- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309028071
作品紹介・あらすじ
2019年7月10日刊行。
親子の救済、老人の覚醒、30年前の自分との出会い、仲良しロボットとの別れ、無差別殺傷事件の真相、別の人生の模索……淡く美しい希望が灯る。宮部みゆきの新境地、心ふるえる作品集。
感想・レビュー・書評
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どの話もごく日常で出会うような普通に暮らしていそうな人物が主人公だから物語にすぐ溶け込める。
そこに、正義と救済の法律や宗教、ロボット、人工知能、タイムスリップ、宇宙生命体などが絡み一気に異次元の世界に連れていかれる。
我々の住む世の中は、人間が不安なく幸せに生きていけるようにはできていない。
日々の生活の中に潜んでいる社会の歪に関わってしまったり、好ましくない環境に入り込んでしまったり、何らかの苦悩と向き合いながら生きている。
誰しもが、そんな日常で起きていることへの葛藤や、過去の愚かな行動に対する後悔、近未来に起ころうとしていることへの畏怖を抱えて生きている。
宮部みゆきさんは、我々が生活している社会の問題をいろいろと考えさせてくれる。
SFという形式でリアルさを緩和しているが、社会風刺が散りばめられた作品群でした。 -
2010~2018年にかけて数誌に掲載されていたSF短編を8編セレクトしてあるけど、さすがの宮部みゆき作品だと感じられました♪
身近なテーマばかりだけど らしい皮肉や風刺や問題提起が随所にユーモアも交えながら調理されていて、ちょっと怖いゾワッとする ひねりの効いたとても味わい深いSF短編ばかりでした。スイスイ面白く読了。 -
久しぶりに宮部さんのSF作品に多く触れられた気がする。
書き下ろしではなく、雑誌等に掲載されたことがあるので、宮部ファンなら読んだことのある話があると思います。
私も表題作の「さよならの儀式」は読んだことがあったが、再び読んでも良かった。なんかホロっときた。
SFでありながら、人の心の在り方が描かれている作品集でした。宮部さんらしさが溢れる短編集だと思います。 -
久々の宮部みゆきさんのSFもの。
8つの短編集で、どれも身近に起きている問題のように見せかけて、少しだけ近未来だったり異世界だったり。
心の奥がざらっとするような後味を残して終わる。
いま自分が生きている世界が本当であることに感謝したくなった。 -
何と宮部みゆきのSF短編小説集、ファンタジーはあったかもしれないがSFは初めてかな。「荒神」はSFかな怪奇時代小説かな、何れにしても出来がよく日本版ミステリーゾーンとして映像化してもらいたいほどである。それにSFに多々あるいい加減な終わり方ではなくちゃんと物語を締めており、さすが稀代のストーリーテーラーであり、著者のテーマである悪は伝染するも盛り込まれている。「屍者の帝国」のオマージュまで混ざっていてちょっとお得かも。
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宮部みゆきさんのSF中短編集。宮部さんの本で、一番最初に読んだのが、実は日本SF大賞の「蒲生邸殺人事件」だったりするのですが、それ以降、SFっぽいのは、あまり読んでない(荒神が近いか?)ので、新鮮でした。
「母の法律」は、近未来の被虐待児に対する養父母の法律のついての話だが、題材だけでなく、誰がどう考えて行動しているのかが、読み進めていくうちにわからなくなり、自分はモヤっとしながらも、読後にあーなのかこーなのかと考えてしまう感じで、それはそれでよかった。「星に願いを」も読んでくうちに、自分の考えがわからなくなる感じだった。
「わたしとワタシ」「戦闘員」は、展開が好みで、日常のずれ的なものが身近でおもしろい。短編ドラマにしやすいような感じに思った。
「保安官の明日」が、徐々に概要がわかっていき、その拡がり方も好きで、この中では一番好みだった。少しづつ言葉から見えてくる部分が、徐々に不穏さを出してきているのがよい。
不安げな結末も、明るい結末も混じるし、SF自体を楽しむ話も、架空の世界から、現実の歪みを見る話も混じり、楽しんで読めた。 -
河出文庫2010年7月:聖痕、2012年1月:保安官の明日、2014年10月:戦闘員、2015年10月:海神の裔、2018年12月:母の法律、角川書店2013年2月SFJACK:さよならの儀式、講談社ヴィジョンズ2016年10月:星に願いを、小説すばる2018年4月号:わたしとワタシ、の8つのSF短編を2019年7月河出書房新社から刊行。宮部さん初のSF短編集だが、既に7編は既読だったので、読むかどうか迷いましたが、読んで正解です。並べて読むと感じるところが異なりました。最も楽しめたのは、唯一の未読のわたしとワタシで、さすが宮部さん、アイデアがしゃれています。
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「母の法律」、「戦闘員」、「わたしとワタシ」、「さよならの儀式」、「星に願いを」、「聖痕」、「海神の裔」、「保安官の明日」の8篇を収録。
SFものばかりだが、オカルトチックな「聖痕」はジャンル違うかも。お気に入りは、スクラップ化されるロボットとの別れを描いた「さよならの儀式」、人造擬体が繰り返しある事件を再現する「保安官の明日」2作かな。
「わたしとワタシ」に出てくるペットのカナリアの名前がピピネラ。ドリトル先生だ!