いまファンタジーにできること

  • 河出書房新社
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309205717

作品紹介・あらすじ

ジャングル・ブック、ピーターラビット、ドリトル先生、指輪物語、ゲド戦記から、ハリー・ポッターまで。ファンタジーや児童文学の名作・話題作を読み解きながらその本質に迫る、巨匠の最新評論集。2010年ローカス賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  •  確かに私も含めミステリ好きは掃いて捨てるほどいるけれど、まず最初にファンタジー好きと言う人は少ないかもしれない。日本ではアニメやゲームのおかげでもっと身近な存在だとは思うけれど。メッセージを伝えるために作品を作っているのではない、と仰られていたのが刺さった。そりゃそうですよね。「作者が何が言いたいのかわからない」「作者がこのセリフで伝えたかったこと」などの声は何か違うと感じていたので。『ゲド戦記』読まねば。

  • 『ゲド戦記』作者の評論集を翻訳したものです。講演も含まれます。ファンタジーは子供だけのものではないと強調しているのが印象的でした。私自身、ファンタジーの日本での扱われ方に疑問を感じており、これを読んで少し勇気をもらったように思います。物語を「紡ぎ、語る」ことの大切さを、あらためて噛みしめました。

  • ファンタジーはある程度のリアリティがないと成り立たない。

  • たいていの人はファンタジーを書かない。ファンタジーを読む。
    ル=グウィンは書く側として「できること」を語り,それを読む側は,ほぉそんなこともファンタジーはできるのかと感心しながら読み進めるのだけれど,読み終えると,自分はどうしてファンタジーを読むのかが見えてくる。

    ル=グウィンは一貫してファンタジーはファンタジーのためにあると主張する。フロイトやユングその他の理論の具現であったり,社会的なり政治的なり何なりのメッセージを隠す容れ物であったりするものでは断固ないと何度も言い切る。
    ファンタジーの世界はその世界として閉じた系でないと読み手を混乱させるとも。閉じたというと語弊があるかな,一貫性というほうがいいかな。なぜなら,ファンタジーを読む人は,竜や一角獣やしゃべる動物が登場しさえすれば満足するのではなく,何が登場しようがファンタジーが物語らしくあることをこそ望んでいるから。

    この2つにはすごく共感しながら読んだ。絵本や物語を心理学的見地から評論することに対しては,自分の理論の万民に口当たりの良い宣伝材料としてファンタジーを利用しているのだろうと思っていたし,力強いファンタジーと白けてしまうそれがあると感じていた。

    ただ,この本の最大の迫力は,自分が産みだしているものを客観視できるル=グウィンの地に足付いた自己分析力だと思う。

  • (年齢にかかわらず)成熟していない人たちは、道徳的な確かさを望み、要求します。これは悪い、これは善い、と言ってほしいのです。子どもやティーンエイジャーは、確固とした道徳的足場を見つけようともがきます。彼らは勝つ側にいると感じたいのです。少なくともそのチームの一員だと思いたいのです。しかし(疑われることのない)善と(検証されることのない)悪との間の戦いと称するものは、物事を明快にする代わりに、ぼやけさせます。それは暴力についての単なる言い訳にしかなりません。それは現実の世界の侵略戦争と同じくらい、浅はかで無益で卑劣なものです。

    ファンタジーと未熟さをごっちゃにするのは、かなり大きな間違いだ。合理的だが頭でっかちではなく、論理的だがあからさまではなく、寓意的というよりは象徴的 - ファンタジーは原始的(プリミティブ)ではなく、根源的(プライマリー)なのだ。

    物語が「メッセージをもっている」という考えは、その物語を二、三の抽象的な言葉に縮小することが可能ということ、コンパクトに要約できるということを前提にしている。物語の意味というのは、言語そのもの、読むにつれて動いていく動きそのもの、言葉にできないような発見の驚きにあるのであって、ちっぽけな助言にあるのではない。

    ファンタジーは子どものための物語の形として、子どもの本質に根ざした、もっとも自然なものだ。なぜ、そう言えるのだろうか?子どもたちはたいてい現実と非現実の区別がつかないからか?子どもたちには現実からの「逃避」が必要だからか?そのどちらでもない。現実からの意味を汲みとるために、子どもたちは想像力をフルタイムで働かせているから、そして、想像力による物語こそが、その仕事をするための最強の道具だからだ。

  • ゲド戦記の人の評論とか、講演のまとめ。
    ファンタジーはファンタジーであって、児童書として括られてしまっていたりすることもこの方にとってはちょっと遺憾なんだろうなと。
    どうしてあの作品を書いたのかという根底を書いてくれてる。

    大人になってもファンタジーを読む人というのはそんなにも珍しいのだろうか?

  • その前に、此方を読まなきゃ、、、

    いまファンタジーにできること アーシュラ・K・ル=グウィン著 発明された別世界という希望(翻訳家 風間賢二) :日本経済新聞
    https://www.nikkei.com/article/DGXDZO34943720Q1A920C1MZB001/

    いまファンタジーにできること :アーシュラ・K・ル=グウィン,谷垣暁美|河出書房新社
    http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309205717/

  • ファンタジーと言うと魔法使いや竜などが出てきて戦う空想だけの世界というイメージが強い。しかしこの本を読み進めるとファンタジーとは、善と悪の戦いを描くだけでなく善と悪の違いがわかる方法を教えてくれる貴重な宝物かも知れないと感じさせてくれる。

  • Le Guin氏のファンタジー論考。

    と〜〜〜っても参考になりました。「そうだよねぇ、うんうん」「なるほど。目からうろこだ」・・・・などなどと思いながら、あっという間に読んじゃいました。

    Le Guinはファンタジー作家だけど、ご自身は非情にvoracious readerでリアリズム作品もきちんと読み、文学理論も踏まえた上で語っていらっしゃるので説得力がある。

    谷垣暁美氏の訳もとってもよいのです。

    読みたい本リストが増えちゃった。

    原典も入手する予定。

  • 魔法を使っていい。
    ドラゴンだって存在していい。
    動物と話をしてもいい。

    物語になってさえいればね。

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著者プロフィール

1929年カリフォルニア州バークレーに生まれる。1962年に作家としてデビュー。斬新なSF/ファンタジー作品を次々に発表し、ほどなく米国SF界の女王ともいうべき輝かしい存在になる。SF/ファンタジー以外の小説や、児童書、詩、評論などの分野でも活躍。主な作品に、『闇の左手』、『所有せざる人々』、「ゲド戦記」シリーズ、「空飛び猫」シリーズ、「西のはての年代記」三部作など。ネビュラ賞、ヒューゴー賞、ローカス賞を何度も受賞しているほか、ボストングローブ=ホーンブック賞、全米図書賞、マーガレット・A・エドワーズ賞など数々の賞に輝く

「2021年 『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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