野蛮なアリスさん

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 203
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309207407

感想・レビュー・書評

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  • ヒリヒリとした文章と内容で思ったよりインパクトがあった。

  • ものすごい量の罵倒語が出てくるんだけど、作者の「罵るのは、罵るだけの理由があるから」「罵倒語一つ出てこない物語の方が、『野蛮なアリスさん』よりもっと恐ろしい」という言葉が印象的だった。他の作品同様引き締まって一切の無駄がない文体と技巧。こんな文章書きたいな。

  • 前から読みたかったやつ、や〜面白かった!韓国文学、短いのに読み応えあって好きだな ハマりそう。女装ホームレスとして四角に立つアリシアが生まれ育った街コモリ。再開発事業の補償金を巡り、欲と暴力渦巻くその土地で、彼女は弟と共に母の虐待に耐えながら生活していた。

    政府の暴力(再開発)、物理的な暴力(虐待)、黙認という暴力(放置)という、三種の野蛮は最弱者である子供達に向かう。しかし、食肉用に育てられている犬の様に、例え街という檻の戸が開いていたとしても、彼らが逃げる事は決してない。逃げた後のビジョンはなく、あるのは目の前で繰り返される悪夢だけ。

    それでも最終的には外に出られた兄と、穴に落ちた弟。何が二人を分かったか。一方は物理的な暴力の加害者になる事を選び、一方は下水処理施設の問題の放置という暴力の餌食になった。ただ、兄が本当に解放されたのかは疑問が残る。結局今も暗い穴に落ち続け、終わる事のない悪夢を見続けている。

    物理的な暴力を振るっていないにしても、黙認行為という形で暴力に加担していないかどうか、改めて読者に疑問提起している作品。オナモミの様にしっかりと取り付いたアリシアは、君が答えを出すまでずっと問い続ける。

  • 韓国作家の作品を初めて読む。
    それも若い女性作家が描いた、
    呪詛にも似た罵声と深い悲しみと怒りに満ち溢れ圧倒され息苦しくなる、
    とてつもない物語を初めて読む。
    散文詩的に語られる兄弟の夢話。アリシアの夢。アリシアの母の夢。
    アリシアの弟の夢。コミの夢。
    いろいろなものが畦道の犬の死体のように月のように満ちては欠けていく。
    私たちに、常に問われる「君は、どこまで来ているのか。」という言葉。
    何度も何度もアリシアと一緒に
    目の前の悪夢を見ることが大切なのかもしれない。
    雨水と埃にまみれて消し去られないように。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/616760

  • 読み終わって、少し呆然としてしまった。この気持ちをどう表現していいかわからない。
    著者の後書きより…「私は『野蛮なアリスさん』を、目を開けて見る悪夢という形を持つ〈哀悼〉と思って書きました」…悪夢…まさにこの言葉のとおり、この物語には何も救いや希望はない。そして、この物語の匂いまでもがいつまでも私から離れない。

    韓国の土地・不動産投機と都市再開発問題、持てる者と持たざる者の格差は、日本人には少しピンとこないところがあるが、韓国文学や映画、ドラマなどでは、背景にこうした問題があることが多い。
    特に都市再開発問題についてより深く知りたいのなら、この本とチョ・セヒの『こびとが打ち上げた小さなボール』がおすすめ。

  • 期待はずれ。
    非常に読みにくい文体。

  • 2022.08

    文体になじめずしっかりと読めなかったので
    また機会を改めて読むべきかもしれない

    韓国の経済事情が書かれた解説が良かった

  • 終わらない悪夢。
    ファン・ジョンウンすごいな。

    過酷な現実社会と、その中の見えなくされてるもっと深い場所に打ち忘れられた人。容赦なく、でも労いながら書いている。

    文章で嗅覚に訴えるところも上手い。

  • ひりつくような欲望と暴力。

    女装ホームレスの元ネタは大阪でだそうな。

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著者プロフィール

1976年生まれ。2005年、短編「マザー」でデビュー。08年に短編集『七時三十二分 象列車』を発表。10年、『百の影』で韓国日報文学賞、12年、『パ氏の入門』で申東曄文学賞、14年、短編「誰が」で李孝石文学賞、15年、『続けてみます』で大山文学賞、17年、中編「笑う男」で金裕貞文学賞、『ディディの傘』で五・一八文学賞と萬海文学賞など数々の文学賞を受賞している。邦訳された作品に『誰でもない』(斎藤真理子訳、晶文社)、『野蛮なアリスさん』(斎藤真理子訳、河出書房新社)、『ディディの傘』(斎藤真理子訳、亜紀書房)、『続けてみます』(オ・ヨンア訳、晶文社)、『年年歳歳』(斎藤真理子訳、河出書房新社)がある。

「2023年 『百の影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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