいたい一冊です^_^

  • 1歳児にして、自己主張が強い我が子はたくましく、生きる力に満ち溢れている、のかもしれない。親になるということは、自分の感情よりも我が子の感情に目を向けること、というのは目から鱗で心に突き刺さった。自分の日常生活、特に仕事中心の毎日で、忙しく疲れていても、その姿勢を忘れないようにしたいと思う。
    一方で、そこまで完璧に実行できる立派な親は実際のところは少数なのではないかと思う。自分の親も世間一般の親も、基本的には自分の都合を優先し、自分の思い描くように(あるいは周囲から我が子が高く評価されることを気にしたりしながら)子どもを育ててきたのではないかと思う。世間一般の親が、本当の意味で子どもの立場に立って子どもの感情を何よりも尊重する、という境地に立っていられるかどうか、疑わしい。そういう親たちがこの本に出会って、よりよい子育てができればそれに越したことはないと思う。でも、そうではない親が大半なわけで、それでも、ある子は不良になるかもしれないし、ある子は親が未熟であってもそれなりに育ったりするのかもしれない。子どものパーソナリティや家庭環境、教育環境などにもよるかもしれない。
    親が自分の感情ばかり大事にして少しばかり子どもを顧みなかったとしても、それでも運よくいい子に育つこともあるかもしれない。運が悪ければ、あるいは本当に親がひどすぎれば(夫婦の不仲とか、母親があまりにも精神的に不安定とか、同居する嫁姑の不仲とか)不良になったり、学校でクラスメートをいじめたり、リストカットしたりするのかもしれない。
    自分の幼少期を可能な範囲で思い出そうとしたとき、自分の感情を受け止めてもらえなかったことは多少なりともあったような気もする。特に母親は私の感情など顧みずにただひたすら厳しかった記憶がある。でもだからと言って、いじめっ子になったりリストカットしたり不良少女になったりはしなかった。一方で、そういう母親のもとで育ったが故の「尾を引く生きづらさ」のようなものはあったかもしれない。それは母親が私の感情を受け止めなかったからではなく、何か別の理由で、ひどく生きづらい人間に育ち上ったのだと思われる。
    いずれにしても、私は可能な範囲で我が子の感情に目を向けられる親でありたい。母親とは違う子育てを志したい。そして、我が子がどのように育つのか、それをしっかりと見届けたい、と思う。

  • p.141「4.いじめまわしの人間関係」
    「もともとはAさんの嫉妬心というかやきもちが、Bさんを攻撃するという感情に発展していたと考えられるわけですね?そのあと、通常の学級指導をして、Aさんの行為が悪いことだということを明確にしたら、今度はAさんがいじめられる側になってしまった…」
    「Aさんは、自分の身体の中に湧きあがってくる嫉妬の気持ちを安全に抱えているということができない状態にあるんですね。それでそれがBさんへのいじわるや攻撃という形で暴発しちゃう…」
    「いじめるという行為が悪いことだということを教育することは大事なことですが、ネガティヴな感情が社会化されていない子どもたちが多くいる学級の中では、頭で「いじめはいけないことだ」と理解できても、いじめがなくなるということと直接的に結びつかない…」
    自分の気持ちのニーズにしたがっていじめが起きているのだから、そのニーズを解決しなければいじめはなくならない。ニーズとは、自分の中の不快感情を処理すること。そのためには不快感情の社会化が必要で、それが行われていない子供が多数であれば、いじめを学校からなくすことはできない。

    子どもの不快感情を親が無視せず、「悲しい」とか「悔しい」とか名前をつけてやり、抱きしめて思う存分に泣かせてやる。それが、不快感情を社会化する手続き。子どもは親に包まれて安心しながら、自分の不快感情の扱い方を身につけていく、という。ところが、親自身が自分の不快感情を認められないと、子どものそれを受け止めることができない。そうやって、子どもの不快感情がないことにされている家庭はそう珍しくはないだろう。

    この本に書かれているのは、要するに「ネガティヴな感情が社会化されずに、解離様式によって適応している「よい子」はいずれ危機を抱えてしまう(p.196)」ということ。だけど、親が子の感情の社会化に失敗している理由については、特に触れられていない。この点については、親はその力を本来持っているのだから、それを発揮すればよいのだ、というのが著者の立場らしい。第4章では、困難を乗り越えた親子の話がいくつも出てくる。けれど、それらは決して楽な道のりではない。

    安易なハウツー本ではない。こういう困難が存在するのだということはよくわかる。でも、じゃぁどうすれば良いのかということははっきりとは書かれていない。自分の不快感情から逃げずにそれと向き合う方法、それを親から授けられなかった人間は、どうやってそれを身につけていけばいいんだろうか。


    2020年9月7日追記。
    例えば、「心配かけたくないから」と言って、本当のことを言わない。それは、相手を思いやる気持ちだとは限らない。相手が自分のことで心配したり苦しんだりすることが怖くて、それを避けるために本当のことを言わないのかもしれない。それは、自分が自分の不快感情を受け止められないのと同じように、相手が自分のために不快感情を持つことをもまた、同じように受け止められないからかもしれない。それは、相手のことを思いやってする態度ではない。自分自身の苦しみから逃れるためにやっていることだ。
    相手が本当に自分のことを気にかけて、何かあれば一緒に苦しみを分かち合いたいと思っていたなら、「本当のことを言わない」態度は相手を落胆させるだろう。「自分は信頼されていなかったんだな」と。

    2021年3月28日追記。
    これは、まさにアレキシサイミアの話なんだな。

  • 子供の気持ちを抑え込まずにちゃんと受け止めることの大切さについて書かれた本です。
    夫や義母にはあんまりわがまま言わず私にだけ癇癪わがまま爆発な息子(3歳)…
    夫から「舐められてるからじゃないの?」と言われて悩むこともありましたがこれを読んで自己解決しました。
    そういった怒りとか悲しみとか悔しさとかを爆発させられるというのは、
    ある意味子が安心できてるという裏返しなんだということを知ることができたので、「自分は息子の感情を大切にしよう。決めつけずに話を聞いて、受容しよう」と思いました。
    心の安全地帯になれたらいいな。
    ちょうどMS作成時期に呼んだので、母という役割の中に言葉として盛り込みました。

    心に残った一説です。
    親になる覚悟というのは、親が親自身の感情よりも、子ども自身の感情に目を向けて大事にする覚悟を決めることでもあるのです。

    紹介者:秋野まこ
    企画開催日:2022/12/04
    企画名:「2022年に読んでよかった私の1冊」

    • workmaさん
      自分軸手帳部さん

      ちゃんと気づけてよかったですね。夫さんの「舐められてる」発言、やさしい人は言われがちなんだけど…自分も言われて落ち...
      自分軸手帳部さん

      ちゃんと気づけてよかったですね。夫さんの「舐められてる」発言、やさしい人は言われがちなんだけど…自分も言われて落ち込んだこともありましたが…
      その発言、間違った解釈なんですよね(・・;)

      あー よかった!コメント最後まで読んで安心してしまいました。確実に独り言です…すみません(^_^;)
      2023/02/18
  • 今まで読んだ育児本の中でも違う角度から気づかせてくれる内容でした。
    前に7冊ほど育児本をまとめて読み、同じことが多く書かれていることが正解なのだろうと、必死で読みました。
    でも、この本はその中のどれとも違うことが書いてあり、もっと早く読んでいれば!!
    とも思い、今出会えて良かったとも思いました。

    思いやりのある、優しい子。心の強い子になって欲しい!
    と思って、泣いてる時もそんな事でいちいち泣かないの!って何回言ったことか、、、。

    子供の心より、こうした方がいいんじゃないって言う大人向けのアドバイスを何回伝えたか、、。
    反省して、明日から少しずつでも自分を変えていかなければ!!

    子育ての相方にも読んでもらいます!!

  • 子どもが怒りなどのネガティブな感情を持った時に、親が「悔しかったねー」「さみしかったねー」など、それを言語化し、受容して、抱きしめる。これにより「感情の社会化」がはかられるということを本書により学べてよかったです

  • 「自分の感情よりも子供の感情を大事にする覚悟」なんて考えたこともなかったかも...もっと大人にならなくちゃ

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著者プロフィール

2021年4月より「大河原美以心理療法研究室」室長(https://mii-sensei.com)。臨床心理士・公認心理師、博士(教育学)。1982年東北大学文学部哲学科卒業。児童福祉施設の児童指導員として勤務ののち、1993年筑波大学大学院修士課程教育研究科修了。精神科思春期外来、教育センターなどの非常勤相談員を経て、1997年より東京学芸大学助教授、2007年より2021年3月まで教授。専門は、親子の心理療法・家族療法。
著書に『怒りをコントロールできない子の理解と援助―教師と親のかかわり』(金子書房、2004年)、『ちゃんと泣ける子に育てよう―親には子どもの感情を育てる義務がある』(河出書房新社、2006年)、『子どもたちの感情を育てる教師のかかわり―見えない「いじめ」とある教室の物語』(明治図書、2007年)、『子どもの「いや」に困ったとき読む本』(大和書房、2016年)、『子どもの感情コントロールと心理臨床』(日本評論社、2015年)『子育てに苦しむ母との心理臨床―EMDR療法による複雑性トラウマからの解放』(同、2019年)などがある。

「2021年 『いやな気持ちは大事な気持ち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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