五色の舟

  • 河出書房新社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309030999

感想・レビュー・書評

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  • 昨年急逝した津原泰水さんの最高傑作短篇「五色の舟」を、宇野亞喜良さんが奇跡のヴィジュアル化! Toshiya Kameiさんによる英語対訳も収録。|河出書房新社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000465.000012754.html

    五色の舟 :津原 泰水,宇野 亞喜良,Toshiya Kamei | 河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309030999/

  • 津原泰水生前最後の企画。
    これで「五色の舟」は、原作、漫画、イラスト、英訳、と多メディア展開。
    月並みな表現だが大変美しい話で、美しい絵。
    また初読の際よりも、別メディアで再読していくごとに、感じられる美しさが増していく。
    安易に別作家の別作品の名を挙げることを津原氏は嫌がるかもしれないが、数年前にキャサリン・ダン「異形の愛」を読んだことで、少し受け止め方も変わったかもしれない。
    また作中のギミックは、21世紀の読者にこそ届くものだろうと気づいた……大変現代的な話でもあるのだ。



    津原泰水、特別エッセイ公開
    *津原さんが2020年のコロナ禍の最中、Web河出に「五色の舟」を全文公開した際の前書き。小説家としての姿勢が感じられる貴重なエッセイです。

    すこしのあいだ、ほんの暫くのあいだだけ、SARS-CoV-2が誕生しなかった世界を想像してみてください、「新型コロナウイルス」という不穏な響きに無縁で生きていられた世界を、反対派にぶつくさ云われながらも東京オリンピック・パラリンピックの準備が荒々しく進み、テレビは選手たちに意気込みを語らせて彼らの及第点を引き上げ、子供達は新しい教室に慣れを感じはじめる一方で連休の予定に胸を躍らせ、お洒落な人々は初夏を先取りした装いでコンサートや芝居に出掛けて風邪をひいている世界を。
    そちら側のあなたにとって、治療法が確立されていない疫病が蔓延して連日数多くの人命が奪われ、悲嘆と閉塞感、対策を巡っての口論や罵倒に充ち満ちているこちら側は、失笑が洩れてしまうほど空想的で、野蛮で、もどかしく、でもすこしのあいだ、ほんの暫くのあいだだけなら覗いてみたい世界かもしれません。元の世界に戻れるあてもなく、だらだらと身を置きたいとは思わないでしょうけれど。
    もし朝、目覚めたとき、自分がそういう世界の住人だったら――と「むこう側」のあなたはもうひとりの自分を想像し、しかし程なくしてみずからにこう宣言するでしょう――出来ることは限られるかもしれないが、少なくとも、人々への無償の愛と凛々たる勇気を胸に、世界の残酷さに挑み返してやる、断じて負けるものか、後退るものか、と。
    誰しもがSARS-CoV-2なき世界に暮らしていた頃、僕はひとつの小説を書きました。その頃から見ても遥かに昔の出来事を、空想して描いた作品です。あるべきだった世界の姿と実際に訪れた世界の姿が、凄まじい速度で乖離していく今、僕はその空想を、改めてたくさんの方に読んでいただきたくなりました。自分の希望というよりも、果たさねばならない義理を思い出したような感覚でした。矢も楯もたまらずその日のうちに出版権を委ねている河出書房新社に相談を持ちかけましたところ、幸いにして無償公開へのご快諾を賜ることが出来ました。
    残酷で退屈な「こちら側」でのご退屈しのぎが、いまそこに居られるはずだった「むこう側」のあなた、そしてその思い描くところの凛々しい「こちら側」のあなたへと、輝かしい反射を重ねてくれますならば、かつての僕はこの小説をものした甲斐がありました。

    2020年4月28日
    津原泰水

  • 不思議でさみしく、どこか切ない気持ちになり、子どもの頃に読んだ本を、改めてこの歳に手に取ったような錯覚に陥りました。
    厳かな雰囲気でありながら、懐かしく美しい挿画も頁を捲る度にはっとします。

  • 不思議なお話

  • NOVAアンソロジーで「五色の舟」に出会い
    「蘆屋家の崩壊」を手にしてから12年
    「11」で再読を経て、また戻ってきた原典
    レビューを読み返して、落涙
    作品は失われることはないけれど
    読み終わってしまったことを少し悔いる

  • 表現は難しいが、感性が刺激される本だった。子供の頃読んだ、少し怖い絵本のような。

  • 今まで意識してなかったが私は無意識のうちに宇野亜喜良を刷り込まれているのでは? と試しに読了。小説ならではの読者の想像に委ねる物語と、そこを邪魔しない絵も大変によかった。でもあまりに世界観が合ってて俳句で言うとこの「つきすぎてる」感じはするかな。近藤作品読んでみるか。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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