- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309028149
作品紹介・あらすじ
ユーモア溢れる日常のものからシリアスなもの、物語の誕生秘話から文学論、政治思想まで。
生きにくいこの時代を生きる、そのための無数の言葉たち――。
ベストセラー作家・17年の「思考回路」がこの1冊に!
待望の「初」エッセイ集、ついに刊行。
書き下ろし「作家志望の方々に」「この国の『空気』」他収録。
<今に響く、エッセイ111本>
見知らぬ男/真面目をやめようかと/悟りを開きたい/孤高の変態/自転車のベル――「銃」を書いていた頃/美しい時間/不惑を前に僕たちは/文化も救ってくれる/震災の時/虚偽まみれの虚言癖政権/回復に向けて――「新潮45」問題から考える/憲法9条論/様々な国のブックフェスティバル/映画化について/一冊の本が、一粒の種子のように/ドストエフスキーの墓前で etc.
感想・レビュー・書評
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「掏摸」を読んでから、
骨太の本を書く作家さんだと、思った。
そして、どんなふうに物事を考えているのか、
それを知るのに、エッセイは取説のようなもの。
小中学生時代の鬱々とした経験と、
福島大学での、楽しい大学生活が、
今の筆者を作り上げていたんだと思う。
小学生の時から小説家になりたかったとあり、
まさに、成るべくして成った方。
益々の活躍を期待したい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中村文則は私が一番好きな作家だ。教団Xを読み衝撃を受け、ほぼすべての作品を読んできた。
ただ、R帝国からなにかしらの違和感を覚え、今までの陰鬱さや悪の表現、描写に新鮮さが無くなってきたように感じた。
そんな印象を持ったまま、この度初めて中村文則の随筆集を読んだ。そして、その違和感の正体が少し理解できたような気がする。
氏は表に出てきてしまった。
承認欲求とはまた違うたのかもしれないが、小説家としてではなく、作家としてなにかを伝えようと必死になっている。
「作家が危機感を持っているのに黙っているのは、同じ社会に生きる読者に対する裏切りだ」と書いていたが、一読者としての私にはそんなことはどうでもよく、読みたいのは中村文則が持つ内面の、普遍的かつ重厚で陰鬱で陰惨でユーモア溢れる物語である小説なのだ。
世の中変えたいなら政治家にでもなれば良い。
物語を語ってくれ。 -
中村さんの小説はいくつか読んだことがありますが、著者の中村さんご自身のことはこれまであまり知らないまま、なんとなく「ダークな作風の作家」という印象でした。
小説の読み方としては邪道なのかもしれませんが、こういったエッセイなどで著者の人となりを知ると、その作品の見え方にもとても影響を受けます。
もちろん良い面悪い面あると思いますが、少なくとも自分にとっては良いことが多い気がします。
一番胸を打たれたのは、故郷の愛知を出て大学の4年間を過ごした福島が震災に見舞われた直後に、福島の人々に向けた言葉の数々でした。
幼少期から負の感情で固まっていた中村さんの心を、福島の自然と人の温かさが少しずつほぐしてくれたこと。そのことに対する感謝の言葉が剥き出しの言葉で何度も重ねられます。
こういう人が書く小説を読みたい、と率直に思いました。 -
弁の立つ人や筆のうまい人が権力批判をしているのを聞いたり読んだりすると溜飲が下がりスカッとする。でも一方、人の尻馬に乗っているような後ろ暗さも感じる。Twitterでもそうだ。中村氏のことばは理路整然としているから納得。様々な雑誌や刊行物に寄せた文章が収められているので、各編は短いが読み応えがあるエッセイである。人気作家になるまでの20代の駆け出し時代のお話は意外だった。やはり作家は純文学からマンガまでいろいろなものに影響を受けている人が奥深い。
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中村文則さんらしいエッセイ集
悪を人間と読者への信頼とともに描く彼の姿勢がとても好きです -
時々楽しく、時々考え込みながら、時々涙しながら読みました。
読み終えて思うことは、この方が書くことは信頼できるなぁということ。
これからも沢山の言葉を紡がれるのを楽しみにしています。
大学時代のお話(特に罰ゲーム)最高でした。