幕末横浜オランダ商人見聞録

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309227306

感想・レビュー・書評

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  • 幕末に2回日本にやってきたオランダ人商人の見聞録。
    1回目は貿易船の船員として長崎の出島にやってきて、当時の商館長や職員たちがどんな暮らしをしていたのかが書かれている。
    2回目は貿易商の共同経営者として開港直後の横浜にやってきて、攘夷運動の中彼らがいかに戦々恐々と生活していたか、当時の横浜にやってきた外人も一攫千金を狙ってやってきたヤサグレ連中で、喧嘩が絶えなかったとか、開拓最中の住居がどんなだったかなど、なかなか日本人の記録にはないような事件が書かれていて、外人から見た当時の日本がどうだったかがよくわかる一冊。
    また、200年以上に渡って唯一のヨーロッパ商人だった立場を幕末に全く活かせなかったオランダ政府への歯痒さも最後に述べられている。

  • 東2法経図・6F開架:213.7A/A93b//K

  •  幕末から明治初年度にかけて来日した外交官やお雇い外国人の回想録や日記等々はこれまでいろいろと翻訳されて出版されているが、これだけ直截に同時期に横浜にいた白人種への嫌悪を露骨に書いた来日外国人の回想録も珍しい。
     <当時、この地(横浜)にいたおそらく七〇人ほどの外国人の大多数は西洋文明の面汚しで、下劣に腐った白人種のクズと呼ぶのにふさわしい連中だった>とはなかなか痛烈な評であるが、これは開国前に長崎で平和で長閑な日々を過ごしたことのある著者だからこそ懐くことができた実感なのだろう。

  • 幕末に来日したオランダじんが、みた日本、何が起きたのか、赤裸々に描かれている。横浜がただの寒村から街になっていく。オランダ人たちも斬られるかもしれないと怯えて暮らしている。一攫千金を求め彷徨う紅毛人。嗚呼?

  • 幕末の日本に滞在したオランダ人商人の記録。
    この時代の本は溢れるほど出ているけど、外国人の視点の記録は少ないのでは。

    故国から遠く離れて保護も期待できない「異人」たちに、尊皇攘夷を謳って刀を振り回す浪人たちが、裏で手を引いていると噂される水戸公が、口では守ると言いつつ知らんふりの幕府が、どんな風に映っていたかがよく分かります。確かに彼らヨーロッパ人にとって当時の日本は、原住民と激しく戦った開拓直後のアメリカと変わらなかったでしょう。

    一方で、狭い居留地の中で起こるささやかな事件には、微笑ましく感じるものもあります。

    知人を斬り殺されたり、苦労して集めた商材を燃やされたりしながらも、「日本人」を一括りに断罪せず、通嗣や地元民たちへの友好な感情を失わなかった著者は、本当に強い人だったのでしょう。同国人の従僕の昔話を当たり前のように聞き入る姿勢からも、変な偏見や階級意識に毒されていなかったのだろうと思います。もちろん、離日してずいぶん経ってからの回顧録なので、美化されていることはあると思いますが。

    面白いのは、彼が最も不満の矛先を向けている相手が母国であることです。辺境の地にいる自分たちをろくに守ってくれない。列強が幕府に開港を迫る中で、鎖国時代を通して唯一交易を許されていた国として、うまく立ち回ればおいしい立場だったはずなのに、出島にこもってチャンスを逸した。彼は商人なので役人には辛辣ですが、悔しさ、歯痒さがにじみ出ています。

    彼の残した記録は他にもあるようなので、どうせなら全部を読みたいです。当時の日本というよりも、当時の世界の片隅で確かに起こっていたことの、気をつけなければ永遠に失われてしまう、貴重な記録です。

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著者プロフィール

1821~1890年。オランダの貿易商。幕末の1845年、1851年、1859年に来日し、最初は長崎の出島、最後は横浜の居留地に住んで、驚くべき日本の姿を世界に伝えるために本書を1879年に刊行した。

「2018年 『幕末横浜オランダ商人見聞録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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