自由思考

著者 :
  • 河出書房新社
4.04
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本棚登録 : 685
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309028149

作品紹介・あらすじ

ユーモア溢れる日常のものからシリアスなもの、物語の誕生秘話から文学論、政治思想まで。
生きにくいこの時代を生きる、そのための無数の言葉たち――。
ベストセラー作家・17年の「思考回路」がこの1冊に!
待望の「初」エッセイ集、ついに刊行。
書き下ろし「作家志望の方々に」「この国の『空気』」他収録。
<今に響く、エッセイ111本>
見知らぬ男/真面目をやめようかと/悟りを開きたい/孤高の変態/自転車のベル――「銃」を書いていた頃/美しい時間/不惑を前に僕たちは/文化も救ってくれる/震災の時/虚偽まみれの虚言癖政権/回復に向けて――「新潮45」問題から考える/憲法9条論/様々な国のブックフェスティバル/映画化について/一冊の本が、一粒の種子のように/ドストエフスキーの墓前で etc.

感想・レビュー・書評

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  • 「掏摸」を読んでから、
    骨太の本を書く作家さんだと、思った。
    そして、どんなふうに物事を考えているのか、
    それを知るのに、エッセイは取説のようなもの。

    小中学生時代の鬱々とした経験と、
    福島大学での、楽しい大学生活が、
    今の筆者を作り上げていたんだと思う。

    小学生の時から小説家になりたかったとあり、
    まさに、成るべくして成った方。
    益々の活躍を期待したい。

  • 小説の冒頭かと思うような書き出しに惹かれた。
    印象に残るおもしろいエピソードや小説にまつわる文面がたくさんある。

    小説内に散りばめられた自由思考を探すのが楽しみのうちのひとつになっている。
    中村文則さんを勧められて、人物的に興味を持つようになり小説を読むようになったきっかけでもある本。


    追記》2023.7.11.
    小説かのように引き寄せられたエッセイの冒頭のエピソードが読み途中の教団X内の一部として出てきたのに(知っているという記憶が反応して)鳥肌がたった。

  • 何とレビュー数少なくない?こんな有名作家さんなのに。エッセイ集。面白かった。まさか同い年だったとは。やっぱこの人の小説全部読みたいわ。こんなに政治的発言をしているというのも驚き。そして福島大学に行って、社交的になれたというのも、分かる気がする。私の大学時代も貴重な時代だった。あの頃今の自分が作られた感があるもんな。成長のない私。小説を読む人は想像力があるから相手の内面を推し量ることができるから出身国や性別で差別をしない、とあって、そうそう想像力なんだよ!と思った。私も差別主義者になりさがらないよう、もっと本を読まねば。ほんと最近読書できてないからなー。早く仕事辞めて本読みたい。

  • 中村文則は私が一番好きな作家だ。教団Xを読み衝撃を受け、ほぼすべての作品を読んできた。
    ただ、R帝国からなにかしらの違和感を覚え、今までの陰鬱さや悪の表現、描写に新鮮さが無くなってきたように感じた。
    そんな印象を持ったまま、この度初めて中村文則の随筆集を読んだ。そして、その違和感の正体が少し理解できたような気がする。
    氏は表に出てきてしまった。
    承認欲求とはまた違うたのかもしれないが、小説家としてではなく、作家としてなにかを伝えようと必死になっている。
    「作家が危機感を持っているのに黙っているのは、同じ社会に生きる読者に対する裏切りだ」と書いていたが、一読者としての私にはそんなことはどうでもよく、読みたいのは中村文則が持つ内面の、普遍的かつ重厚で陰鬱で陰惨でユーモア溢れる物語である小説なのだ。
    世の中変えたいなら政治家にでもなれば良い。
    物語を語ってくれ。

  • 中村文則さんのエッセイ集。とても盛りだくさんでお得な気分。
    硬軟取り混ぜてあり、今はあまり難しいものを読めないのだけど、混ざっているから読めました。
    テレビなどで拝見した事があるのですが、こんなにはっきりと主張されてらっしゃるとは。
    作家としての矜持を感じました。
    仰る通り、考えるのが嫌になってしまっている部分があります。目をつぶっているうちにこの嵐が去りますようにと。でも、それは儚い望みですね。
    やわらかい方はとても人間味あふれていて、愛すべきエッセイでした。善悪や性を描く作家さん、小説は自分の場合は基本ハッピー好きなので読めるもの読めないものがありましたが、エッセイはとても読みやすくわかりやすく楽しかったです。

  • 中村さんの小説はいくつか読んだことがありますが、著者の中村さんご自身のことはこれまであまり知らないまま、なんとなく「ダークな作風の作家」という印象でした。

    小説の読み方としては邪道なのかもしれませんが、こういったエッセイなどで著者の人となりを知ると、その作品の見え方にもとても影響を受けます。
    もちろん良い面悪い面あると思いますが、少なくとも自分にとっては良いことが多い気がします。

    一番胸を打たれたのは、故郷の愛知を出て大学の4年間を過ごした福島が震災に見舞われた直後に、福島の人々に向けた言葉の数々でした。
    幼少期から負の感情で固まっていた中村さんの心を、福島の自然と人の温かさが少しずつほぐしてくれたこと。そのことに対する感謝の言葉が剥き出しの言葉で何度も重ねられます。

    こういう人が書く小説を読みたい、と率直に思いました。

  • 弁の立つ人や筆のうまい人が権力批判をしているのを聞いたり読んだりすると溜飲が下がりスカッとする。でも一方、人の尻馬に乗っているような後ろ暗さも感じる。Twitterでもそうだ。中村氏のことばは理路整然としているから納得。様々な雑誌や刊行物に寄せた文章が収められているので、各編は短いが読み応えがあるエッセイである。人気作家になるまでの20代の駆け出し時代のお話は意外だった。やはり作家は純文学からマンガまでいろいろなものに影響を受けている人が奥深い。

  • すごい真面目なのかと思ったら意外とそうでもないようなエッセイだった。具体的には、AV見てるとかエッセイに書いちゃうような人なんだ!?って驚いた。でもアダルトビデオの名言とエロ動画の話は面白かった。

    あと、ほっぺに悪が入ってる、も面白かった。
    読みながら笑ってしまった。
    そんなに太ってるというか、ぷにぷにだなんて思ったことなかったけど、本人は気になるのだな。

    暗いんだなってことと小説がすごく好きなんだなというのがよく伝わってきたし、権力への批判や姿勢についてもやっぱり信用できるって思った。立派だと思う。

    でもやっぱりちょっととぼけたエピソードのエッセイの方が読んでて面白かった。(僕の隣に人が座らない、とか)
    大袈裟に書くとかじゃなくて真面目に淡々と書かれていて、メタい感じでもなくパロディ的オマージュみたいなものも使わずに文章だけで笑わせてくるのがすごい。文章の力というか中村文則の文才というか技術の凄さを感じました。

  • 中村文則さんらしいエッセイ集

    悪を人間と読者への信頼とともに描く彼の姿勢がとても好きです

  • 時々楽しく、時々考え込みながら、時々涙しながら読みました。
    読み終えて思うことは、この方が書くことは信頼できるなぁということ。

    これからも沢山の言葉を紡がれるのを楽しみにしています。

    大学時代のお話(特に罰ゲーム)最高でした。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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