開高健は何をどう読み血肉としたか

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309029283

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  • 著者の菊池治男は、開高健が『オーパ!』で書いている65日間のブラジル・アマゾン取材旅行やその後のアラスカ、カナダ、モンゴルなど、数々の旅行に同行した編集担当者である。彼によると、開高健には本を読むときの癖があり、「これぞ」と思った本は読む前にカバーを剥ぎ取り、帯ごと捨ててしまうのだとか。さらに、棒線や書き込みはほとんどない代わりにページを豪快に折り込んだあとが本の中に決まって1箇所あるそうだ。

    “「なぜ、そこだけか?」ー大部の本のなかでこの一か所しかないのか?そこになにか特殊な事情でもあるか。特別な感動?あるいは共感、あるいは異見、批判。記憶すべき記述……。でも、各本に一か所しかない、というのが不可解。”

    本書はそれらの「読みあと」のある本を丁寧に一冊ずつ取り上げながら、その本がどういう本なのか、開高健がどんなふうにその本を読み、どんな影響を受けたのか、についてまるで本の森に遺された足跡を辿るように、想像を巡らしながら書かれた案内書である。また、それと同時に、数々の冒険旅行での開高健のエピソードが合間合間に綴られており、同行していた菊池治男だからこそ語れる臨場感のある人物伝にもなっている。

    この一冊を読むだけでも開高健という人物がどんな人となりだったのかが垣間見ることができて面白い。開高健が、蔵書をどのように読みどのように感じ取っていたかはほんとうのところの答えは果たして本人にしかわからない。けれども同じ本を手に取り、思いを馳せ、想像することはできる。開高健とは全く違うことをもしかしたら感じるかもしれない。

    本の森を歩き、本の森を旅する。そういう散策的な時間が愉しいし、面白い。

  • 生前のエピソードを交えつつ、開高健が残した限られた蔵書の、断片的な読み跡から隠されていたものを読み解く。

    開高健について、という書籍は割合他の作家よりも多いのではないかと蒐集していて思うが
    本著において開高健が紹介する書籍・映像作品の口上がやはり直観的に面白いものである一方で、この小さな説を書いて暮らしている作家自体を語ることも興趣に尽きず、稀有な作家であると再認識した。

  • 著者の菊池さんと開高健の思い出を辿っていくような本。
    そこに、菊池さん自身、そして開高健が見ていたと思われる本の中の景色が重なっていく。
    菊池さんの心に沿って作られた本で、どちらかというと菊池さんの心の中を見て回ったような気持ちになった。

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著者プロフィール

1949年生まれ。集英社『PLAYBOY』の担当編集として開高健の「オーパ!」の旅などに同行。現・開高健記念会理事。著書に『開高健とオーパ!を歩く』

「2020年 『開高健は何をどう読み血肉としたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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