あくてえ

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 767
感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309030630

感想・レビュー・書評

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  • 山下紘加さん「あくてえ」インタビュー 強烈な「ばばあ」、憎たらしさと愛情|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14697584

    「文藝」夏季号掲載、山下紘加「あくてえ」試し読み|Web河出
    https://web.kawade.co.jp/bungei/36910/

    あくてえ :山下 紘加|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309030630/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      作家・山下紘加 インタビュー。彼女の創作とその原点に迫る。 | Numero TOKYO
      https://numero.jp/interv...
      作家・山下紘加 インタビュー。彼女の創作とその原点に迫る。 | Numero TOKYO
      https://numero.jp/interview357/
      2023/01/17
  • なんだか、終始、イライラしてたな〜笑笑
    まず、不倫して出ていった旦那の義母を元奥さんが介護するって何よ〜〜〜。
    意味わからん、絶対嫌だけど笑笑
    なんで、離婚して晴れ晴れして第2の人生を、他人の元旦那の母親の介護しないといけないからよ泣。
    お人好しすぎてイライラ。。。お金もないのに。。。
    孫ちゃんがばあちゃんと口論してる姿に、スカッとしてその場面が無かったら途中で断念していたかも。

    でも、すごく面白かった!!!
    介護に奮闘する中年女性の生き様だったり、今話題のヤングケアラー問題にフォーカスを当てている具合も!

    介護って終わりが見えないから辛いよね。。。

  • この本を読んで学んだことは
    読書は絶望に近い孤独を埋めるかもしれないということ。

    昔は知り合いに数名いた読書家のいう、活字中毒の意味が理解できませんでしたけど
    (アホの子なので)

    あくてぇ

    芥川賞カテゴリ。
     
    90年代生まれの作家さんです。
     
    甲州弁で悪態をあくてぇと言うそうです。
     
    主人公はユメ 
     
    小説家志望の19歳
     
    他にも
     
    90歳の“ババア”と心の中でユメが呼称する
     
    父方の祖母
     
    そして黄色い色が好きだから
    “きぃちゃん”と娘のユメに呼ばれる
     
    沙織という母親と暮らしています。
     
    キィちゃんこと沙織については
     
    90歳の祖母は元“姑”にあたります
     
    義理の母です。
     
    “元”夫の。
     
    がしかし
     
    総じて無神経な元旦那は
     
    ユメが中学生の時に
     
    よそに子供を作り認知して
     
    慰謝料もなく
     
    ユメが高校生のころ
     
    沙織と離婚して新しく家族を作り
     
    父方の母である、ばあちゃんも最初こそ
     
    新しい家族へ招き入れ引き取ったものの
     
    ばあちゃん裸足で飛び出し
     
    沙織とユメの元に帰ってきてしまい。
     
    あくてぇ(悪態)だけに
     
    綺麗とは言えない言葉が並びますから

    ザリガニの鳴くところと、また違った

    序盤の読み辛さはあります。
     
    彼女の周りで起こる事象も酷いですからね。
    (父親の女癖や娘に対しての無神経な下ネタなど)


    最初こそタイトルがタイトルだけに
     
    心して読まなければならないと思っていました。
     
    芥川賞にノミネートというカテゴリへの印象もあり
    (暗く悍ましいイメージ)
     
    けっこう重い感じを覚悟してたんですけど
     
     
    作者の年齢がポップだからか

    重いは重いですけど、そこは、もうポップです。

    個人的な所感ではありますが

    この本は目を背けたい現実がモチーフながら
    ページを捲る指が止まらない本でした。


    でも著者の他の本はモチーフに興味が持てず
    後回し感が強くなっていますが

    小説の中で感じ取れる格差による

    育ちが下品と取れる悪態も
     
    俯瞰で見ると

    そんな簡単には括れてないですね。

    そこが小説のいいところだと思いました。

    1と100の間の人々の様々な感情のひだを読むことが出来る。
     
    甲州弁というのもあるのか
     
    一般の悪態とは
     
    響き的に少しは和らいでいるような気がします。
     
    1997年生まれの作家さんなのに
     
    人物描写や起こってる事象への感情表現は
     
    割と圧巻です。作者の実年齢は、まだ20代と思われますけど
     
    文章が良い意味で老けてます。
     
     
    とてもリアルかつ魅力的な感情表現の数々。
     

    まず、ユメの母親であるキイちゃんの(おそらく40代)の
     
    聖人君子ぶりに慄き。

    この歳なると偽善を疑うが、それも見当たらず
     

    背負った荷物の下ろし方を知らないタイプ
     
    いるのは、いるんでしょうけど
    (ワタシの周りにも居るのは知ってる)
     
    そこには何かしらの理由があるのだろうと
     
    90の姑を見捨てない見限らない理由。
     
    それを知るために読み進めていくことになります。
    (個人的には)
     
    この90歳の祖母も19歳の孫娘にババアと心の中で呼ばれるだけのことを“痴呆でもないのに”、しまくってますし
     
    婆ちゃんの育った時代や環境背景による

    学のなさと意地汚さに不潔さと生命力があり
     
    この孫娘も、
     
    無神経な男親のせいで大学に行けずとも
     
    本ばかり読んでおり
     
    そんなに頭が悪くないので
     
    そういう相手を見てます。
     
    そんなバカじゃないんで

    イライラまかせに言う悪態とは違う感じ。
     
    相手を見た上で
     
    この婆さんに対しての“あくてぇ”なんだなと徐々に判明していく流れになってはいきます。
     

    主人公の母親である、きいちゃんの聖人君子ぶりもあいなって
     
    90歳のイジワル婆さん悪目立ちしてますもんね。
     
    話を読み進めていくうちに
     
    19歳のユメは、実にごもっともな不満を相手に
     
    ロジカルにぶつけてるだけで
     
    それこそ黙ってる方がオカシイと思います。
     
    きいちゃんみたいに黙っていてはいけない。
     
    19歳のユメだって分かってる。年寄りには優しくしなければなんて
     
    ごもっともな意見など。
     
    そんな傍若無人な外面は良いだけの悪態婆さんに
     
    ユメの母親のきいちゃんは感謝してるという。
     
    その理由を聞いてもユメには理解できるはずがない。
     
    推測ですが、こういう

    何不自由ないお嬢様の檻から脱走してきたタイプは

    脱走の要因となった相手への意地を忍耐力で埋められる。


    “あくてぇ”による
     
    このババアの息子な親父の描写
     
    久しぶりに目に余る嫌味な男性というか
     
    ずるいというか………やだな、こういう男性!
     
    そう強く感じて受けました。

    言動と行動の全てに
     
    虫唾が走るんですよ。
     
    ほんっと虫唾が走る。
     
    悪党やサイコパスとかとは違うんですよ。
     
    目に浮かぶリアルさに虫唾走るいうか。

    何も期待してないから基礎はちゃんとやれや!
     
    て感覚


    わたしが“きいちゃん”や“ユメ”だったら
     
    何回も額に殺の文字が浮かび上がるとおもいます。
     

    あんな虫唾の塊な男性
     
    小説の虫唾人に括ると
     
    傲慢と善良の美奈子クラスですね。
     
    南海トラフきたーーーーって感じ

    ハシゴ外したら
    相手は転ぶだろうなと知っていて
    他人に対してズボラするやつマジきつくないですか?
     
    加えて男尊女卑。
     
    人質(チビッコの息子)を盾にユメに許しを乞う時だけ
     
    計算高くなるところ。
     
    読んでもらったら分かるんですけど
     
    しじょうまれに見る
     
    とんでもない親父です。
     
    ユメにしてみれば腹違いの弟を盾に取られたら
     
    何をされても何も言えなくなる。
     
    それは弟が、まだ小さいから。
     
    きいちゃんにしても、おそらくそう。
     
    ユメのまだ小さな弟を盾に
     
    コウシャクを垂れて息子を溺愛。
     
    息子を溺愛するのは構わないが
     
    ユメもまだ未成年だし
     
    養育費も貰えてないから大学も行けなかったし
     
    何にせよ
     
    自分が選んだ道とはいえ
     
    親父と恋愛したばっかり
     
    大した学歴も職歴もなく中年を迎えた
     
    きいちゃんもマトモにバリバリ働けないから
     
    あくてぇ突かれようが
     
    下の世話させられようが
     
    血の繋がらないババアの世話が
     
    元夫に対する悪意や怨恨の感情のセーフティネットにならざる得ない状態。
     
    ババアを診ることがきいちゃんの意地になってる。
     
    そう思った。
     
    レビューには、きいちゃんも毒親言ってる人いたけど。
     
    よくいえば忍耐力とも取れるけど
     
    そんな忍耐いらんからと思うような行動に
     
    意地があるのが女性だよね。
     
    そりゃババアを見捨てて
     
    きいちゃんの人生を歩めばいいがなと正論では思うよ。
     
    ユメだって若いうち自立させた方がいい。
     
    こんなとこ(母子家庭な上に年寄りの介護)に閉じ込めちゃいけないよ。
     
    身体はいくらあっても足りないのが介護の現状なのに無理が祟り
    きいちゃんが倒れたらユメに全てがのしかかってくる。
     
    正論はそうなんだけど
     
    この全ての結界が、この親父にあるように思えてならなかった。
     
    この親父と美奈子と逆転美人の豚鼻

    脳内で血の気が盛んになる人物らです 笑

  • 『あたしは日頃から、あくてえばかりつく。』
    よそに女をつくって出ていった父の母親とともに住み、介護をしているきいちゃんとゆめ。
    90歳の高齢者とはいえ、大好きな母(きいちゃん)を困らせる傍若無人なばばあに対する数々の容赦ない悪態が痛快だった。スピード感と迫力のある文章で、200ページ足らずの作品ながら読み応えバッチリ。介護の大変さを描いた小説を前に、面白い、と言ってしまったら語弊があるだろうか。

    理不尽に耐えながらいつでも優しくとにかく献身的なきいちゃんは凄いね。私はまだまだゆめの方の気持ちしか理解できそうにない。
    ゆめの鬱憤や葛藤の大きさに、終始感情移入しながらしっかり背負い込んだところで、あのラストはやるせなく苦しかった。介護って、日々がこういうことの繰り返しなのかな。それこそ死ぬまで。

  • 高齢者施設に勤める者として、家族の苛立ちようがリアルに分かる。ゆめと一緒に苛立ちながら読んだ。不快だった。
    捨てるに捨てられないババア。お人好しなのか、あるいは、子供のゆめには言えない事情があってのことなのか、元夫の母の面倒を看るきいちゃんにも終始苛立つ。
    家から出られないゆめも、きいちゃんやババアを心配してのことなのか本当のところは共依存している親子なのかがよく分からず、そうなるとゆめに対しても苛立ってしまう。自分の苛立ちをおさめてくれる渉との仲も、コンドーム破損事件で、何やら終わりが近づいていそうな気配が。
    起承転結のない純文学だが、これほどに終わりの見えない苛立ちを、そして、この先どんどんひどくなるであろうあくてえの応酬を夢想させて終わっていることに更なる苛立ちが込み上げる。まさに読者からの「あくてえ」を引き出す「あくてえ」であった。

  • 図書館で借りました。ゆめ、きいちゃん、ばばあ。物語は3人家族の愛しく小さな家族の家の中の、ギュッと、ギュッとつまったとっても濃い物語。〈あくてえ〉ばかりをつきながらも、とってもとっても大切な家族のお話。【あたしにはわからない。わかるはずもない。あたしは表面的なことしかわからない。今しかわからない。わからないから、この現実に不満を並べ立てることしかできない。幼い頃、自分が小児喘息で苦しんでいたことも、あたしの看病のために共働きの両親に代わってばばあが故郷の山梨から出てきたことも、その地で生まれ、人生の半分以上をそこで過ごした人が、故郷を離れるということが、その覚悟が、つらさが、あたしには理解できない。】主人公のゆめちゃん、そしてゆめちゃんの母親のきいちゃん、そのきいちゃんの別れた旦那の母親=ばばあ。さんざん文句=あくてぇをつきながらもお互いが頼ったり、心の支えであったりしながら生きていく様がまざまざと描かれていて、家〈家族〉という日常をこれでもかとぶつけられながらも、まるごと包み込んでくれた物語だった。

  • すごい作家さんだと思った!

    始まりから終わりまで、
    スピード感があるし文体のリズムも良いし、
    富士急のドドンパに乗っているような
    (乗ったことはないですが)
    そんな気分になれました。

    ババアの描写が鋭くて、それに対する主人公の気持ちの勢いに自分もかなり載せられて、読みながら怒ったり、悔しかったり、本当に気持ちを揺さぶられました。

    今後の作品にも期待大です!

  • 最初、ばばあの方言に慣れなくて、ちょっと読むのが億劫に感じられたが、すぐに物語に没頭した。結構、一気読みに近い感じで非常に面白かった。
    主人公ゆめが他者に苛立ちを覚え毒づく
    あくてえが非常に共感を感じ、気持ちよく響いた。日毎、自分が狭量な人間になっていく様に嫌気を感じ優しくなりたいと願っても、次の瞬間、圧倒的悪態をついてしまう自分がいる。小説家志望のゆめは小説家になるまでは、何も始まってなく、何者でもない自分自身に漠然とした、不安と恐怖を感じているのだろうと思えた。他者の粗が見えて、それに苛立ち、常に攻撃的なゆめは、きっと臆病で小心者なのだろう。私もそうなので、非常にわかる。
    そして、苛立ちを他者にぶつけ意見する自分を正当化し、それをしない人間を非難する。ゆめを見て、この主人公は私だ、と
    感じた。ゆめのこの先の物語を想像した。
    物語は続いてゆく。
    最後に親父、ほんま、腹立つわ〜。
    これも私かも知れないが。

    • しずくさん
      いいね!を押したのに「いいねに失敗しました」という文字で撥ねられてしまいました。どうしてなのかなぁ~?? 
      「あくてえ」のタイトルが「逃亡...
      いいね!を押したのに「いいねに失敗しました」という文字で撥ねられてしまいました。どうしてなのかなぁ~?? 
      「あくてえ」のタイトルが「逃亡くそたわけ」に通じるものがあるような~。読みたいと思わせます。
      2022/07/29
    • ストレンジャーさん
      しずくさん。はじめまして。
      コメントありがとうございます。
      罵詈雑言って、人を傷つける言葉の凶器であるので、できることなら
      使わないでおきた...
      しずくさん。はじめまして。
      コメントありがとうございます。
      罵詈雑言って、人を傷つける言葉の凶器であるので、できることなら
      使わないでおきたいものですが、モノローグであれば、誰しも多用しているんじゃないかなぁと思います。
      それが文字に起こされると、より一層のパンチが増してみえますよね。
      若い女性が使ってたりすると、更に鮮烈な印象を感じます。
      逃亡くそたわけに通じる感は気づかなかったなぁ。なるほどー。
      2022/07/29
  • 小説には終わりがあるのに、現実は終わりが見えなくて苦しい。
    伝えたいこととか考えてることがたくさんたくさんあるはずなのに、いざ言葉にしようとすると全然出てこないあの感覚、覚えがありすぎて辛かった。何に対してこんなにイライラしてるんだろうって、分からないことにもイライラして、全部がしんどくなるあの感覚。

    ──小説の中に存在する言葉は、あたしの思考や感情を表すのに足りない言葉のパーツをいつも補ってくれた。握りしめたパーツを武器に、あたしはこうして親父の前にいるはずなのに、自分でも気づかないうちに言葉は零れ落ちている。(67ページ)
    私も昔趣味で小説書いてたから、もうほんとここ分かりすぎて……。小説書くことも、1種の現実逃避だったなって最近思い返してるところです。

  • 芥川賞候補作品

    19歳のゆめは、90歳になる父方の祖母と母の三人で暮らす。甲州出身の祖母は悪態をつく。甲州弁で悪態はあくてえ。そんな祖母とソリが合わないゆめもあくてえをつき、祖母と口喧嘩が絶えない。祖母のことを「ばばあ」と呼ぶ。

    離婚して家を出ていった父親もどちらかと風来坊的な人で責任感がすくない。母は、祖母の介護や世話を懸命に対応する。父からの仕送りも途絶えて、ゆめへの負担が増える。苛立ちは収まらない。

    あくてえを付き合う間柄だが、いろいろ不自由になって来ている祖母の世話は続く。

    家族ってソリが合う合わないで離れられるものではなく、日々苛立ちを感じながらも一緒に暮らしていかなければならないこともある。
    世の中にも、その若い時を家族のために捧げている人は少なからずとも存在しているんだろう。

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著者プロフィール

1994年、東京都生まれ。2015年、『ドール』で第52回文藝賞を受賞しデビュー。著書に『クロス』『エラー』などがある。

「2022年 『あくてえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山下紘加の作品

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